バイユー ゲイト 不定期日刊『南風』

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内藤選手、防衛おめでとう!と同時にボクシングの非情さを思う。

2008-12-24 | ボクシング

昨夜のWBC世界フライ級タイトルマッチ、バイユーが応援する内藤大助チャンピオンが挑戦者・山口真吾選手をTKOに下し、見事4度目の防衛に成功しました。
いつもながら出入りやポジショニング(位置取り)に長けた内藤選手のボクシングは、気迫いっぱいの挑戦者との激しい打撃戦の中でも(打撃戦ゆえに?)強みを発揮し、序盤から有効打で上回り内容的には圧勝の部類にはいるのではないでしょうか。とはいえ3度目の世界挑戦となる山口選手のまさに人生をかけたアタックに勝敗が決するまで気の抜けない試合でもあったと思います。
彼のアタックはやみくもなものでなく、しっかりと研究を重ねその上で気迫を全面に出して打ち合った意図の感じられる素晴しいものでした。しかし挑戦者の望んだ打撃戦で、要所要所で上回っていくことによりなおさらチャンピオンの充実ぶりやコンディションの良さが際立っていたのも事実です。内藤選手のスタミナには驚かされたし(昔はそんなタイプという印象はなかった)一見泥臭く見える技術に隠された洗練度にも驚かされました。11Rにダウンを奪った右の前に頑強な山口選手の膝を揺らした左カウンターは位置取り、角度といい流石!というもの。そして無呼吸で打ち続けるようなツメ。とても良い内容の防衛戦でした。激戦を思わせる場面もありましたが、相手の充実度ゆえの苦戦は決してマイナス材料ではないと思います。

それにしても山口選手。凄い気迫でした。ギリギリの根性をみせました。根性なんてありきたりの言葉を使いたくはないけれど、あれは根性だった。顔がねじ曲がるようなパンチを何発受けても引き下がらない姿に「大丈夫か??」と怖ささえ感じました。KOラウンド以前に倒れても不思議ではない場面が何度かありました。妻子の見守る中で最後と思われるチャレンジ。目の前には同じく3度目の挑戦で世界を獲って人生をひっくり返した内藤大助選手。妻子が見守るところも同じだ。彼の尋常ではない命がけのような気合いも理解できなくもない。それでも「まだ下がらないか!?」と気圧されてしまうほどの戦いでした。しかし、各場面で細かく上回っていくチャンピオン。

山口選手のこれまで2度の世界戦や東洋タイトル戦の印象から「内藤選手とは噛み合うものの勝機は薄い」と思っていました。頻繁に使われる噛み合うという表現ながら今回は内藤側からみて都合良く噛み合うと感じていました。実際そのように見えたのだけれど、そのような状況下で挑戦者として最善を尽くしていた。誰もが彼の本気を感じたはずだ。

そうであっても、勝たなければ得るものは少ない。特に今回の試合は。あまり触れたくはないが、最近世界フライ級で日本人同士の対戦が頻発している為に " WBC日本フライ級戦 " などという中傷さえうけた今回の一戦。勝つことでしか、そしてその次に進むことでしか多くを得ることができないものだったと思います。
僕自身も正直に言って同国ボクサー同士での世界戦の頻発は良いことではないと思っています。世界王座の価値、そしてそれに挑むということの価値を損なうと思うからです。同国人同士の決戦。それは国内タイトル戦で行われるべきだと思うし、世界の舞台で行われる場合は必然性が必要だと思っています。

ただ、今回の件に関しては、理解を示したいとも思います。この一連のWBA、WBCフライ級の混乱?はカメダ選手という特別なタレントによってボクシング関係者の思惑のみではどうにもならないほどの規模で振り回されていることが明らかだからです。単純に考えても、類い稀なるタレントが存在する階級のチャンピオン陣営が世間の注目を集める試合を挙行しようとするのは当然で、そこにボクシングの枠を大きく逸脱したカメダ陣営とその他の魑魅魍魎が絡み合い日程や対戦カード、全てが迷走を余儀なくされています。

私事ながら、僕は内藤陣営でマッチメイク(試合を組むこと)に関わっている友人の人となりを自らの感覚でそれなりに理解しているつもりです。
彼をもってしてもこの現状である、と感じています。所属ジムの意向にT●●など魑魅魍魎たちのたくらみ。まっとうな展開と興行の論理の兼ね合い。明らかにマスコミ的ビッグマッチになる、カメダ戦の可能性があるのにさらっと海外の強豪とどんどん試合を組んでいけるわけがありません。12月23日・祝日はもろもろの理由で用意された日時だったはずです。タイムリミットを過ぎて用意できるのは、準備期間を鑑みて国内選手しかいなかったのでしょう。

僕は最近のフライ級ウォーズ(と呼ばれているらしい)の動きに遺憾の意を表わしながらも、友人 I さんの真摯さと苦労が報われる日が「また」来るのを待っているのです。

そんな中で両選手は素晴しい試合をし、余計な声を黙らせたと思います。
と同時に思ってしまう。山口選手の魂の挑戦が海外の歴史的名ボクサーに対するものであったなら、たとえ敗れたとしても永く語り継がれることだったろうに…(金沢和良選手や村田英二郎選手の挑戦はいまだに繰り返し映像が流され語り継がれている!)。そして、なにより!日本ボクサー同士の激闘や熱戦は日々後楽園ホールで行われている試合でも多々見られます。昨日の試合と遜色のない国内の名勝負が毎年生み出されています。昨夜、感動した方々には是非深夜放送の日本タイトルマッチにも目を向けて欲しいと切に思うのです。

山口選手の集大成とも言える全力のボクシング、まさに世界タイトルマッチに相応しいものでした。得るものは少なかったとは思うけど、全力でやりきる姿はなんともボクシングでした。
内藤選手、おめでとうございます。応援しているので見事な勝利、本当に嬉しかったです。
あ、これは I さんにだな。しかし今回はいい試合でした。

…(それだけではないと思うけれど)勝つことは大きいです。そしてそんなやりきれないような部分がボクシングなんですよねー。

だからなんだ?といえばそれまでですが。

ボクシング話が面倒くさい方、いつもすいません。