さていきなりですが、今回の7900デュラの最大の変更点からいきます。
それはクランク周り。
クランク、チェーンホイール、BB、フロントディレーラーです。
あらを探すようですが、昨年発表された7850カーボンクランクはでません。結局シマノが定義する性能を発揮することが出来なかったようです。
今シマノが造っているクランクは基本的に剛性の高いクランクです。+チェーンホイールですね。7800のクランクの話ですがあるメーカーがテストしたところ、クランクで最も高い剛性を誇るのはシマノだそうです。レコードやレッド、ストロングライト、TA、イーストン、FSAなどはそれより下回ります。ただ重量などは他のメーカーが上回っていますが。
私の考えでは全てのパーツに適正な剛性があり、極端に一部のパーツにその役割を負わせるのは良くないと考えていました。振動吸収性やしなやかさ、強度、剛性などは全体で担うべきだという考えです。
ところがシマノの製品を見ていると、クランク周りはいくら硬くても足りないくらいだと考えさせられてしまいます。クランクが高剛性なのはもちろん、BBも高剛性になっています。それはすでに7800で実現されています。
今回はチェーンホイールです。7800以前では今まで当然だと思われていた肉抜き部分を埋めて高剛性化しました。今回は更に素材を貼り合わせた中空構造とし、オーバーサイズ化を計ることにより剛性を高めています。この剛性は走りだけでなく、変速にも大きな影響をもたらします。
今回はチェーンの役割比率を上げてきたようですが、フロントの変速は基本的に80%チェーンリングに依存します。それは素材表面のコーティングであり、リーディングティースであり、歯先の面取りであるわけです。これらの性能を煮詰めていったのが7800です。
7900はこの設計を大きく変えてきました。まず驚いたのがアウターリングの歯先とインナーリングの歯先の距離を拡げたことです。通常ならこれらはマイナス要因となるはずですが、シマノはそれを逆手に取ったのです。ちなみにこれらの設計によってチェーンラインは変わらず、クランク自体の寸法設計も変わりません(そのためクランク自体は7800を流用することが可能です)。これにはちょっと驚きました。そして厚みのあるアウターリングがチェーンを導くためのスロープになるのです。さらにリーディングティースの高さが従来より高くなりました。これによりチェーンはより一層アウターに上るためのとっかかりが高くなったことを意味します。それによりさらにチェーンの移動がスムーズになりました。
フロントディレーラーは外羽と内羽の感覚が微妙に広くなりました。これによりトップトリム調整が不要になりました。さらにリンク部分の内側がワイドリンク構造になり、さらに一本で支えていたのが二本になり一層の高剛性化が計られました。さらにレバー比も変更され、従来よりも軽い操作が可能になりました。その為ワイヤテンションがかなり緩くなったそうです。チェーンとの距離は0~0.5㎜とかなりシビアです。移動量も変わっています。7800より7900のほうが動く範囲が広いです。もちろん高剛性化は力のロスを無くし、一層スムーズな変速を実現します。フロントの変速では世界に並ぶモノはないでしょう。
STIレバーのワイヤ巻き取り量は7900の方が多く、FDの動き量は7800の方が多く、チェーンホイールの歯先距離は7900の方が広いです。
一見先ほど述べた7900の移動量の方が広いと矛盾しそうですが、シフターとフロントディレーラーの動きを合わせて最終的な動き量としては多い(広い)と言うことです。
さらにチェーンもコレに関わってきますが、チェーンは単体で説明することが沢山ありますので、単体で説明したいと思います。
ここまで説明すれば分かっていただけると思いますが、寸法、レバー比か異なるため7800とは互換性がまったくありません。当たり前ですが、サードパーティの製品とも互換性が全くありません。
7900は完全にコンポーネントとして使用するのが大前提です。おそらくFSAなどのサードパーティ対策だとも思われますが、出来上がった製品の評判は上々です。
これから広く世間に普及していく7900デュラエースですが、互換性を捨てた価値があると思われます。