その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

べたノウハウ本だが即戦力: 原田将嗣 『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社、2022)

2023-06-07 07:33:02 | 

今の流行りのバズワード「心理的安全性」についてのベタなビジネスハウツー本です。「心理的安全性」の重要性は経営学者さんの間ではずいぶん前から認識されていたようですが、10年ぐらい前にグーグルが成果や生産性につながる重要な因子であることを着目し、注目を集めるようになったコンセプトです。本書は、その「安全性」を高めるのに役立つ、職場の会話での55のフレーズがNGグレーズと併せて紹介されてます。

「心理的安全性?給料もらって仕事してんのに、そこまで気を遣わねばならんのか~」と反射的に反応してしまう私のような昭和サラリーマンの残党(私自身は平成サラリーマン)には、このぐらいベタである方が、返って割り切れて良いです。

監修者による頭書きでやられました。「使っていませんか?こんな「NG言葉」」として最初に紹介されたのは、「相談されたら本人のことを思い「まずは自分で考えて!」と言っている」。わが身を振り返ると、確かに頻繁に使っています。

「心理的安全性とは「誰もが率直に、思ったことを言い合える」状態のことで、「心理的安全性性が確保されていると、ミスの報告のように話しにくいことでも素早く情報共有ができたり、新しいことへの挑戦が増えたり、働くことで満足感や充足感に満たされるようになる」。そして「個々人の仕事の質が上がり、チームとしての学習が促進され、結果的にチーム全体の成果も向上していく」ものなのです。それには、ちょっとした言葉遣いから大切になるわけです。

本書はNGワードが、どういう言葉を使えば「心理的安全性」が維持・向上される言葉になるかについて具体例で紹介されているのが役に立ちます。例えば、「なんでできなかったの?」→「やってみてわかったことを、一緒に振り返ってみよう」「話したい事、何でも話していいよ。何かある?」→「最近のグッドニュースとバッドニュースを教えてください」などなど。

もちろん表層的なテクニックとしての言葉だけを使っても、すぐメッキははがれるでしょう。ただ、こうしたメッキから入るアプローチも十分にありだと思いますし、本書はしっかりと「なぜ」こうした言葉が有用なのかを解説してくれているので、その考え方、アプローチ手法が理解できれば、いろんな応用も効くと思います。

職場の皆が使ったら、それはそれで気持ち悪いですが、そうした言葉が自然に出てくるチームはきっととても働きやすいと思います。単なる言い方のハウツーで終わらせることなく、どうしたら組織と個人がWin-Winの関係になるのか考えるきっかけとしたい一冊です。

 

【目次】
第1章 毎日使いたい! チームの土壌をつくる言葉
第2章 会議を活性化させる言葉
第3章 1on1が楽しみになる言葉
第4章 チャレンジフルなチームをつくる言葉
第5章 お客さまと取引先を「パートナー」に変える言葉
第6章 ピンチをチャンスに変える言葉

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする