気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

庭の時間 神代勝敏

2011-11-01 22:05:17 | つれづれ
温もりのいまだ残れる血液に放射線あてて籠にをさめぬ

捨て子猫うごく落ち葉にたはむれてああそののちに横たはりたり

ジャムパンのジャムあるところ無きところいづれも美味し心おちつく

豆電球机の上にころがれり捩子の螺旋は光をおびつ

動物図鑑買ひてでるとき雪ふりて行き交ふ車の音あたらしき

若者が猫にツナ缶食はせゐる二十三時のコンビニの前

ネットにて囲碁をしてをりお互ひにどなたさまとも分からぬままに

自転車の籠に樫の実一つおき漕ぎだしはじむ朝の公園

鶴の家ひよこしらさぎあひるとは介護施設の名前としりぬ

訪問しレントゲン写真撮りにきてまづその家のコンセントをさがす

(神代勝敏 庭の時間 六花書林)

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短歌人会編集委員、神代(くましろ)勝敏さんの第一歌集をよむ。
神代さんのお仕事は放射線技師。必要となれば、患者さんの家を訪問してレントゲンを撮るということをはじめて知った。日常の身の回りのことを詠んだ歌が多い。どれもさりげなく、ちょっと地味だ。猫を詠んだ歌に人柄の温かさが感じられる。