愛知学院大学青木ゼミのブログ

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今進行していること

2024年03月16日 | Weblog
最近,2024年アメリカ大統領選の共和党候補にドナルド・トランプ氏が決定しました。国際ニュースのトップとして扱われました。熱狂的な支持者がアメリカに存在することが浮き彫りになっています。

アメリカでも,日本でも,一期目のアメリカ大統領としてのトランプさんに良い印象を持たない人が多いようです。しかし,大きな政治的支持を得ている。しかも,白人労働者が所属する労働組合は元々民主党支持だったずなのに,多くの白人労働者は共和党のトランプさんを篤く支持している。何故なのか?

最近この疑問に答えてくれる本を読みました。マイケル・リンド『新しい階級闘争―大都市エリートから民主主義を守るー』東洋経済新報社,2022年です。 かつて政治闘争といえば,左右対決でした。右:保守:資本家VS左:リベラル:労働者という言い方ができるかもしれません。しかし,この本によれば,今は上下対決なのだといいます。上:リベラル:都市のエリートVS下:保守:地元労働者という対決の図式。

ペーパーバック版への序文につぎの文章が記述されています。
「一方に大都市で働く高学歴の管理者 経営者)や専門技術者からなる上流階級が存在し,もう一方には,昔からその国で働いてきた人びとと新しくやってきた移民とに分裂した大多数の労働者階級が存在し,両者のあいだで階級の二極化が進んでいる,ということである。かつて労働者階級の市民の利益を守り代弁していた旧来の機関(労働組合,宗教団体,地域政党など)は弱体化するか壊滅したため,政治・経済・文化という三つの領域 において,管理者(経営者)エリートと彼らが支配する非民主的機関(官僚,司法,企業,メディア,大学,非営利組織など)への権力の集中が進んだ。左派対右派という旧来の政治に取って代わり,新たに誕生したのがインサイダー対アウトサイダーの政治である。」

インサイダーというのは権力者という意味であり,アウトサイダーは非権力者です。インテリの権力者たちは,自分たちの利益のため新自由主義を信奉し,リベラル政策を推し進めます。それでは自分たちの利益が守られない地元労働者たちは,下品な扇動政治家の下に結集して対抗する図式が生まれたといいます。

移民に門戸を開く,人材の多様化を推し進めるなどのリベラル政策を推し進める民主党は,インテリたちの政党であり,労働者の意見を代表しなくなっています。かつてリベラル政策は非権力側が唱えることが多かったのですが事情は変わりました。

アメリカの労働者たちが,トランプさんが唱える移民の取り締まりに賛成するのは,移民が労働市場に参入してくるので,既存の労働者の仕事を奪う可能性が高いからです。インテリたちが移民受け入れを進めるのは,自分たちの仕事が奪われる可能性が低く,しかも安い労働力を自分たちが使う可能性が高まるからでしょう。

アメリカ労働者のトランプ支持は,偏狭なナショナリズムや差別主義というよりは,階級闘争と理解したほうがよいというのが本書の含意です。アメリカだけではなくヨーロッパ各国で似たような動きが見られるようです。

ゼミ生たち(あるいは大半の日本の大学生)にとって,自分たちの生活に直接かかわりのないアメリカ大統領選というのは,全く興味の持てない対岸の出来事かもしれません。しかし,実際には日本の政治や経済に大きな影響をもたらします。政治経済の変化によって,自分たちの今後の生活に影響があるかもしれません。是非ウォッチして欲しいイベントです。興味があれば是非『新しい階級闘争』を読んでみてください。

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