今日はちょっと長くなりますが・・・。
ニュースでご存知の方も多いと思いますが、WHOが豚インフルエンザの流行について警告を出しています。
WHOのサイトに昨日付けで掲載された情報は以下の通りです。さらっとですが翻訳してみます。
■ H1N1型豚インフルエンザへの感染例が、アメリカで7人(カリフォルニア5、テキサス2)+疑わしい例9人報告されました。
この7人の症状は軽く、1人が入院したのみで、死亡者はいませんでした。
■ メキシコで3月18日~4月23日に行われた調査では、3つの地域で流行がありました。
■ 首都(メキシコシティ)で854人以上が肺炎になり、59人が死亡。中央メキシコのSan Luis Potosiでは、24人が発症し3人が死亡。アメリカ国境付近のMexicaliでは、4人が発症し死亡者はいませんでした。
■ メキシコの症例のうち18人について、カナダで分析を行ったところ、H1N1型豚インフルエンザと確認され、そのうちの12人についてはカリフォルニアの豚インフルエンザウイルスと、遺伝子が一致しました。(注:つまり全く同一のウイルスだということです)
■ これらの症例の大部分は、若い成人です。インフルエンザは通常、乳幼児や高齢者に感染しやすいのですが、メキシコでは乳幼児や高齢者には感染があまりみられません。
■ この流行は、1)動物のインフルエンザウイルスがヒトに感染している点、2)複数の地域で流行が発生している点において、強く懸念されます。
■ この流行で見つかったH1N1型豚インフルエンザウイルスは、豚とヒトからは過去に見つかったことがないものです。(注:つまり、新型といえます)
■ このウイルスには、タミフルが効くことは既に解明されていますが、(以前からの抗ウイルス薬である)アマンタジンやリマンタジンは効果がありません。(注:リレンザについては記述がありません。現在調査中なのか?)
おおよそこのようなことが書かれていました。
この流行について疑問なのは、メキシコとアメリカで同じウイルスで流行が起こったにもかかわらず、なぜ両国間で症状に差があるのかということです。
メキシコでは7%の死亡率であり、全体的に症状が重いものと思われますが、アメリカでは重症例・死亡例はありません。アメリカでの発生数がまだ少ないことを考慮しても、ちょっと考えにくいです。
ひとつの可能性として考えられるのは、ウイルスが同一であっても患者(宿主)側の状況が違うので、症状や経過に差が出たのかもしれません。
例えば、メキシコに特異的な何かの風土病などに感染していた人がこのウイルスに重複感染すると、症状が非常に重くなってしまうということも考えられます。
ただ、患者が若い成人という、通常は免疫力のある層に集中しているので、重複感染説も私としてはちょっと疑問です。
患者の感染経路やバックグラウンド、他の病気の有無を疫学的に詳しく分析することが必要でしょう。
このウイルスは、感染の規模や流行の早さから言って、既にヒト-ヒト間での感染能力を持っているものと思います。
今のところ、ヒトのH1N1型インフルエンザウイルス治療薬であるタミフルが効くようですが、もしこのウイルスがパンデミックを起こした場合、タミフルを乱用すると、(今回の冬に流行したH1N1型ヒトインフルエンザウイルスのように)あっさりとタミフルへの耐性を獲得してしまうかもしれません。
ですので、流行してもタミフルで叩けばいい、という簡単な話ではいかないでしょう。
現在、H5N1型鳥インフルエンザウイルスに対するワクチンは実用レベルの製造がされていますが、この新型ブタインフルエンザウイルスに対するワクチンについては、全く手がつけられていません。
すぐに開発に取りかかり、小規模で実用化されるとしても1年以上はかかるでしょう。
このウイルスに関する情報は、今どんどん入ってきていますが、事態は深刻です。
GWという、人がたくさん海外を行き来する時期が迫り、日本政府の対応が注目されます。