BIKEBIND自転車日記ブログ2

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東レ、オランダカーボンメーカーを買収

2018-03-15 20:50:00 | カーボン系素材
いや、昨日、これを予知していたわけではないですよ(笑)。

以下引用
[東京 15日 ロイター] - 東レ <3402.T>は15日、オランダの炭素繊維複合材料メーカー、テンカーテ・アドバンスト・コンポジット・ホールディングス(TCAC)の全株式を取得することで、同社の親会社と合意したと発表した。株式取得とネット有利子負債を併せて、取得金額は9億3000万ユーロ(約1230億円)。中・小型機を中心に次世代航空機の開発本格化などに向けて、事業強化を図る。

須賀康雄常務(複合材料事業本部長)は会見で「TCACは熱可塑樹脂を用いた炭素繊維基材のリーディングカンパニー」と説明。買収によって、従来の熱硬化プリプレグに加え、熱可塑プリプレグなど多様な分野での技術開発と拠点整備につながることになる。

熱可塑は、加熱すると軟化し、冷やすと固くなる特性を持つ。壊れにくく、短時間で成形できるため、生産性が高い。須賀常務は「航空機の開発が双通路機から単通路機に移行するなかで、今後、月産の生産機数が増加する。このため、早く作ることが必要となり、これまでとモノ作りが変わってくる」と述べ、熱可塑強化の必要性を指摘した。

また、今後、スポーツ用途や自動車用途などへの拡大も期待されるという。

TCACは、欧米に主要製造拠点を有しており、航空宇宙用途に強みを持つ。2018年の複合材部門の売り上げは2億1000万ユーロの見通し。

買収には規制当局の承認などが必要で、株式の取得日は2018年後半としている。買収資金は全額借り入れで賄う。EBITDA倍率は19.8倍。

東レとしては過去最大の買収規模となる。

*内容を追加しました。

(清水律子)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180315-00000011-reut-bus_all
引用終わり

カーボンの話題、しかも東レのカーボンの未来に触れた翌日に、図らずもこんなニュースが入ってきました。東レの買収では過去最大になるそうです。

オランダの炭素繊維複合材料メーカー、テンカーテ・アドバンスト・コンポジット・ホールディングスですか……。浅学ゆえに知りません(汗)。


https://www.tencatecomposites.com/

ここですか。はじめはちょっと探すのに手間取りました。……オランダ語? と思ってしまったのです(笑)。ロイヤルテンカーテという多国籍企業の傘下のようです。繊維、化学の会社とか。

ボーイングの787などの航空機やレーシングカーなどにも採用されている会社のようです。ここらは信用、そしてテストに合格したメーカーしか使用しませんから、かなりのメーカーなんでしょう。屑カーボンと言われるような謎のカーボンとは縁遠い存在です(笑)。

TenCate Cetexという商品名で連続繊維強化型の熱可塑性コンポジットを販売しているようです。文中にも出て来たとおり、熱硬化型が得意な東レがその脇を固めるため、量産性に優れると言われている熱可塑型の製品の補強に動いたようです。

高級品では熱硬化がまだまだ主流でしょうけど、入門グレードなどでは生産効率から熱可塑がもっと出て来ても良いかと思われます。

さて、どうなるのでしょう?



熱可塑タイプのCFRPの成形を見てみよう

2016-05-19 13:16:00 | カーボン系素材
自転車のカーボンも熱硬化タイプだけでなく、こっちになる可能性はあります。



なるとしても、おそらく入門グレードでからミドルグレードでしょうけど。レイアップスケジュールを省略すればかなり廉価に、かつ早くできるようになるのではないかと。誤解を恐れずに言ってしまえば、バテッドチューブではなくプレーンチューブにするということです。

一応自転車でも熱可塑タイプカーボンは使用された過去があります。有名なのはGTのSTSですか。あれはコンセプトは良かったのですが、いかんせん製法がそれに追いついておらずえらく製品にムラがありました。未来は……、わかりませんけどね(笑)。



東レの60トングレードカーボン、T1100Gの豆知識

2014-11-06 22:10:00 | カーボン系素材

これは60トングレードのUDプリプレグ。といっても見ただけではわかりません(笑)。

以下引用

高強度・高弾性率炭素繊維トレカ®T1100G
および高性能トレカ®プリプレグの展開について

東レ株式会社(所在地:東京都中央区、社長:日覺昭廣)は、この度、これまで技術難度が高いとされた高強度と高弾性率化の両立を実現した、高強度・高弾性率炭素繊維トレカ®「T1100G」および同炭素繊維を使用した高性能プリプレグ(炭素繊維樹脂含浸シート)を開発しました。  

炭素繊維は、高い比強度・比弾性率および、優れた疲労特性や耐環境特性に基づく高い信頼性を有することから、航空・宇宙、産業、スポーツ分野での用途が急拡大しています。一方、ハイエンドな用途ではより一層の高性能化が求められてきました。  

今回開発した炭素繊維トレカ®「T1100G」は、ナノレベルで繊維構造を緻密にコントロールする焼成技術により、これまで技術難度が高いとされた高強度と高弾性率化の両立を実現し、すでに航空・宇宙分野をはじめとするハイエンド用途で広く採用されているトレカ®「T1000G」「T800S」など従来の当社製炭素繊維に比べて大幅に性能を高めることに成功しました。  

併せて、プリプレグにおいては、革新的なナノテクノロジーをベースにして、引張強度と耐衝撃性を両立するマトリックス樹脂技術を開発しました。これを炭素繊維トレカ®「T1100G」と組み合わせることで、航空・宇宙分野の構造部材やハイエンドスポーツ用品などそれぞれの分野で要求される極限性能を実現していきます。  

東レは、炭素繊維複合材料事業を戦略的拡大事業と位置付け、積極的な経営資源を投入し事業拡大や研究・技術開発を進めています。東レが本年2月に策定、発表した新しい中期経営課題“プロジェクト AP-G 2016”では、長期経営ビジョン“AP-Growth TORAY 2020”の基本的な考え方のもとで、世界ナンバーワンの炭素繊維メーカーとして事業拡大を加速させていきます。  

東レは今後も、炭素繊維トレカ®およびトレカ®プリプレグの一層の高性能化やプロセス加工性改善を通じて新製品の開発に取り組み、航空機や自動車などの軽量化で省エネルギーを推進するとともに、風力発電機翼やシェールガス等の貯蔵および輸送用圧力容器などへの適用によって新エネルギーの普及に貢献し、素材の力で社会を変革してまいります。
 
http://cs2.toray.co.jp/news/toray/newsrrs01.nsf/0/194046204E4FF3D749257D0D002284F3
引用終わり



T1100Gは東レの商品名なので、中身を変えられてもわかりません(笑)。といってもそれだと設計が出来ませんのでデータはちゃんと公表されています。

この比較データがとても目安になると思います。



もちろんT1100Gも気になるのですが、T1000GとT800Sです。改めて見ると弾性率が一緒なんですね。単純に数字の錯覚のせいか、800と1000にまさに桁違いの差があるような気がしてしまうのですが、そうではありません。非常に近い性能を持っています。T800Sもほぼ60トングレードと言ってしまって良い感じです(笑)。

T1100Gを見直すと、引っ張り強度だけでなく弾性が向上しているのが目に付きます。さすがナノレベルで繊維構造をコントロールし、焼成しているというだけあります。糸、焼成ともに非常にハイテクの固まりですね。

そうそう、カーボンは糸も作るのがとても難しいらしいのです。東レは今まで日本とアメリカにだけこの原糸の生産工場がありましたが、先々月(2014年9月26日)からフランスにも工場を立ち上げました(http://www.toray.co.jp/news/carbon/index.html)。しかも東レ100%出資! 世界一のシェアを誇る東レであっても生産出来る工場は世界でわずか3カ所なんですね。自転車だともはやカーボンはすっかりお馴染みのモノになっていますが、やはりスペシャルな素材です。



AXライトネスの製作風景を見てみよう

2014-10-27 04:41:00 | カーボン系素材
ここは実は自転車パーツだけではなく、モーターサイクルやレーシングカーの部品も製作しています。もちろんカーボンが主体ですけど。



プリプレグのカッティングマシーンからオートクレーブまで、まあきっちり最先端のカーボン製品製作設備が整っています。これは価格を納得せざる得ないでしょう。それにしても高値の花ですけど(笑)。ライトウェイトまで高くても売れるようになるのは……、なかなか難しいですね。あれは20年近くの実績とレースでの露出などがあってこそですから。でもAXライトネスの技術もオタク具合も引けを取っていないと思います。

ドイツは……、オタクが一杯でいいですね(ニヤ)!


トウプリプレグワインディングの工程を見てみよう

2014-07-21 20:46:00 | カーボン系素材
こういった工程を黙々とこなしていく様子って、ついつい見入ってしまいます。UDカーボンは、自在に貼り合わせ角度を調整できるのが強みの一つです。



人間が出来る事、機械が出来る事、どちらも重要です。こういった密な反復作業は機械の仕事でしょう。

剛性の足りないところにMDカーボンのプリプレグを張り込んでいって剛性を調整するのも確かに有効な手段だと思いますが。自転車のパイプも究極を考えればこれに近くなるのでしょう。カーボンにとっては一体化していない段差部分こそ最大の弱点ですから。