バイユー ゲイト 不定期日刊『南風』

ブルース、ソウルにニューオーリンズ!ソウルフルな音楽溢れる東京武蔵野の音楽呑み屋バイユーゲイトにまつわる日々のつれづれを

不汁無知ル&愛染恭介&リトルキヨシ

2011-11-30 | ライヴ報告

では昨日の「感動しました」ブログに続き土曜日の詳細を…。

いつもより30分早い午後7時半過ぎ、ほぼ定刻に開演。最初はサックスとチェロによる不条理デュオ『不汁無知ル』。バイユーの常連出演者であり3月11日以降は『震災復興義援金企画』に何度も登場してもらっている二人。サックスと歌の渦ヨーコさんが一貫して「私たちって義援金企画にあまりに相応しくないんじゃないですか?」という程にダークで反社会的な匂いをふりまく芸風なのですが、今回の活動に対する意識は非常に高い。そして自らの「芸」を高めようという気持ちの強さと、「芸」あり方にさえ疑問を投げかけつつ進む試行錯誤感が僕的にはなんとも好ましい。「相応しい、相応しくない」でいえば「被災地に愛を届けよう!みんなで繋がろう~絆!」とかなんとか大きな声で手を振り上げたりできるような人たちこそがバイユーの義援金企画には相応しくないと思われ。「客席を暗くする(渦談)」のも大いに結構?なのであ~る。
そんな不汁、この日は「手話ダンス」の空見ボーさんをゲストに迎えての初LIVE。耳が不自由でほぼ音を聞く事ができないという空見ボーさん。彼女はこれまで何度かバイユーのLIVEを観に来ていたので耳のことは気づいていたものの、まさか聴こえない方だとは思わなかった。それくらいに行動的で積極的な方。しかし積極的も積極的、語り歌い吹く渦ヨーコ本人が「スイマセン」と謝る不汁無知ルの言葉を手話で通訳し、そのうえダンス!?凄い人だ。
で本番。なかなか言葉で説明できなくて申し訳ないのだけれど、音のない世界と音楽の共演はとてもスリリングで興味深いものでした。

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ビートを共有することに気を使い用意された楽曲、和風というかなんというか、その目と身体に感じる振動を元に身体を揺らす空見さんの妖しさはヨーコ嬢の怪しさと相まって(失礼)なかなかの見ものでした。空見さんありがとう。来てくれて、そして出てくれて嬉しかったです。あなたの佇まいは「俺ももっとやらなきゃいかん!」と思わせるに十分でした。そんな刺激は共にステージに立つ不汁の二人は更に強く感じるのか、今回のイベントへの思い入れゆえか、とにかく気持ちの入った演奏で緊張感もビンビン。

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個人的にはこれまでに観た不汁無知ルで一番でした。いろいろ演奏面のトラブルはあったようですがダークで不条理な世界観の中から思いが伝わってくる感動的な演奏でした。終了後客席から「…良かったよね?」という会話が聞かれたくらい。

続いて愛染恭介。以前から社会問題に対する意識は強く、それらを自らのフィルターを通して詩的かつロックンロールに翻訳を試みる彼は、直接的な言葉で説明的に歌う事は少ない。いやそれどころか声高に語る事もあまり好きではないように感じる。正義、というものに対する素朴な疑問や不確かさを敏感に感じるゆえにストレートなロックンロールからははみ出してゆくのか、結果時に「アングラな匂い」さえまとってしまう。でもクールな中に怒りを孕んだ歌声は良く聴けば思いの他優しくて熱い。そして一聴するとポップさやキャッチーが少ないようなその楽曲も実は歌心に溢れている。そんなほんの少しとっつきの悪い「良い音楽」。それが僕にとっての愛染恭介の魅力です。もちろん!僕が日々口ずさめるようなポップな曲も沢山あります。ただ彼の愛想を振りまくようなところのない佇まいにはポップさが足りないないかな?(笑)ゴメン。
そんな彼が二番手に登場。探るように聴き耳を立てるお客さんを前に丁寧に歌ってゆく姿に「ああやはり彼を呼んで良かった」と思ったものです。

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シャープな外見の彼が無骨に歌うメロディと骨太なことばの数々はやはり魅力的。いつも通りなにかを強く押し付けてくることはないけれど、人となりがしっかりと伝わる良いライヴでした。彼にしてはめずらしく直接的な内容の新曲も、心境の振幅が感じられて味わい深いものがありました。そういえばこのころから客席、いや店内の雰囲気が出演者の心意気にあてられてか不思議な熱さに変わって来ていたのだと思います。

そしてバイユー初登場のリトルキヨシ!僕が昔働いていた阿佐ヶ谷の店で、ノーズウォーターズのマストに紹介されて以来の古い友達。何度か自分でライヴを観に行ったこともあるくらいの存在(こういう仕事をしているとなかなか外に観に行く機会は少ないのです)。近年はリトルキヨシミニマム!gnk!としてメジャーでの活動が主だったし、横浜方面で活動していたので時に連絡をとりつつもバイユー出演は実現していなかったのでした。そしてようやくの初ライヴ。会場入りして「有さん、久しぶりの俺のライヴ聴いて気に入ったらまたこれから改めてよろしくお願いします」とキヨシ。?と思っているところに挨拶をすませた及川智明くんが「youtubeで観た北風って曲最高です。何度も観ました。今日やりますか?」と訊いたら、間髪入れず「やらない」と即答。あんまりな言い方に笑いつつもキヨシくんらしくない言い回しだなあと思う。すると及川くんの方に向き直り、僕の方も見ながら続ける「実は俺、あんまりバンバン曲のできるタイプじゃなかったんだけど3月11日以来、何か降りてきたのかどんどん曲が書けるようになってしまい、いい曲もいっぱいできたので。今はその新曲以外は演ってないんです。」「じゃ全部(アルバムに入ってない)新曲?」「はい(自信満々)」居合わせたもの一同驚く。でも及川くん「えー、でも聴きたいです」「すいません」「…遠くからきてるのでそうそうチャンスないのに」「うーん痛いとこ突くなあ」「じゃあアンコールなら?」「今日は3番目だしアンコールはないよ」
「いやわかんないよ」と僕。「アンコールならいいですよね?」と及川くん。「…OK、ではもしあったら考えます」と笑いながら応えるキヨシくん。リハーサルで聴いた曲も良かったし期待して迎えた本番。
エピフォンのセミアコをベースアンプとギターアンプに繋いでガツーンとかき鳴らし始まったロックンロールショウ!凄かった。久しぶりに見た彼は沢山のライヴで入った筋金をこれでもかってくらいに見せつけてくれた。そして新曲の数々。痛快なことこのうえない反原発ソングの数々、抑えようのない怒りがしっかり笑いを携えて届けられる。コミカルな表現ゆえ怒りと魂が伝わってくる。その他のテーマを持った曲もすべて、あの日以来誰もが体験した心の揺れをまっすぐに思いださせてくれる。自分をカッコ良く見せようなんてしない等身大のロックンロール!

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小柄な身体に「BIG」とプリントされたTシャツ姿。初めて彼を観るお客さんの心をしっかりと掴んでいる。店内の温度が上がる、上がる。彼の表現をどう思う人もとりあえず巻き込んで聴かせてしまうであろうパワーは凄い。やはり聴いてもらってナンボなのだ。あっという間に終了。しかし遠慮がちに始まった熱いアンコール。僕も及川くんも様子を見ていたがお客さんのほとんどが熱烈に求めている。応えたキヨシくんは「及川さんに…」と語りこの日唯一の「過去の曲」『北風』を歌った。

もうこの時点で「今日は凄い!」と感激していた僕でしたが
このあと更に…の

大トリ『及川智明』編は時間が尽きたのでまた明日!