アメリカで新たなカーボンホイールが産声を上げたようです。
マッドファイバー
Ric HjertbergとMax Kismarton、そしてRuss Rigginsの出会いから始まりました。
この御仁達、ただ者ではありません。
http://www.bikeradar.com/news/article/mad-fiber-carbon-road-wheels-first-look-26205
http://www.madfiber.com/
イントロから刻んでいきましょう。
まずRic Hjertberg。彼はホイールスミス、FSAと渡り歩いたホイールのスペシャリストです。Max Kismartonは宇宙航空学の技術者。そして技術者ではありませんがRuss Rigginsはこの会社の経営に携わっています。
なるほど……。これはなかなかの人材が揃いましたね。
特にキーマンとなるのはRic Hjertbergでしょう。FSA出身というよりも、ホイールスミスというところに注目です。現在はヘイズグループの傘下に入り、日本ではすっかり見かけなくなってしまいました。まあ、DTの方が人気があったという実情もありましたが……。ですがブラックスポークが流行り始めた頃はDTはラインナップになく、ホシも出してきたけど馴染みを出すのにしごくと擦れた部分の色が落ちてしまったり……。安心して使えるのはホイールスミスだけでした。サピムは今でこそ高級スポークの代名詞的存在ですが、10年前にはほとんど知れ渡っていませんでした。創業から100年近く経っていますけど。
DT、ホシ、ホイールスミス。この三つが手組ホイールに使われるスポークの主流でした(アサヒも入れたいですが、戻って……こないでしょうねえ……涙)。
ここ10年ほどでホイールは大きく様変わりしました。リム、ハブの進化も当然なのですが、私はなによりスポークの進化が一番大きかったと思います。それは非磁性のオーステナイト系から弱磁性のオーステナイト・フェライト系とフェライト系に高級モデルがシフトしていったからです。
現行のホイールスミスはSUS304のオーステナイト系ステンレスです。DTはちょっと分かりませんでしたが、どこかで高いヤツはフェライトだっとと聞いた記憶があります。サピムもオーステナイト系(18/8)です、詳しい品番は分かりませんが。SUS301、302、303、304、305のどれかです。ホシは普通のスポークはオーステナイト系らしいですが、スターブライトはフェライト系だったはず。
磁石にくっついてもステンレスです。組成がちょっと違うだけです。フェライト系は強度も高く、柔軟性もあり、理想的に思えますが、耐錆が少々劣ります。
さらに少数派で鉄製があります(といっても合金ですが)。性能的にはかなりの優れものですが耐錆性が非常に弱く、カリカリのレーサーか、いつも手入れをするマメな人にしかお勧めできません。いや、おすすめしません(苦笑)。ヨーロッパプロですらステンレスなのですから、ステンレススポークが妥当でしょう。
http://www.wheelsmith.com/index.html
http://www.dtswiss.com/Products/Components/Spokes.aspx
http://www.hoshikogyo.co.jp/product_spork.html
http://www.sapim.be/
えらく話しが脱線してしまいました(汗)。
スペックは
リム カーボン チューブラー用 リムハイトF60ミリ、R66ミリ
スポーク カーボンF12本、R18本
ハブ ホワイトインダストリー製チタニウム クロモリアクスル
重量 1085グラム
保証期間 4年 クラッシュリプレイスメントあり
制限体重 無し!
価格 2599ドル
という感じです。
うーん、軽い! それでいて面白い!!
数々の走行テスト、風洞実験により完成したとあります。
個人的な考察を言うと、スピナジー・REV-Xの現代解釈版かなあと。もしくはREV-Xとライトウエイトの合いの子ですね。
ハブシェル、スポーク、リムを全て個別にマルチディレクションカーボンで形成し、それを接着で繋いでいます。スポークは完全に板状です。REV-Xを引き合いに出したのは、この手の構造は力が高効率で伝わるコンプレッション構造でありながら、逃げと応力分散に優れるテンション構造のような性質も併せ持つからです。開発者はコンプレッション構造であることを強調しています。
スポークアレンジメントもオリジナルですね。良い感じです。スポークは反対側までつながっている、繊維スポークでは流行の形式です。ライトウェイト、トッポリーノ、マヴィックが採用しています。
基本的にはメンテナンスフリーを謳っていますね。テンション構造でないので振れが少ないと言っています。
データはないですが、リムもかなりの軽さだと思います。そうでなければこの重量は達成できません。300グラムは確実に切っているでしょう。それを実現しているのはスポークホールを考えずに済む接着構造です。部分的な負荷が掛からないようにすることで、極限までリムとしての性能を追求したようです。
フリーボディはホワイトインダストリーのチタン製。3本爪の24ノッチです。踏み込み時のロスより、耐久性を取ったようです。そして興味深いのですが、アクスルは15ミリ径のクロモリ製です。なるほど、負荷が高いところは信頼できる素材にしたのですね。賢明です。
ベアリングはカートリッジ式。これはしょうがないでしょう。
各部分は会社に送り返せば、交換修理をしてくれるようです。
専用のコルク製ブレーキパッド、クイックが付属します。
楽しみな新作です。