気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人2月号 同人のうた その3

2016-02-24 13:05:08 | 短歌人同人のうた
受付の女性の言葉は風のやう聞耳(みみ)を立ててもことばが逃げる
(古川アヤ子)

ガラス戸の向かうは秋晴れ年を経し柿の木瘤といくつもためる
(大和類子)

ユニクロのTシャツをユニクロのTシャツに着替へしてゆく忘年会へ
(長谷川莞爾)

身のめぐり死のあまたある日常と思へどザクッとセロリ嚙みたし
(藤本喜久恵)

宝くじにあたったことはないけれどあたったような今までの無事
(𠮷岡生夫)

けふの日の楽しみひとつ舞ひきたる六花亭の菓子のさまざま
(高田流子)

出会ひたる人はおほかた彼岸なりざわめき深き昭和とともに
(武下奈々子)

小春日の午後の遊具のけがれなさ母と子ふたりだけの公園
(川田由布子)

終焉の雨かもしれぬかく寒き時雨頭を肩を濡らして
(藤原龍一郎)

千五百円の老眼鏡をかけて読む『阿部一族』のみな死ぬところ
(小池光)

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短歌人2月号、同人1欄より。