マジョルカピンク

水曜どうでしょう。大泉洋。大谷翔平。大好き

ライト・グッドバイ

2012-03-07 20:33:09 | 
東直己さんのススキノ探偵シリーズの第8弾。
すでに退職した元刑事種谷から「女子高生行方不明事件の容疑者と親しくなって自宅に乗り込め」との依頼を受け、最も嫌いなタイプの男と友人のフリをするというこの話。
ススキノ探偵シリーズじたいいわゆるよくあるハードボイルドの小説とはタイプがかなり違うのですが、この小説はその中でもかなり異色。
なんといってもこの作品、北海道の人なら誰でも少し読み進めればあーあの事件か、と思う浮かべるであろう室蘭で美人女子高生が行方不明になった事件をモデルにしているのだ。本当の事件のほうは今も手がかりが掴めず迷宮入りっぽいのですが。アルバイトに行く途中で足取りが掴めなくなったり、バイト先の店長が疑われたり、というところがよく似ていてなかなかの問題作にチャレンジしていると思う。
で、本作では大胆にも店長が犯人であり自宅に軟禁あるいはすでに遺体となっているのを隠しているという設定にして、なんとか証拠を掴もうというわけ。
実際にあった事件、しかも未解決の事件を大胆に推理して小説にしてしまうあたり作者の信念というか覚悟のようなものが感じられるんですが、これ実際このような仮説というのがあったんでしょうかね?謎ですな。
で、小説としましてはなんとももどかしいというか。この探偵が近付いていく檜垣という男が本当になんつーか。マザコンで下品で見栄っ張りで嘘つきで軽薄で変態で。実に薄っぺらくも薄気味悪い男で何の魅力も感じない男なのね。なので探偵との会話にはイライラさせられっぱなし。探偵自身が感じる「なんでこんなくだらない男と仲良くしなきゃならないんだ!」という苛立ちを追体験できるというわけ。東さんは筆力があるので読み進めるほどに檜垣という嫌な男の姿が如実に立ち上ってくるわけで、興味深い読書体験ではあったけど爽快感はないわなあ。
グロテスクかつ不快な事件なので後味も悪く、事件として進展することがあるわけでもなくただただ探偵と檜垣の不愉快な邂逅が描かれているというかなり読む側に忍耐を課せられる話でした。これも全く映像化には不向きな作品だと思います。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。