バイユー ゲイト 不定期日刊『南風』

ブルース、ソウルにニューオーリンズ!ソウルフルな音楽溢れる東京武蔵野の音楽呑み屋バイユーゲイトにまつわる日々のつれづれを

観ましたか?長谷川穂積

2009-07-16 | ボクシング

20090714vs 観ましたか?火曜日のボクシング世界タイトルマッチ。観ましたよね?長谷川選手9度目の防衛戦。観てない?それは大変です。そんなに時間はかからないのでy●utubeで「長谷川vsロチャ」で検索して是非御覧下さい。以上。
あ、「長谷川vsマリンガ」も一緒にどうぞ。短い試合なので長谷川選手の距離感タイミングの取り方を凝視してご堪能下さい。くれぐれもKOシーンだけを観て興奮することのないように~。

いやぁ、凄かったですね。2試合連続の1RKO勝ち。最近は4試合連続KOですものね。2R、2R、1R、1R。バンタム級という軽いクラスではなかなか考えられないことです。しかもその内容がパワーでねじ伏せるものではなくタイミングとスピードで鮮やかに倒すというものばかり。距離の見切りや、カウンターのタイミングをはかる姿を1~3分間見せて一気に仕留める。ボクシングの奥深さ、凄みを短い時間で堪能させてくれる凄い試合ばかりです。短時間で決着した試合のため集中して試合を観返すことが可能で、伏線や見切りの過程に気づくことが比較的容易です。暴力的な格闘技とは一線を画す、ボクシングサイエンスの極地のような試合ぶり。痺れます。
今回の1R2分28秒にも驚かされました。右ジャブを出しながら距離と相手の反応を確かめてすぐに駆け引き上優位に立つと、打ち合うことなく相手を下がらせる展開に。自分が容易に前に出ることができる体勢を作るやいなやすぐに距離を詰めるチャンピオン。下がりながら打ってくる相手のパンチを余裕を持ってかわしながら更に距離を詰める。至近距離になった時点で相手のパンチを2発3発と今度はすれすれ!でよける。ここでバイユーで一緒に観ていたお客さんの中から「おお」と…Tマイさんからは「見切っとるなぁ~」と感嘆の声が上がる。一旦距離をとって仕切り直し、自分からパンチを出して攻め始める長谷川選手。長谷川選手はサウスポー(左構え)で構えたときに前に出ているのは右手の為、右で最初のジャブを打つのが相手との距離的には通常なのですが~ロープ際に廻り込みいきなりの左ストレート。と、次の瞬間狙いすましたようにもの凄いスピードで右フックが挑戦者の顔面を撃ち抜く。一瞬で意識が断ち切られキャンバスに倒れるロチャ選手。無意識で立ち上がりはしたものの試合はあっけなく決まった。…長谷川選手ただの1発も打たれていない。。。Vs
あの左から右を打つ時の緩急というかスピード、そして相手の無反応(に見えた)。凄すぎる。更に驚いたのが長谷川選手のコメント!左のあとの素早い右フックについて「左で誘ったら、相手が(自分が狙えるタイミングで)打ち返してこようと(反応しようと)するのを感じたのですぐに右のカウンターを狙った」。相手は無反応ではなくて反応する前に打たれていたのでした。もしかして止まって見えてでもいるのでしょうか?それくらいの世界です。
前回の防衛戦、強豪選手として評価の高かったマリンガ選手を1Rで3度倒した時もそうだったのですが、あまりの計ったようなタイミングと華麗さに、チャンバラの殺陣(たて)のようにさえ見えてしまう最近の長谷川選手の試合。こんな特別な(感覚の研ぎすまされた)時期って、果たして長く続くものなのでしょうか?世界的選手になるべく本場アメリカへ進出するのは今をおいて他にはないのではないでしょうか?この充実期をのがしてしまうようなことがあればなんとも勿体ない。日本ボクシング界、ボクシングファンの悲願、世界規模でのスター選手誕生のチャンスがすぐそこまで来ているように感じます。アメリカのメディアを覗くとバンタムで4連続KO、防衛9度のハセガワに注目が集まりつつあるようです。とにかく世界のボクシングファンに長谷川選手を見せたいと強く思います。10度、そして具志堅選手の日本記録13度の防衛を目指して欲しいという声もあるようですが…とにかく日本の世界チャンピオンとして文句のつけようのない実績を残している長谷川選手をなんとかもっと広い世界に出したいと強く思ったのでした。
アジア、南米、アフリカ、ヨーロッパと文字通り世界中の選手、そしてランキング上位や強いと噂の選手を選び倒してきた長谷川選手。ケチのつけようがありません。(考えてみれば、そんな世界チャンピオンってこれまで日本にいたか??)所属ジムにとっては収入の問題などアメリカ行きにはリスクが大きい(アメリカではスターになるまでは世界チャンピオンでも安いギャラで戦わざるをえない、ただし認められると日本では不可能な1試合数億円という収入がたとえどこの国の選手でも可能)とは思いますが、是非決断して欲しい。かねてからつたえられる減量苦もあります。コンディション不良で敗れ身体にダメージを負うなんてことがあってはなりません。今、しかないでしょう!

しかし熟山選手と戦って注目された時や、ジェス・マーカ選手を破って驚かれた時、そして鳥海選手と戦った時には、センスのいい選手とは思ったけれど…正直ここまで凄みのあるボクサーになるとは思いませんでした。
これまで日本の世界チャンピオンは世界タイトル獲得前までは華麗なボクシングを見せていても対戦相手のレベルが上がってくるといつのまにか泥臭い殴り合いのボクシングになってしまう選手がほとんどでした。長谷川選手は逆です、化けたとでも言いましょうか。そういう意味でも希有な存在です。感銘を受けました。

そしてあと2試合の世界戦について…
粟生選手は完敗でしたがあえて前評判の高い強豪選手を自ら選んで奮戦し、技術の差を体感したことは今後に繋がると思います。筋金が入るようなキャリアを積んでいると思います。

そして高山選手。TV放映がダイジェストもダイジェストであまりに短時間。展開はよくわからなかったのですが、プロフェッショナルらしく、自分の目指すヒット&アウェイを果敢に試み。ダメージが蓄積してからは文字通り捨て身で打ち合い、元世界チャンピオンの矜持を見せていたと思います。怪物と呼ばれる強打者に挑み12R判定負け。凄みのある空気が本当に僅かしか放映されなかった試合映像からも伝わってきました。

なんともボクシングなTV観戦でした。