気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

雲の行方 上野春子 六花書林

2019-09-30 00:10:37 | つれづれ
まん丸な地球に裏と表なく用なき人はこの世におらず

平凡で小さきものよ幸福は千鳥饅頭ちどりが一羽

釘箱に林檎箱より抜きし釘亡き父しまいき曲がれるままに

折紙の兜で節句飾ろうか息子は母に似るろくでなし

黒失くし白を貰いて白失くし黒を拾いてさす黒日傘

死んだふりしているような顔覗く棺に白菊納めんとして

しろたえのごはんに落とす生卵混ぜてたちまち黄金(こがね)の御飯

ままごとのようだね夕餉紙の皿紙に器を畳に広ぐ

目白来る窓の辺に寄り電卓を叩けり春の事務服を着て

祖父吸いし莨にその名覚えたる桔梗が咲けりさみしき色に

(上野晴子 雲の行方 六花書林)