元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「パンズ・ラビリンス」

2007-10-22 06:46:16 | 映画の感想(は行)

 (原題:EL LABERINTO DEL FAUNO)冒頭、瀕死のヒロインが映し出されるが、これで本作が“悲劇”で終わることが明示されるわけで、その時点で鑑賞意欲が減退する。もちろん“子供が主人公だから悲劇はイケナイ”などと言うつもりはない。しかし、内戦下のスペインというハードな実世界の前では子供が体験するファンタジーなどモノの役にも立たないことが、にべもなく語られるだけというのは、あまりにも身も蓋も無さ過ぎるのではないか。

 主人公が妖精に誘われるように牧神パンのラビリンスへと迷い込み、パンの提示する“試練”を乗り越えて魔法の国の王女となろうとすることが、厳しい現実とは何の接点も持たず、単なる“子供の想像”に終わってしまうことにより、作者はピュアな子供の心と現実とを対比させることによって薄汚い実世界と戦争の悲劇を糾弾しようとしたのかもしれないが、そんなのはあまりにも図式的だ。

 ファンタジー仕立てにする必要もなく、所々にヒロインの純情ぶりを挿入すれば用は足りる。どうしてもファンタジー方向に振りたいのであれば、現実が非現実に浸食される様子でもスリリングに描くべきであった。

 アカデミー賞などを獲得している幻想シーンにおける映像や美術も、大した物とは思えない。面白かったのは人食いクリーチャーが襲ってくるシーンぐらいで、あとはハリウッド映画の後塵を拝している。そういえば監督のギレルモ・デル・トロは「ヘルボーイ」とかいう駄作でも冴えない映像イメージを披露していたし“しょせん、この程度か”という印象は拭えない。

 登場人物も紋切り型。イバナ・バケロ扮するオフェリアは可愛いけど童話が好きなただの子供。ファランヘ党のビダル大尉(セルジ・ロペス)は絵に描いた様なサディスト。思わせぶりな懐中時計が何の効果もあげていない。人民戦線の連中は、まあ予想通りのレジスタンスぷりで特筆すべきもの無し。

 わずかに興味深かったのがオフェリアの母親である未亡人。打算と保身のために狂的な軍人と一緒になるのだが、開き直った女の愚かさをよく表していた。ひょっとしたら彼女のドラスティックな“願望”の方がダークファンタジーの題材としてふさわしかったのかもしれない(爆)。
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