気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

つららと雉 黒﨑聡美

2018-07-21 11:43:17 | つれづれ
折り鶴のおりかた思い出せなくて畳のにおいの立ちのぼる部屋

鯉たちにわたしの影を見つけられわたしの子どもに会える気がした

じゅうたんをさか撫でにしてまたもどすひとり遊びのような年月

散ってゆく葉の影うつす食卓を見つめていれば十年過ぎる

雨の日はすぐに暮れゆく差し出された診察券から煙草のにおい

待合室はさいしょに暮れてさかさまに戻されていた雑誌を直す

歩いて歩いてカーブミラーに辿り着きわたしのなかからまだ抜け出せない

ソーラーパネルの土台ばかりが放置されあかるい方へ向かされたまま

少しずつ点が小さくなるようなきみとの暮らしにあかりを灯す

それぞれの記憶を話せばあらわれるどこにも存在しない薔薇園

(黒﨑聡美 つららと雉 六花書林)