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目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

標高8000メートルを生き抜く登山の哲学

2013-06-18 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

001 『標高8000メートルを生き抜く 登山の哲学』竹内洋岳(NHK出版新書)

8000メートル峰14座を完登した竹内さん。全国主要新聞、NHKの特番、講演、雑誌、ラジオといろいろなメディアに出まくっていたけれど、自らの名を冠した著書がNHK出版新書として刊行された。内容は、メディアにすでに露出したものばかりだが、そのエッセンスを抜き出した感があり、保存版としての価値がある。

冒頭は、衝撃的なガッシャーⅡの雪崩体験談。日本人の10座目のジンクスといわれたあの大怪我をした事故だ。立正大学での講演で、臨場感あふれるこの体験談を聞いていたので、新鮮味はない。とはいえ、この話は何度聞いても恐ろしい。私はその様子を自分の頭の中で映像化してしまったから余計なのかもしれない。たまたま左手が雪の上に出て、足も出ていたから助かったものの、すっぽり全身が埋まっていたら、まず見つけてもらうのは無理だったろう。

悲惨な雪崩の事故で思い出すのは、立松和平『日高』だ。読むと眠れなくなるくらいそら恐ろしい小説。日高山系で、冬山登山をしていた大学の山岳会が雪洞を掘って宿泊していたのだが、そこに大規模雪崩が起きて、全員が死亡という悲惨な事故の話だ。ただ一人だけ、1週間くらい事故発生から生きていたことが後にわかり、その事実をモチーフに小説に仕立てたものだ。『ジョニーは戦場へ行った』というこれまた悲惨なストーリーの映画があるが、これとも通底するものがある。

脱線してしまった。竹内さんは、この遭難時に無性に腹が立った、怒りがふつふつと沸いたようなことを書いている。講演のときもまったく同じ表現を使っていた。こんなことで、登山人生がここで断ち切られるのかという理不尽さへの怒りだ。この冷静さ、状況を客観視できるそのキャパシティには脱帽する。こういうところが登山家として、一流である証なのだろう。

第6章では、雪崩回避法につながるテーマで論じている。「危険を回避する想像力」。この能力が低いと、先鋭的な登山家、トップをいく登山家にはなれないだろう。へえ、と感心させられたフレーズがあったので、以下抜粋する。

たとえば、急峻な氷壁を越えなければならないような場面。「どうやったら安全に効率よく登れるか?」という選択肢を100通り想像できていたとします。ところが、一歩踏み出した瞬間に選択肢は半分くらいに減り、3歩、4歩と進むうちに、選択肢はどんどん消去されていきます。消去されたら、そこで再び想像し、選択肢を増やしていく。そうやって前に進んでいくことが、山頂に向かって自分を押し上げるという行為なのです。

とにかく想像を膨らませることで、登山が楽しくなると竹内氏は言っています。自分で考えたこと、想像したことが現実となる。それに対する充足感や達成感。これが高所登山の醍醐味なのかもしれない。超人だからこその言葉のような気がしますが、皆さんはどう考える?

参考:
階段でいえば、踊り場にいる~竹内洋岳講演会http://blog.goo.ne.jp/aim1122/d/20121111
ついに8000メートル峰、14座制覇! 竹内洋岳http://blog.goo.ne.jp/aim1122/d/20120527
竹内洋岳の友人が挑む「K2」の頂~ナショジオ2012年4月号http://blog.goo.ne.jp/aim1122/d/20120421

標高8000メートルを生き抜く 登山の哲学 (NHK出版新書 407)
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NHK出版

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