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小松基地問題研究会

名越二荒之助の「尹奉吉論」について

2011年03月06日 | 尹奉吉義士
名越二荒之助の「尹奉吉論」について

 『日韓共鳴二千年史』(名越二荒之助編著)に、尹奉吉について書かれているいくつかの点で事実に誤りがあるので指摘します。


(1)「国事犯だから暗葬」のウソ
 名越さんは「重大な国事犯だから、遺骨を遺族に渡すことも出来ず、陸軍墓地内に埋めるわけにもゆかず、墓地から下がった目立たない場所に葬った」と書いていますが、江戸時代から明治初期までは、国事犯(政治犯)は小塚原刑場に埋葬され、小動物に侵されるままにされていましたが(吉田松陰や橋本左内など20万人以上)、明治初期に西欧と対等な人権基準を設けるために、小塚原刑場は廃止されました。

 2・26事件で処刑された17名の遺体は郷里に引き取られており、「国事犯だから、遺骨を遺族に渡すことも出来ず」という主張は全くのウソです。

 名越さんは尹奉吉を「国事犯(政治犯)」としておどろおどろしく描くことによって、尹奉吉を暗葬にし、遺体を家族に引き渡さなかったことを合理化しました。

(2)「名誉ある銃殺刑」「武士の情け」
 名越さんは小説『処刑のあとさき』(大戸宏著)から引用して、判決から処刑までの状況を描いています。例えば、裁判官が「名誉ある銃殺刑が至当」と判決したとか、尹奉吉が「正面からの正規銃殺に感謝した」とか、事実確認が出来ないことを歴史的事実であるかのように書いています。

 処刑方法については、陸軍刑法21条に「陸軍ニ於テ死刑ヲ執行スルトキハ陸軍法衙ヲ管轄スル長官ノ定ムル場所ニ於テ銃殺ス」と規定され、その方法は、処刑者の眼を布で縛るか、顔全体を覆う麻袋を頭から被せ、将校または下士官の指揮する1部隊の一斉射撃で銃殺されました。

 「名誉」だとか、「武士の情け」などと情緒的に銃殺刑を選択したのではなく、陸軍刑法に則って尹奉吉を銃殺したのです。名越さんは朝鮮人(尹奉吉)のたたかいに打撃を受けているようで、「武士の情け」とか「名誉ある銃殺刑」などと言って自らを尊大に見せかけ、処刑を正当化するのに必死なようです。 

(3)「突如中国軍からの攻撃」のウソ
 名越さんは満州事変を「王道楽土建設」のためと述べていますが、中国人民の立場から見れば、侵略以外の何ものでもなく、中国全土で日貨排撃、不買運動が広がりました。他方上海では「帝国政府は日支諸懸案の徹底解決及不法且暴戻なる対日経済断交を根絶するため速やかに断呼として強硬且有効なる手段を講ぜられたし」「東洋平和を確保し日支両国の福祉増進のため日本政府は段々呼として暴戻なる支那を膺懲すべし」などと、上海居留民の対中国強硬意見が噴出していました。

 翌年1932年1月18日、関東軍と上海領事館の武官が中国人に日蓮宗僧侶を襲撃させ、この事件を受けて日本人青年が拳銃、日本刀などを持って中国人を襲撃するなど、相互に死傷者が出ました。

 日本軍は1月28日には、上海周辺海域に艦艇22隻、陸戦隊1833人の出撃準備を整え、夕方から陸戦隊揚陸演習を計画しており、一旦は中止しましたが、午後9時30分に、塩澤司令官は陸戦隊の揚陸を命じ、中国第19路軍との戦闘が始まったのです。

 名越さんが主張する「突如中国軍からの攻撃」論はまったく成立しません。むしろ、謀略を使って上海居留民を中国人と対立させ、この機に乗じて上海周辺に日本軍艦艇を多数集結し、演習と称して陸戦隊を上陸させたことが戦闘開始の合図となったのです。(『日本海軍史』など)

(4)複眼で見れば「侵略ではない」のか
 名越さんは「(暗葬の跡保存会会長は)侵略を一方的に反省しているが、歴史は複眼をもってダイナミックに見なければ」「欧米列強の東亜侵略に対して、韓国は果たして自衛能力を持っていたのか」と述べていますが、日本の朝鮮侵略・植民地支配を正当化するための決まり文句です。

 名越さんは「日本が朝鮮を保護」したかのように述べていますが、実は朝鮮を中国侵略の兵站基地とし、朝鮮人民から財貨を奪い、挙げ句の果てに朝鮮人を強制連行・強制労働・軍隊慰安婦に動員したことを忘れてはなりません。

 尹奉吉の「暗葬」と向き合い、日本の植民地支配と侵略を反省し、謝罪することに対して、名越さんは「韓国への迎合」などという差別的な言い回しで自らの行為を居直っているのです。

 名越さんはかつての侵略戦争を美化・賛美する「大東亜聖戦大碑」(石川護国神社)の建立者に名を連ね、亡くなった今も、醜悪な姿を満天下にさらしているのです。
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