気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

あらがね 本田一弘

2018-07-13 11:19:25 | つれづれ
山鳩はかなしみを啼く此世(これのよ)に生まれ出でたるたれのかなしみ

雪の息聞(きこ)ゆるといふ嬬の耳やさしく咬みてそを聴きてをり

ちのみごのうぶ毛のやうなふくしまの桃のはだへを愛せりわれは

ふくしまの米は買ふなといふこゑをふふむ土満つフレコンバッグ

枇杷の花香(にほ)ふゆふぐれ喪ひし人をおもへばにじみゆく白

復興は進んでゐますといふ言葉から漏れつづくCs(セシウム)と水

東京は大丈夫ですー係(かかり)助詞「は」に其の人の心根を見る

ふるゆきは誰のてのひら 瓦礫より骨の見つかる七歳の子の

歌ふとはうつたふること磐梯を映す田の面をわれらは愛す

亡きひとのゐてあたたかき月の夜の声かき抱(むだ)くふくしまのそら

(本田一弘 あらがね ながらみ書房)