アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

新たな表情を見せた新日本フィル

2019-11-10 20:00:00 | 音楽/芸術

すっかり秋めいた東京地方。朝晩は気温も下がり個人的には快い季節になった。何をするにも集中力が上がり効率よく時間が過ぎていく気になっている。

先月の台風でキャンセルになり、少し間の開いてしまった新日本フィルの定演トパーズへ行ってきた。今回は、若手の指揮者ズナイダー氏とソリストを迎えた北欧、ロシアのプログラムを鑑賞する。日本デビューの演奏会となるようで、メインは、チャイコフスキーのバレエ音楽「眠れぬ森の美女」だが、前半にはグリーグの小品とニールセンのヴァイオリン協奏曲がおかれ、そのソリストは19歳の新進気鋭のヨハン・ダールネという若手演奏家だった。アントンKとしては、昔から愛着のあるチャイコフスキーのバレエ音楽がどうしても聴きどころとなったが、この若手ソリストを迎えてのニールセンも心に刺さる内容だったと振り返っているところだ。

メリハリのある角の立った音。息を飲む演奏テクニックとそれを裏付ける鋭いリズム。どこをとってもソツが無く、いかにも優等生的演奏だったと言えるのではないか。楽曲をよく熟知していなくとも、聴き手を飲み込んでしまう凄さを演奏から感じた。反面、この手の技巧的部分が目立った演奏は、抒情的な心に響く音の色合いが気薄に聴こえてしまった。旋律の裏に隠された想いは感じられず、その点は大いに醍醐味に欠けてしまったと思っている。アントンKは、気持ちが出るのなら、少しのミスも恐れず演奏に気持ちを傾けて欲しいといつも願っているが、今回の若きソリストにはまだ重荷になってしまうのだろうか。舞台に立つ以上、演奏家は役者であって欲しいのだ。

後半のチャイコフスキー。三大バレエ音楽の中では、一番演奏機会に恵まれない「眠りの森の美女」ではなかろうか。アントンKとしては、実演奏に触れられる機会を頂き有難かった。いつもの新日本フィルからは忘れかけていたような、重低音の轟く演奏が味わえたのだった。ここまでやるなら、金管楽器もえげつない音で迫った欲しいと思ったくらい。しかしそんな音量に負けないくらいの統一感で鳴っていたのは弦楽器群だった。これには指揮者がヴァイオリニスト出身であることと何ら関係があるはずだ。チャイコフスキーの甘美なメロディを歌い上げ、主張の強い旋律は、この日一番の聴きどころではなかったか。世界で活躍している若手のホープ、ズナイダー氏の今後にも注目していきたい。

新日本フィルハーモニー交響楽団定期演奏会トパーズ

グリーグ  序曲「秋に」 OP11

ニールセン ヴァイオリン協奏曲  OP33

チャイコフスキー バレエ音楽「眠れぬ森の美女」より抜粋

アンコール ソロ

パガニーニ 

指揮    ニコライ・シェプス=ズナイダー

Vn         ヨハン・ダールネ

コンマス  崔 文洙 

2019年11月8日 すみだトリフォニーホール