タイポグラファー

2014-05-23 | 日記

 

エミール・ルーダー ( 1914-1970 ) はスイス・バーゼルの教育者にしてグラフィック・アーティストである。僕が特に惹かれるのは彼のブック・デザインである。オリジナルのタイポグラフィーと相俟って、清潔感あるシンプルな本の造形は祈りの空間を思わせる美しさがある。2009年3月発行の 『 アイデア 333 』 は彼の特集だった。掲載の写真は、その特集号の裏表紙に僕が拾ってきた穴の開いた石を配置して、撮ったものである。穴から覗いているポートレートは、ルーダーその人である。特集のタイトルは、

        Ruder typography

        Ruder philosophy

というもので、ルーダーのタイポ・デザインはじめポスターなんかにしてもそれらは全て、彼の “ フィロソフィー ” なんだろう、と思うのである。この編集タイトルそのものがその人を表しているようで、素敵なタイトルである。なので、ちょっと大きく太字にしてみた。ルーダーは学生に次のように教える。すなわち、

われわれの将来の職業は金儲けのためだけのものではない。日常、文化に貢献しているという責任感を持て。そのためには才能だけではなく、人格も必要である。われわれは過去と、前提も状況も異なる時代に生きているが、それでもなお、さらなる高みへと発展する責務を負っている。

と。またルーダーはそのことを授業で示すために、 “ 黒い箱 ” を持ってきた、という。その中には前の時代、1920年代の “ 至宝 ” が入っていたのだった。すなわちドゥースブルフ、リシツキー、シュビッタースの作品だった、というのである。そういうことがこの本に紹介されている。今年はルーダーの生誕100年である。