アジアと小松

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小松基地問題研究会

こんなにも自衛隊員の命が軽く扱われていいのだろうか

2012年09月30日 | 軍事問題(小松基地など)
 2010年9月2日、金沢駐屯地(第14普通科連隊)の武装走記録会(三小牛山)で、44歳の3等陸曹が死亡した。死体検案書には「熱中症の疑い」と記されている。

 三小牛山演習場での武装走記録会は1周2.5キロ、高低差が25メートルのコースを2周する。服装は速乾Tシャツ、戦闘服下衣、戦闘靴、88式鉄帽、戦闘弾帯、戦闘吊りバンド、水筒(満水)、弾のう(小)×2、89式小銃×1、同銃剣×1、同弾倉×2で、総重量は約10キログラムであった。

 この日の気候は午前8時の気温が29.5℃、WBGT指数(注)は27.9、午前10時30分の気温が34.6℃、WBGT指数は29.8だった。「WBGT指数に応じた錬成要領」によれば、25~28は「警戒」で、武装走(記録会等負荷大な錬成)は走行距離、服装、装具、携行品等の負荷度合い、水分摂取量、給水要領及び休息等を考慮し実施可能とされ、28以上は「厳重警戒」で、武装走(記録会等負荷大な錬成)は原則実施不可、特別の場合、連隊長の承認を得て実施するとされている。

 当日午前8時のWBGT指数は27.9で、その後気温は急上昇し、10時30分にはWBGT指数は29.8になっていた。3等陸曹が武装走に出発する直前の8時40分の気温は30.8℃(気象庁)になっており、WBGT指数は28を超えていたと推測される。

 事故報告書には「事故の原因」を<気象に応じた訓練実施要領の修正等不十分 ア「WBGT指数に基づく警報伝達・掌握不十分」、イ「WBGT指数厳重警戒が予測される気象状況において、服装の修正はしたものの、記録会を継続」>を挙げている。

 この武装走出発時にWBGT指数を調べて、武装走の記録会を中止すれば、3等陸曹の命を守ることができた。

 また、陸自教範「救急法及び野外衛生」によれば、WBGT指数27.8以上は1時間に1リッター以上の給水を行い、30分活動して、日陰で30分休息することになっている。

 しかし、3等陸曹は午前7時に武器を搬出し、7時30分に隊舎前に集合し、7時45分に三小牛山演習場に到着し、8時45分に出走し、9時には1周目を走り終わり、2周目の5分の4を過ぎ、あと500メートルでゴールに到着する直前で3等陸曹が倒れた。発見されたとき、3等陸曹の水筒は満水のままであり、一滴の水も飲んでいなかったと思われる。

 こんなにも自衛隊員の命が軽く扱われていいのだろうか。3等陸曹の死は自衛隊のミスによってもたらされた。しかし新聞には、自衛隊の責任についてはひと言も触れられていないし、事故報告書にも自衛隊としての責任(謝罪)を明確に示してはいない。

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(注)WBGT(湿球黒球温度)
人体の熱収支に影響の大きい湿度、輻射熱、気温の3つを取り入れた指標で、乾球温度、湿球温度、黒球温度の値を使って計算します。
※WBGT(湿球黒球温度)の算出方法
 屋外:WBGT = 0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
 屋内:WBGT = 0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
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