Weblog喫茶 モンブラン

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映画は音楽で完成する:マイケル・カーメン「未来世紀ブラジル」

2007-10-19 23:36:02 | ♪音楽好き

モンブランへご来店の皆様、こんばんは。

暑い盛りには娯楽大作やアクションものなどが観たい映画ですが、秋が深まってくると、ちょっと文芸ものだとか、気の利いた小品や、マニアックなものが観たくなったりします。
クリスマスに向けて大作が次々公開される前の、ちょっと一休みとも言えそうなこの時期ですね。

私は映画も音楽も好きで、自分で選んで聴いた音楽遍歴のそもそもの始まりは、007やスターウォーズのサウンドトラックでした。
なので、どんぴしゃりの優れた音楽がはまっている映画は、興行成績に関わらず個人的には評価しています。

そんな隠し球のような映画がいくつかありますが、今日はモンティ・パイソンのテリー・ギリアムが作った1985年の映画、「未来世紀ブラジル」のサウンドトラックをご紹介しましょう。

もう20年以上も前になるこの作品、モンティ・パイソンメンバーだけあって、一筋縄ではいかないひねりっぷり。
ロバート・デ・ニーロが脇役で怪演だったりするのですが、ストーリーをまともに追うよりも、次々と繰り出される視覚イメージを、ビデオクリップのように楽しむ方がいいでしょう。

一応未来社会という設定ですが、ジャケット写真でおわかりのように、レトロなものがそこかしこに出てきます。
ちょうど、1930年代あたりから20世紀末を眺めると、こんな風に想像していたかも。

映画全体のテーマは、情報統制された社会への風刺で、しかし結構ハチャメチャです。(^^;
そんなちょっと風変わりな設定のストーリー全編を通して使われているのが、アリ・バホーゾ作のサンバの名曲中の名曲「ブラジルの水彩画(Aqualera do Brasil)」のサビの部分です。
この曲はきっと、皆さん聴いたことがあるでしょうね。

音楽はマイケル・カーメン(or ケイメン)。
のちに「ダイ・ハード」シリーズや「ロビン・フッド」など大作のサウンドトラックをバンバン手がけることになる彼ですが、この映画では”誰もが知ってるあの曲”を、それはもう多彩にアレンジ。

よく、ひとつの食材でフルコース全皿通してしまう「○○づくし」というのがありますね。
「えっ、大根がこうくるの!?」という驚きの後、シェフのひねり技に「ふうむ」と感心・・・。
このサウンドトラックはまさにそういう感じです。

(映画ではインストゥルメンタルなのですが)ケイト・ブッシュが幻想的に歌うバージョンから、レストランの適当に安っぽいバンド演奏のBGM、ワルツっぽくしてみたり、カーラジオから歌謡曲風に流してみたり、オーケストラで壮麗に奏でてみたり・・・。

そして最後には、生命エネルギーが爆発するかのような、底抜けに明るいサンバでエンドロールを迎えます。
これがじわじわと怖いんですよ~。

私はこの作品を初めて見たとき、「この映画は、この音楽があってこそ完成したんだなー」と思いました。
ギリアム監督だけでは作り上げられなかった世界が見事にデコレーションされてできあがっているのです。

マイケル・カーメン氏は、惜しくも2003年に55歳で世を去ってしまったそうです。
生きていたら、きっと「ダイ・ハード4.0」の音楽も担当してくれたことでしょう。

心に残る映画には、いつも心に残る音楽が添えられていると言ってもいいと思います。
またそのうち、そんないいサウンドトラックをご紹介しますねー。