元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「リメインズ 美しき勇者たち」

2009-02-05 11:36:16 | 映画の感想(ら行)
 90年松竹作品。“サニー千葉”こと活劇俳優の大御所・千葉真一も監督業に乗り出したことがあったのだ。舞台は大正時代初頭の北海道の山村。人食い熊とマタギとの死闘を描く実話の映画化。ひとつ間違うと本当にチャチなゲテモノ映画になりそうな素材である。なんといっても熊の描写だ。これがヘタにぬいぐるみを多用するとシラけるし、本物を使うのは難しく、アメリカ映画「グリズリー」みたいなお笑い映画になることもある。ところがこの作品では本物とミニチュアを巧みに合成させ、熊の姿をなかなか出さないという作戦が成功しており迫力がある。ラストの対決シーンではかなり盛り上がり、さすがアクションにかけては年期の入ったところを見せる。

 ただ、脚本が面白くない。話が破綻するのを恐れるあまり思い切ったストーリー展開に乏しい。最初の部分だけ見ればラストはどうなるのかわかってしまうし、何よりもこのテの映画では以前にも「マタギ」だとか「イタズ」といった良質の作品がすでに出ており、新鮮な素材ではないことが一番のネックになっている。もっと新人監督らしいユニークな企画で勝負できなかったのだろうか。

 真田広之扮する主人公、菅原文太のマタギの親分、村松美香演じるヒロインの三人を除く登場人物たちが全然印象に残らないのは困ったものだ。マタギ部隊の他のメンバーは重要なキャラクターのはずだが、これもまったく描き分けができていない。ラストの熊との戦いでは何やら作戦を立てたようだが、結局他のメンバーは出番もなく終わってしまう。「七人の侍」みたいにスゴイ奴らを一人ずつ集めるという設定にした方がもっと面白かったのではないだろうか。

 まあいろいろと書いたけど決して嫌いな映画ではない。カメラワークは優秀だし、真田広之は頑張っている(なんと、音楽も担当)。それからびっくりしたのがヒロイン役の村松美香でアクションもこなすこのキャラクターは貴重だ。楽しみな人材である・・・・と思ったら、本作限りで姿を消してしまった。残念なことだ。
コメント
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