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『青春の殺人者』は原作が中上健次の『蛇淫』である。長回しの演劇的な作風であるが(ややセリフ劇に陥いっている)、キネマ旬報の76年のベストワンに輝いている。
この作品は女優原田美枝子のデビュー作であり、若々しい(当時16歳くらいではなかったか?)鮮烈なヌードが印象に残る作品だが、中上作品としては消化不良の印象もぬぐえない(原田の相手役で主演は水谷豊)。親殺しの「神話性」が、どこか捨象されてしまっている。母親役のベテラン市原悦子の名演技が支えた映画である。
(作品評価:★★1/2)
もう1本の『太陽を盗んだ男』は、ジュリーこと沢田研二の主演で、菅原文太とがっぷり四つに組んだ作品だ。だが、プルトニウム精製の過程がそれなりにリアルで、そのあたりはなかなか面白かった。とはいえ、アパートの一室でプルトニムが抽出できるか、というにわかに信じがたい話ではある。人気女性ディスクジョッキー役で池上季実子がからむ。しかし、池上の声はかん高くてすこしうるさい。
原子爆弾を製造して、それをネタに流れたローリング・ストーズ武道館公演を要求するくだりなど、なかなか面白い。沢田扮する中学の理科教師は、理科オタクであるが、原爆を作ることを思いついてから、周到な計画を錬る(と言っても、原発内への侵入はあまりにも容易すぎる)。とはいえ、その原爆で何を要求するかと言うモチベーションがはじめから欠落している。原爆は沢田のもとに奪還され、新宿の繁華街で沢田がぶらさげたボールバッグの中で、時限装置がタイムアウトして地上で太陽に変わってしまうのである。
なんとも恐い内容であるにも関わらず、見終わったあとに何も残らないエンターティメントだった。
(作品評価:★★)
(つづく)