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その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ジャーナリズムについて考える硬派映画 「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(監督 スティーヴン・スピルバーグ、2017)

2018-09-07 07:32:01 | 映画


 こちらもロードショーで観たかったが、機会を逸した作品。夏休みのロンドン行の機内で観れた。
 
 ベトナム戦争に関しての政府の情報秘匿に挑むワシントン・ポストのジャーナリストとその女性社主を軸に、ジャーナリズムについて描く社会派映画。監督はスピルバーグで、原題は"THE POST"。

 紙・ネットを問わずメディアに、いかさま情報・フェイクニュースがあふれるこの現代社会の中で、ジャーナリズムの役割、質とは何かを正面から問う本映画の意義は高い。真実を明らかにし、国民・市民にメッセージを伝えるには、志、勇気、コストが必要だということが良くわかる。今のジャーナリズムが何と軽く見える事か。

 メリル・ストリープ、トム・ハンクスという超大物俳優が演じるだけあって、作品全体の安定感は抜群だ。ストリープは父親から引き継いだ社主としての責任感を力みなく自然体で演じていた。

 最近では、新聞メディアを扱った映画としては「スポットライト 世紀のスクープ」(監督トム・マッカーシー、2015)があったが、それと同様に良質の一本である。



キャスト

メリル・ストリープ:キャサリン・グラハム
トム・ハンクス:ベン・ブラッドリー
サラ・ポールソン:トニー・ブラッドリー
ボブ・オデンカーク:ベン・バグディキアン
トレイシー・レッツ:フリッツ・ビーブ
ブラッドリー・ウィットフォード:アーサー・パーソンズ
アリソン・ブリー:ラリー・グラハム・ウェイマウス
マシュー・リス:ダニエル・エルズバーグ

スタッフ

スティーヴン・スピルバーグ:監督
ティム・ホワイト:製作総指揮
トレヴァー・ホワイト:製作総指揮
アダム・ソムナー:製作総指揮
トム・カーノウスキー:製作総指揮
ジョシュ・シンガー:製作総指揮
リズ・ハンナ:脚本
ジョシュ・シンガー:脚本
ジョン・ウィリアムズ:音楽



映画館で見たかった・・・ 『グレイテスト・ショーマン』

2018-09-04 06:27:17 | 映画


 映画館で観よう観ようと思いつつ、機会を逸してしまっていた「グレイテスト・ショーマン」を機内で観ることができた。実在のアメリカの興行師P・T・バーナム(1810-1891)を描いたミュージカル映画である。

 批評家の受けは良くなかったらしいが、展開はテンポ良いし、ストーリは楽しく、流れる音楽・踊りは見ていて自然と体が動くウキウキする映画。

 ホンモノのP・T・バーナムはもっといかさまペテン師に近いらしいが、ヒュー・ジャックマンが演じたのは、夢と情熱を持ったリスクを恐れない魅力的人物だ。アメリカンドリームの体現者と言って良いだろう。脇役陣も光っていて、其々の個性を持つサーカスの芸人さんたちをはじめ、パーナム婦人役のミシェル・ウィリアムズ(どっかで見たことあると思ったら「マリリン 7日間の恋」の主演だった)、オペラ歌手役のレベッカ・ファーガソン(この人初めてでしたが、目茶綺麗な人ですね)、相棒ザック・エフロンなど、皆、存在感が凄まじい。

 俳優陣以上に素晴らしいのは歌。キアラ・セトルの"This is me”、"A Million Dreams”など、音楽の素晴らしさが堪能できる。

 あまりにも楽しいので、サンフランシスコから羽田への帰国便の中で2回も見てしまった。どこかの映画館でもう一度やってくれないかなぁ〜


タイトル:グレイテスト・ショーマン
原題:THE GREATEST SHOWMAN
製作年度:2017年
上映時間:104分
製作国:アメリカ

監督:マイケル・グレイシー
製作総指揮:
ジェームズ・マンゴールド
ドナルド・J・リー・Jr
トーニャ・デイヴィス
脚本:
ジェニー・ビックス
ビル・コンドン
音楽:
ジョン・デブニー
ジョセフ・トラパニーズ

キャスト
ヒュー・ジャックマン:P・T・バーナム
ザック・エフロン:フィリップ・カーライル
ミシェル・ウィリアムズ:チャリティ・バーナム
レベッカ・ファーガソン:ジェニー・リンド
ゼンデイヤ:アン・ウィーラー

「ゴッホ 最期の手紙」 (監督ドロタ・コビエラ/ ヒュー・ウェルチマン)

2017-11-23 08:00:00 | 映画


前知識ゼロで観に行ったら、ゴッホの絵をベースにしたアニメーション映画だったのでで驚いた。中身はゴッホの自殺の謎を解きほぐしていく話で、ストーリー的にも面白く、不遇なゴッホの半生が実感を持って分かったので、見て良かったと思わせてくれる映画だった。

私がこれまでに読んだ数冊の「西洋美術史」概説的な本からの記憶では、「ゴッホの死は精神の病がもとでピストル自殺した」とのことだったので、実はその死を巡っても謎があることは初めて知った。(ただ、どこまで映画に出てくるエピソードが、どこまで実際の検証に基づいたものなのか、それとも全くの作り話なのかの区別がつかないので、私にはよくわからない。)

また、これまで、ゴッホの絵は、いろんなところでそれなりに観ている(ついこの間も『郵便配達人ジョゼフ・ルーラン』がボストン美術館展で来日していた)ので、一つ一つの風景や人物が思い当り、今まで見た絵に更に奥行が出来たような気になる。もう一度、其々の絵を見てみたいと思う。

絵画好きの人には自信持ってお勧めできる一作。


スタッフ
監督ドロタ・コビエラ ヒュー・ウェルチマン
製作 ヒュー・ウェルチマンイバン・マクタガードショーン・M・ボビット
製作総指揮 デビッド・パーフィットシャーロッテ・ウベンラウリー・ウベンガード・シェパーズクローディア・ブリュームフーバーエドバルト・ノルトナー
脚本ドロタ・コビエラヒュー・ウェルチマン
撮影 トリスタン・オリバーウカシュ・ジャル
美術 マシュー・バトン
衣装 ドロタ・ロクエプロ
編集 ユスティナ・ビエルシンスカドロタ・コビエラ
音楽 クリント・マンセル

キャスト
ダグラス・ブース アルマン・ルーラン
ジェローム・フリン ガシェ医師
ヘレン・マックロリー ルイーズ・シュヴァリエ
クリス・オダウド ジョゼフ・ルーラン
シアーシャ・ローナン マルグリット・ガシェ
ジョン・セッション ズタンギー爺さん
エレノア・トムリンソン アドリアーヌ・ラヴー
エイダン・ターナー 貸しボート屋
ロベルト・グラチーク フィンセント・ファン・ゴッホ
ピョートル・パムワ ポール・ゴーギャン

ドゥニ・ビルヌーブ監督  「ブレード・ランナー2049」

2017-11-10 19:10:33 | 映画


 マニアというほどではないが、旧作「ブレード・ランナー」は、「未来世紀ブラジル」と並んで学生時代から大好きな作品の一つである。DVDも持っている。あの不思議で混沌とした未来都市ロサンジェルスや感情を持ち始めたレプリカント(アンドロイド)の衝撃は、今でも忘れられない。その続編がいよいよ制作されたということで、期待感一杯で出かけた。

 前作の世界観を引き継ごうとする意志は感じられたし、続編がオリジナルを超える出来栄えになることなど殆どないということも分かってはいるものの、内容は少々がっかりだった。描かれた世界や技術に新規性は感じられず、新たなサプライズがない。陳腐なアクションムービーになってしまっている印象を受けた。2時間40分の上映時間も冗長だ。

 今の我々の現代社会では、過去にさまざまなSF映画で描かれた未来技術や未来社会は、かなり現実味を帯びてきている。そんな中で、新規性を持つSF映画を創作することは相当難しいのだろうということが感じられた。ストーリーの軸も、前作が描いたような人間対レプリカントという構造ではなく、この作品はレプリカント対レプリカントだ。人間の出る幕はほとんどない。

 ネットの評判は驚くほど好意的なので、私の事前の期待値が高すぎただけかもしれないが、私には残念な映画となった。


スタッフ
監督ドゥニ・ビルヌーブ
製作アンドリュー・A・コソーブ、ブロデリック・ジョンソン、バッド・ヨーキン、シンシア・サイクス・ヨーキン

キャスト
ライアン・ゴズリング: K
ハリソン・フォード: リック・デッカード
アナ・デ・アルマス: ジョイ
シルビア・ホークス: ラヴ
ロビン・ライト: ジョシ


映画 『レンブラント 描かれた人生』 (監督アレクサンダー・コルダ、1936年)

2017-03-19 15:30:00 | 映画


 西洋絵画の巨匠レンブラントの半生を描いた伝記映画。波乱万丈のレンブラントの人生を追体験できる。

 欧州在住時にレンブラントの自画像はいくつも鑑賞し、若き野心に満ちたレンブラント、絶頂期の自信一杯のレンブラント、老齢期の絶望的なレンブラントを見てきて、彼の人生は何となくわかったようなつもりになっていたが、こうやって映像で半生を追うとまた違った面が見えてくる。絵でも描かれる最初の妻サスキア(映画には登場しないが)や後妻のヘンドリッキエといったレンブラントを支えた女性たちや息子ティトゥスなど、レンブラントの絵が描かれた周囲に居た人達を知ることで、より複視眼的に絵も見れる気がする。俳優陣も好演。

 時代考証がどこまで正確かはわからないが、当時のアムステルダムの活気、宗教の位置づけ、地方の風俗なども興味深かった。たまたま図書館の視聴覚コーナーにDVDがあったのを見つけ視聴したのだが、レンブラント好きの方にはお勧めできる一本。


スタッフ
監督アレクサンダー・コルダ
脚色ジューン・ヒード
原作カール・ツックマイヤー
製作アレクサンダー・コルダ
撮影ジョルジュ・ペリナール

キャスト
チャールズ・ロートンRembrandt van Rijn
ガートルード・ローレンスGeertje Dirx
エルザ・ランチェスターHendrickje Stoffels
エドワード・チャップマンFabrizius
ジョン・ブライニングTitus van Rijn

作品データ
原題 Rembrandt
製作年 1936年
製作国 イギリス

映画 「キンキーブーツ」 /監督 ジュリアン・ジャロルド (2006年公開)

2017-02-17 08:00:00 | 映画


 父親の急死で、家族経営の紳士靴製造会社を引き継いだ若社長が、倒産の危機を乗り越えるため、起死回生の一手を打つ。ロンドンで偶然知り合ったドラァグクイーン(派手な女装趣味の男性)にデザインを依頼し、ドラァグクイーン向けのブーツの生産を始めるのである・・・。ハートフルコメディのお手本のような展開だが、実話に基づいているとのこと。

 主な舞台は、ロンドンから100k程北西にあるノーザンプトンという街。列車で近くを通ったことはあるが、行ったことは無い。でも、イングランド中部の田舎町の雰囲気がとっても懐かしかった。

 映画は終始、ドラァグクイーン、ローラ役のキウェテル・イジョフォーの個性が光る。周囲の偏見と戦うというよりも、折り合いながら、自己主張するローラを好演。彼(彼女)抜きに本作はありえない。

 笑いと少しのドキドキがあって、最後はほっこり。万人に受ける佳作で、見て損はない。


スタッフ
監督:ジュリアン・ジャロルド
脚本:ティム・ファース、ジェフ・ディーン
撮影:エイジル・ブリルド
衣装:サミー・シェルドン

キャスト
ジョエル・エドガートン:チャーリー・プライス
キウェテル・イジョフォー:ローラ
サラ=ジェーン・ポッツ:ローレン
ユアン・フーパー:ジョージ
リンダ・バセット:メル

原題
Kinky Boots
製作年;2005年
製作国:アメリカ・イギリス合作
配給:ブエナビスタ

映画館で観たかった:映画「マクベス」 (監督: ジャスティン・カーゼル、2015)

2017-01-22 08:00:00 | 映画


 「マクベス」の映画版は何本かあるようだが、本作品は2015年制作なので最も新しいものであろう。現代の撮影らしい映像美に満ち溢れた作品となっている。

 スコットランドの冷え冷えとした荒野、岩山が、美しく切り取られているし、城内の燭台が連なった印影も印象的だ。きっと映画館で見れば、スケール感や幻想さが迫力持って伝わってくるのだろうけど、DVDによるTV視聴では限定的な経験しかできなかったのが残念。

 ストーリーは、場面がカットされたり(酔っ払い門番のシーンは無しなど)、台詞が原作とは前後するなどはあるが、基本的には原作の筋に沿っている。大きな違いは、冒頭に原作にないマクベス夫妻の子供と思しき幼児の埋葬で始まり、所々でこの幼児が登場するところであるが、正直、その意図するところは良くわからなかった。

 本作の特徴は、マクベス夫妻の夫婦愛を、メインなテーマとして扱ったところだろう。この夫婦、悪妻マクベス夫人が迷うマクベスを悪事に引っ張り込む的なカップルとされることが多いと思うが、本作の印象は「悪にも愛は有る」的な描き方だ。特に、原作の第5幕第5場でマクベスがマクベス夫人の死の知らせを受けた場面では、台詞は淡々と達観したものであるにかかわらず、死んだ夫人の体を抱きかかえ、死を悲しむ。その愛の表現は今までの「マクベス」では見たことが無く、感動的だった。マクベス夫人がマリオン・コティヤールという美人女優であることも新鮮だ。

 日本では昨年公開され、必ずしもヒットしたとは言えないようだが、「マクベス」の新たな一面を見るという点で、十分視聴する価値はあると思う。


スタッフ
監督: ジャスティン・カーゼル
原作: ウィリアム・シェイクスピア
製作: イアン・カニング / エミール・シャーマン / ローラ・ヘイスティングス=スミス
撮影監督: アダム・アーカポー
美術: フィオナ・クロンビー
衣装: ジャクリーン・デュラン
音楽: ジェド・カーゼル
キャスト
マクベス: マイケル・ファスベンダー
レディ・マクベス: マリオン・コティヤール
バンクォー: パディ・コンシダイン
ダンカン王: デヴィッド・シューリス
マクダフ: ショーン・ハリス
マルコム王子: ジャック・レイナー

さすが世界のクロサワ: 映画「蜘蛛巣城」(監督:黒沢明、1957)

2017-01-12 07:30:00 | 映画


 黒沢明が「マクベス」を下敷きに撮った映画があると聞き、DVDを借りて視た。魔女が三人でなく一人など、細かいところで違うところはあるが、ストーリーはほぼ同じと言ってよい。

 さすが黒沢。マクベスの世界が、戦国時代の日本に代えて再現してある。霧に覆われた謎めいた山城、騎上の武士の爆走、ラストの戦闘シーン、黒沢さわしい映像美が白黒画像の迫力と掛け合わされ、重厚で神秘的な世界が表現されている。

 鷲津武時(マクベス)を演じる三船敏郎と妻(マクベス夫人)の山田五十鈴の演技も特筆に値。野心が狂気に至る夫婦を熱演している。

 マクベスに興味がある人にも、無い人にもおすすめできる映画だ。

蜘蛛巣城

監督:黒澤明
脚本:小国英雄,橋本忍,菊島隆三,黒澤明
製作:黒澤明,本木荘二郎

出演者
三船敏郎
山田五十鈴
千秋実

音楽:佐藤勝
撮影:中井朝一
編集:黒澤明

製作会社:東宝
配給:東宝

映画 「この世界の片隅に」(監督:片渕須直、2016)

2016-12-23 13:59:01 | 映画


 SNSで評判になっていたので見に行ってきた。太平洋戦争時、広島から軍港・呉に嫁いだ少女すずの生活・成長が描かれるアニメ映画。

 評判通りの完成度の高い映画だった。特に印象的だったのは、主人公を声優として演じたのん。主人公は、のろまでぼうっとした性格だが、厳しい時代を精一杯に生き抜いていく。そのすずの内面を表現力豊かに演じていた。その飾り気のなく自然な演技は深く心に染み入る。「あまちゃん」以後、芸能界の中ではいろいろトラブルの渦中にあるようだが、俳優(声優)としては天性の才があるのは間違いない。

 ストーリーも各登場人物もごくごく自然体。原作が実話に基づいたものかどうかは不明だが、戦時中の一般市民の生活って、きっとこんな感じだったのだろうなあと思わせる。国家レベルでの意思決定に規定され、翻弄されざるえない庶民だが、そうした環境でも逞しい。当時の彼らと今の我々をを比較し、恵まれているなあと一瞬思ったが、すぐに、我々も形は違えど、上からの力に規定、制約されて毎日を生きていることにも気づかされ、時代を超えて同じ一庶民として共感できる。

 映像も美しく、音楽も物語にしっかりはまっている。強くお勧めしたい一本だ。


監督:片渕須直
脚本:片渕須直
原作:こうの史代
製作総指揮:丸山正雄、真木太郎(GENCO)

出演者
北條すず - のん
北條周作 - 細谷佳正
黒村晴美 - 稲葉菜月
黒村径子 - 尾身美詞
水原哲 - 小野大輔
浦野すみ - 潘めぐみ
北條円太郎 - 牛山茂
北條サン - 新谷真弓

音楽:コトリンゴ

昭和の時代を思い起こさせてくれる映画 「の・ようなもの のようなもの」 (監督:杉山泰一 、2015)

2016-07-29 18:53:02 | 映画


 「の・ようなもの」(監督 森田芳光)の35年後を描いた作品。「の・ようなもの」で助監督を務め、その後も森田監督と一緒に仕事をした杉山泰一が監督。落語家に入門した若者の日々がコメディ要素も含みながら淡々と描かれる。

 森田監督が急逝された後に、森田監督に所縁のある人たちが集まって作った映画ということで、映画そのものから哀悼の気持ちがにじみ出ていると思うのは私だけだろうか?物語も、師匠の十三回忌一門会に向け、弟子たちが師匠を偲ぶというお膳立ても偶然ではないだろう。暖かい人の気持ちや人の縁に思いを感じる映画だ。

 ただ、むか~し「の・ようなもの」を観ている私には、この映画ならではの懐かしさ、面白さが理解できるのだけど、初めての人にはどうだろうか?起承転結はあるものの、スローで起伏の小さい展開は、少々観ていてつらいかもしれない。悪く言えば、「毒にも薬にもならない」と言えなくもない。

 主演の松山ケンイチが素朴で真面目な若者を好演。確か、4年前に観た「僕たち急行 A列車で行こう」(監督 森田芳光)も似たようなまったり映画だったが、彼にはこういう役柄がよく似合う。



キャスト
松山ケンイチ:出船亭志ん田
北川景子:夕美
伊藤克信:出船亭志ん魚
尾藤イサオ:出船亭志ん米
でんでん:出船亭志ん水
野村宏伸:出船亭志ん麦
鈴木亮平:蕎麦屋の出前
ピエール瀧:渡辺孝太郎
佐々木蔵之介:みやげ物屋の店主
塚地武雅:銭湯の男
宮川一朗太:弁当屋のオジちゃん
鈴木京香:都せんべい女主人
仲村トオル:居酒屋の主人
笹野高史:床屋の主人
内海桂子:秋枝婆さん
三田佳子:斉藤女会長

スタッフ
杉山泰一:監督
堀口正樹:脚本
大島ミチル:音楽

映画 「The lady in the Van」 (Director: Nicholas Hytner 、2015)(邦題:ミス・シェパードをお手本に)

2016-07-11 20:00:00 | 映画


 飛行機の中で見た2015年製作のイギリス映画。ロンドンに住む脚本家の敷地内に、バンを住まいとするホームレスの老婦人が15年間居ついた。この二人の15年に及ぶ交流を描くコメディタッチのヒューマンドラマ。実話に基づいた話だそうである。

 イギリス映画らしく、派手さはないが丁寧に「人」を描いた作品。人生の巡り会わせの運・不運や人の「強さ」・「優しさ」・「厭らしさ」がリアリティ一杯に描かれる。単純な人間讃歌でない一方で、鑑賞後はほのぼのした気持ちになれる。

 主演女優のマギー・スミスは、映画「ハリー・ポッター」シリーズやTVドラマ{ダウントン・アビー」シリーズでも顔なじみ。紆余曲折の激しい半生を過ごした挙句に、ホームレスに行き着いた老婦人を自然体で演じている。

 日本での公開はまだないようだが、この類の映画が好きな人は、私も含めて結構いると思う。

(※2016年12月14日現在、上映中)


Director: Nicholas Hytner
Writer: Alan Bennett
Stars: Maggie Smith, Alex Jennings, Jim Broadbent

The Lady in the Van tells the true story of Alan Bennett's strained friendship with Miss Mary Shepherd, an eccentric homeless woman whom Bennett befriended in the 1970s before allowing her temporarily to park her Bedford van in the driveway of his Camden home. She stayed there for 15 years. As the story develops Bennett learns that Miss Shepherd is really Margaret Fairchild (died 1989), a former gifted pupil of the pianist Alfred Cortot. She had played Chopin in a promenade concert, tried to become a nun, was committed to an institution by her brother, escaped, had an accident when her van was hit by a motorcyclist for which she believed herself to blame, and thereafter lived in fear of arrest.

映画 「帰ってきたヒトラー」 (監督:デビッド・ベンド、2015年)

2016-06-25 18:00:00 | 映画


「帰ってきたヒトラー」(原題はEr ist wieder da 「彼が帰ってきた」)。本物のヒトラーがタイムスリップして、現代ドイツに現れ、ヒトラーのモノマネ芸人として人気を博すシニカル・コメディ。

イギリスの国民投票でEU離脱派が勝利し、米国大統領選挙ではトランプ旋風が起こり、日本でも「昔の「美しい日本」を取り戻そう」を持論とするリーダーの勢いが衰えない。こんな環境下で、この映画を見ると、全く笑うに笑えないし、むしろ背筋が寒くなった。

ところどころにドキュメンタリータッチに一般市民へのインタビューシーンがある。正面から人種差別的な外国人排斥や排他的に過去のドイツを賞賛する声が発せられる。EU離脱を唱える英国人と同様に、少なからずのドイツ人の本音だろう。理念、理想を追うことよりも、目の前の切実な行き詰まり感が大きくなった世界の現実が示される。

「大衆が私を選んだのだ」「私は大衆の心の中にある」とヒトラーに言わせるラストシーンは、前半の大衆の声と呼応して、ドラマと現実が交錯し、否が応でも「今」を問う。歴史の針が、着実に逆向きに進んでいる今、我々は第二のヒトラーを選んでいくのであろうか?

今、まさに観るべき映画だ。

映画 「バクマン。」 (監督 大根仁、2014)

2016-06-16 20:00:00 | 映画


 少年ジャンプへの掲載を目指す漫画家の卵の高校生二人組の青春物語。私は読んだことがないが、連載漫画の映画化とのこと。

 漫画読者の中には、原作と映画のギャップにいろいろ違和感を感じる人も多いようだが、原作未読の私は純粋に楽しめた。ストーリー展開がスピーディで飽きさせないし、主人公の2人の男優(佐藤健、神木隆之介)は、高校生にしては老けてるが、好感持てる熱演。ジャンプの編集者や他の漫画家の卵たちも、個性豊かな人間臭い連中ばかりだ。

 私自身、小中高生のころは漫画週刊誌にはずいぶん世話になったので、ノスタルジーを掻き立てられる。ただ一方で、この年齢になってこの映画を見ると、漫画界ってすごいブラック職場だなあとちょっと寒くなる。成功する漫画家はほんの一握りで、読者と出版社がその他大勢の漫画家たちの血と汗を吸い取るビジネスモデルだからだ。こうしたモデルって、長持ち(企業言葉でいうとサステナブル)するのだろうかと余計な心配をしてしまう。

 エンターテイメントとしては十分に満足行く映画で、気分展開したい時に最適。



スタッフ
監督 大根仁
原作 大場つぐみ、小畑健
脚本 大根仁
製作 市川南

キャスト
佐藤健 
真城最高
神木隆之介 
高木秋人
小松菜奈 
亜豆美保
桐谷健太 
福田真太
新井浩文 
平丸一也

映画 「道」 (監督 フェデリコ・フェリーニ、1954年)

2016-05-24 00:09:05 | 映画


 地元の図書館で借りて観てみた。1954年製作・公開のイタリア映画。原題はLa Strada(ロンドンでStradaというレストランがあったけど、こういう意味だったのね)。1956年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞している。

 怪力を売りに地方巡業する大道芸人の男と、その男に買われて相棒として行動を共にする知能は弱いが純真な女(少女?)との道中が描かれる。現実の厳しさ、人の優しさが、装飾なく自然に切り取られており、白黒の映像効果も加わって、しみじみとした気分に浸れる。

 大道芸人とペアを組んで道化として芸をするジェルソミーナ役のジュリエッタ・マシーナが表情豊かで、無味乾燥で荒涼とした道中の映像を活き活きとしたものにしてくれる。孤独で、不器用、暴力的な大道芸人を演じるアンソニー・クインとの対比が鮮やか。

 作品の一つの軸となるニーノ・ロータの音楽が美しく、耳に残る。2010年のバンクーバー冬季オリンピックでフィギュアスケート男子シングルの高橋大輔選手が使った曲だという(Wikiより)。

 現代の映画では、なかなか出会えない落ち着きと深みを持った映画だ。


キャスト

アンソニー・クイン
ジュリエッタ・マシーナ
リチャード・ベースハート
アルド・シルヴァーニ
マルセーラ・ロヴェーレ

スタッフ
フェデリコ・フェリーニ 監督
フェデリコ・フェリーニ 脚本
エンニオ・フライアーノ 脚本
トゥリオ・ピネッリ 脚本
ニーノ・ロータ 音楽

映画 「のぼうの城」 (監督: 犬童一心、樋口真嗣 2011)

2016-05-19 22:02:09 | 映画


 職場の同僚と埼玉県行田市(彼が住んでいる)の話になった。埼玉県には3年間の勤務・居住経験があるが、正直、行田市と聞いても何のイメージを浮かんでこない。だが、彼によると「映画『のぼうの城』の舞台の忍城(おしじょう)があったんですよ。映画も面白いですよ」らしい。

 映画のタイトルは知っていたが見たことなかったので、せっかく紹介頂いたのでDVDを借りてみた。エンタメ時代映画として、文句なしの傑作だった。

 戦国時代は大河ドラマをはじめ、いろんな物語、ドラマに接してきたが、恥ずかしながら本映画の主人公、成田長親なる武将は知らなかった。なんと、500の兵で、石田三成率いる2万の豊臣軍を打ち負かしたという。普段は「でくのぼう」をもじって「のぼう様」と言われていたこの武将を、野村萬斎が面白おかしく演じている。脇を固める佐藤浩市、山口智充も万全。

 笑いあり、ドキドキ感あり、見終わった時には気分爽快。のんびり、難しいことを考えたくない時に最適の映画だ。




監督:犬童一心、樋口真嗣
脚本:和田竜
原作:和田竜

製作:久保田修
製作総指揮:信国一朗、濱名一哉、豊島雅郎

出演者
成田長親:野村萬斎
甲斐姫:榮倉奈々
正木丹波守利英:佐藤浩市
酒巻靭負:成宮寛貴
柴崎和泉守:山口智充
石田三成:上地雄輔
大谷吉継:山田孝之
長束正家:平岳大
たへえ:前田吟
かぞう:中尾明慶
ちよ:尾野真千子
ちどり:芦田愛菜
留:ピエール瀧
山田帯刀:和田聰宏
成田泰高:谷川昭一朗
すが:ちすん
権平:米原幸佑
雑賀の狙撃兵:中村靖日
服部大五郎:黒田大輔
市原直右衛門:古村隼人
佐竹義宣:笠原紳司
成田氏長:西村雅彦
北条氏政:中原丈雄
珠:鈴木保奈美
成田泰季:平泉成
和尚:夏八木勲
豊臣秀吉:市村正親
ナレーション:安住紳一郎

撮影:清久素延、江原祥二
編集:上野聡一