深夜フジテレビでボクサー川崎タツキのドキュメンタリーを途中から観た。以前放送されたものの「その後」。前回観たところをところを放送中だったので途中からでもなんの問題も無い。しかし2度とも偶然観る、というのが凄いなと思う。
彼、そして番組について簡単に説明すると、元暴力団の構成員で薬物依存症だった男がボクサーとして闘う姿を
更正に力を貸した周囲の人間とともに追ったシリーズ?ドキュメンタリー。反響は大きくボクサー川崎タツキは本も出版されるなど一部で話題になっているようだ。
とにかくなんでこんな人間にそんな過去が…というほどの本人のキャラとのギャップ、そしてダーティな雰囲気とはほど遠い彼の周囲の環境。そのあたりが観る者の心を引きつけているのだろうと思う。
今回もこの番組からはボクシングが、そしてホールの空気が匂いとともに伝わってきて非常に濃厚だ。
同僚、そして先輩でもある日本ボクシング界、いや後楽園ホールに一時代を築いたスターだったコウジ有沢(元2階級での日本王者)の引退試合へむけてのジムワーク、そして当日のホールが淡々と映し出される。とうとう一度も王座に届かなかった双子の兄カズ有沢や父でもある有沢会長のこれまた淡々としたインタヴューがかえって濃厚な空気を生み出す。
当日のホール。もの凄い絞り込んだ気配をまとってリングに登場するコウジ選手。
客席で感じる、あの身体がキューっと縮み血管が膨張して血が逆流するかのような感情の緊張と興奮が匂いとともに画面から伝わってくる。
ああ、そうなんだよなぁ。ホールってこうなんだよなぁ。メインエヴェントってこうだったよな。暫く足を運べていない自分はしみじみと思い出しましたよ。そして静かに残った観客を前にしての引退のテンカウントゴング。
巷ではテレビで驚異的な視聴率を稼ぐ番組によってボクシングが大きなダメージを受け、かつてのボクシングが死んでしまったかのような印象を持つ人さえいるようですが…。まだまだ本当のボクシングは死んだりしていないようです。あのボクサーを取り囲む特別な凝縮された感情や空気がある限り、他の何とも違う姿を失う事はないのです。
何人もの人間が命を落としたあのリング上というのはそんなに軽い場所ではないと思います。
別に他の惑星の出来事はどうだっていいのですが、
僕にとってのまさにアイドルだったグレート金山選手が、そして大雅アキラ選手が命を落とした場所に橋を架けたり、そこでカラオケをしたりというのは正直正視しがたいものがあります。どんなにボクサーとして努力精進していても、もし地位を得たとしてもやってはいけないことがあるのではないでしょうか?
特に大雅選手はキョーエイの選手だったではないですか!心のないヤツラが汚すからボクシングが危うくなるのです。
あー、なんとなく「言ってしまった」。というかんじです。お恥ずかしい。
番組のメインは『クレイジーキムvs川崎タツキ』のタイトルマッチ(内容についてはこのブログの『クレイジーキムvs川崎タツキ』(ボクシング)をご参照下さい)。
前日計量時に「なんで俺様があんなシャブ中あがりとやんなきゃいけないんスか?」「そんな取材やテレビきて騒いでこの偽善者どもが。俺がシャブ中をボコボコにするところ見たいんでしょ?やってやりますよ。あのシャブ中殺してやりますよ、はい満足ッスか?はいコレで終わり、終わりです」。眠そうな目で吐き捨てる「偽悪者」タイガー・クレイジー・キム。
在日を表明する改名、本名につけられたクレイジーの冠。これじゃぁ地上波はキツイだろ?と思ったら案の定最近は関西のCS局専属状態。東京のボクサーなのに。
一見話題のボクサー達と同じ暴言、ビッグマウスとみえるがこれが全然違うのだ。おそらく字面ではわからない人もいるだろう。でもボクシングファンには伝わっている。自分の周囲を含め、クレイジー・キム選手はボクシングファンには好かれているのです(愛されは、大げさかな・笑)。説明なんかなくてもわかるヤツにはわかるってことか。
そして川崎選手もホールのファンには好かれています。
ああ、ひさしぶりに変わらぬホール周辺の光景を見て、なんかすこし安心したかな。