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その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

N響A定期、指揮:ガエタノ・デスピノーサ、シェーンベルク/浄められた夜 他

2021-12-26 07:30:20 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


(3週遅れの演奏会感想です)

コロナによる入国制限で指揮者、プログラムとも変更となった12月定期。当分、こうした形でのイレギュラーバウンドは避けられないでしょうが、今回のイレギュラーバウンドも難なく捌く(捌いているように見える、聴こえる)N響は流石です。

イタリア人指揮者のデスピノーザさん、過去にN響と何度か共演しているようですが、私は初めて聞く方です。
冒頭はブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」。最後に聞いたのは、2013年9月のブロムシュテットさんとの共演。その時の柔らかで、天国のいるような演奏がまだ脳裏に残っていたのですが、この日の演奏も美しいものでした。NHKホールの3階席ではなくて、ステージサイドの奏者に手が届くような距離で聴くアンサンブルや木管の響きにうっとりでした。

2曲目はバルトークのピアノ協奏曲第3番。実演で聴くのは初めてです。映画「蜂蜜と遠雷」で風間塵が弾いたのを観て、是非、一度、生で聴いてみたいと思っていたのが実現しました。私としては、この日のメインです。

ピアノソロの小林さんも初めてです。なじみがあるとはとても言えないバルトークの音楽なのですが、第一楽章からワクワクし、格好いい。以下、恩田陸さんの『蜂蜜と遠雷』からの引用です。
「バルトークのメロディには、他の作曲家にはない土着性がある。沈んだ森の色、風の色、水の色がある。」その通りでした。

 つづく第2楽章は瞑想的な音楽。沈思するという感じです。
「ゆったりとした、厳かなオーケストラの導入部。ゆっくりと、木立の中を鹿が歩いてくるのが見えるようだ。
 かすかに靄が立ちこめ、うっすらと肌寒く、どこか神秘的な空気がぴんと張りつめた朝。
 まだ、夜は明けきらず、息を潜めるような静けさが辺りに漂っている。」(『蜂蜜と遠雷』より)

 そして、第3楽章はピアノからはじけ出る音がピカピカ光り輝いているのが見えるような音楽です。
「わくわくする、躍動感溢れるバルトークの世界が、スリルとスピードを伴って輝かしく膨れ上がる。」

ソロの小林さんは、どっかの大学院の研究室にでもいらっしゃるような雰囲気で、堅実にしっかりと音を出してます。華美に振舞うようなところもなく誠実に音楽に向き合っている感じが好印象でした。また、是非、聴いてみたい演奏家ですね。

そして、後半のシューンベルクの「浄められた夜」。音楽史や音楽理論で頻繁に目にするシューンベルグの代表作も、聞くのはじめて。弦楽器だけの構成で、コントラバスが最後列で一列に並ぶ隊形です。重層的に奏でられる弦楽器のアンサンブルが味わい深い。ただ、前半戦でエネルギーを使い果たした感がある私は、第4曲あたりで猛烈な睡魔に襲われダウン。第5曲終了間際に復活し、最終曲はしっかり聞きましたが、途中離脱したのが何とも残念でした。

ユニークなプログラムで演奏も素晴らしいものでしたが、入りは7割弱といった感じでしたが、内容濃く、充実した演奏会でした。

第1945回 定期公演 池袋Aプログラム
2021年12月5日(日)開演 2:00pm

東京芸術劇場 コンサートホール

指揮:ガエタノ・デスピノーサ※
ピアノ:小林海都※

※当初出演予定の山田和樹(指揮)、佐々木典子(ソプラノ)から変更

ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
バルトーク/ピアノ協奏曲 第3番※
シェーンベルク/浄められた夜 作品4

No. 1945 Subscription (Ikebukuro Program A)
Sunday, December 5, 2021 2:00p.m.

Tokyo Metropolitan Theatre

Gaetano d'Espinosa, conductor
Kaito Kobayashi, piano

Brahms / "Variationen über ein Thema von Haydn," Op. 56a
Bartók / Piano Concerto No. 3*
Schönberg / "Verklärte Nacht," Op. 4
*Artists and program have been changed from initially scheduled Kazuki Yamada (Cond.) and Noriko Sasaki (soprano).

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