気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人11月号 同人のうた その1

2011-11-05 00:13:10 | 短歌人同人のうた
木の間より見下ろす福岡船溜り初秋の午後の海光のいろ
(青輝翼)

白猫の面構えよきに言うてみるわれら危うきところにいるぞ
(高野裕子)

草は黄に透きて風立つ極熱のいちじつの果て子規が臥てゐる
(酒井佑子)

落下するまぎは微かにゆがみつつ石榴の朱(あけ)に兆す重力
(柚木圭也)

夏雲のかたまりははや崩れたりあらびあの宮殿のほろびのやうに
(橘夏生)

袋小路のなかに獣の匂い満ちて新妻犬猫病院のあり
(生沼義朗)

すり切れし心の部屋の片隅にコオロギがいてほそほそと鳴く
(松永博之)

ホチキスの発明機関銃に拠るまことしやかに教えき父は
(林悠子)

山渓のポケット図鑑3に並びタカサブロウとダンドボロ菊
(佐々木通代)

震災の灯光戻りしその夜にリズ・テイラーは目つむりて亡し
(泉慶章)

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短歌人11月号、同人1欄から。