OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

疑似ステ・トゥデイ

2010-04-09 16:40:44 | Beach Boys

The Beach Boys Today! (Capitol)

昭和47(1972)年、「カール&パッションズ」でおまけ扱いだった「ペット・サウンズ」に出会ったことにより、私は本格的にビーチポーイズの後追いを始めたわけですが、中でも春になると特に聴きたくなるのが本日ご紹介の1枚です。

 A-1 Do You Wanna Dance
 A-2 Good To My Baby
 A-3 Don't Hurt My Little Sister
 A-4 When I Grow Up
 A-5 Help Me Londa
(album version)
 A-6 Dance, Dance, Dance
 B-1 Please Let Me Wonder
 B-2 I'm So Young
 B-3 Kiss Me Baby
 B-4 She Knows Me Too Well
 B-5 In The Back Of My Mind
 B-6 Bull Sessions With “Big Dassy”

本国アメリカで発売されたのは1965年3月でしたから、明らかに春向きの作品かもしれませんね。実際、全篇の作風と曲調はハートウォームな魅力に溢れています。

まず冒頭「Do You Wanna Dance」は、邦題「踊ろよベイビー」としてボビー・フリーマンが1958年に自作自演で大ヒットさせたオールディズのカパー曲なんですが、ビーチボーイズは尊敬するフィル・スペクター十八番のアレンジとサウンドプロデュースをそっくり流用したかのようなリメイクが秀逸! 後にフィル・スペクターの作り出した諸作を聴くほどに、ビーチボーイズの悪辣とも言える凄みが痛感されるばかりです。

まあ、それはブライアン・ウィルソンのフィル・スペクターへの憧れ、そして尊敬の念の表れでしょうねぇ。

ですから他の自作曲は、一様に「らしい」節回しが全開!

「Don't Hurt My Little Sister」は実際にフィル・スペクターへ提供しながらボツにされた裏話があるそうですし、「Good To My Baby」にしても微妙に不安感を滲ませるメロディ展開とギターリフ、さらに素晴らしいコーラスワークが冴えまくり♪♪~♪ しかも極めて自然にメロディが出てきたんじゃないか!? と思わざるをえないほどブライアン・ウィルソンだけの「節」が堪能出来ますよ。

そして最初に聴いた瞬間から若き日のサイケおやじを天国へ導いたのが「When I Grow Up」です。もう、このスピード感溢れる演奏とコーラスの素晴らしさ♪♪~♪ 独得のメロディ展開とハープシコードまで使ったアレンジの妙♪♪~♪ 複雑にして快楽性に満ちたサウンドプロデュースは奇蹟といって過言ではないと思います。

それは痛快至極なビーチボーイズ流儀のR&R完成形となった「Dance, Dance, Dance」のシンプルなノリと相反するかのように転調を重ねていく曲の進行、さらにギターリフとロックビートの完全融合! あまりにも出来過ぎています。

しかしこのアルバムのもうひとつの凄さが、ミディアム~スローな歌を並べたB面の深淵な企みでしょう。

特に「Please Let Me Wonder」はブライアン・ウィルソンの最高傑作のひとつとまで巷間認められている珠玉の名作で、そのハーモニーセンスとメロディの雰囲気は際立つものがあります。う~ん、本当に何時聴いても、せつなくなってしまいますねぇ~~♪

そして続く「I'm So Young」はビーチボーイズのオリジナルではない、所謂ドゥワップのオールディズなんですが、おそらくはこれまたフィル・スペクター関連のロネッツバージョンを意識しているものと思われます。しかしブライアン・ウィルソンが歌うハイトーンのリード、そしてマイク・ラブの低い声を活かしたコーラスワークのコラポレーションは最高に素敵で、これも実にせつないですよ。エコーを存分に効かせたギターも良い感じ♪♪~♪

ですから同じような展開を聞かせる「Kiss Me Baby」、不思議なムードが横溢する「She Knows Me Too Well」といったオリジナルの歌と演奏が気品さえ漂わせる仕上がりになっているのも納得する他はなく、このあたりは後の「ペット・サウンズ」の予行演習とさえ思えるほどです。

それはテニス・ウィルソンが素朴なりードを歌う「In The Back Of My Mind」のバックを彩るストリングスや各種楽器によるカラオケパートにも言えることで、もちろん有能なスタジオミュージシャンが大量動員されたアルバムセッションの成果でしょう。

しかしオーラスの「Bull Sessions With “Big Dassy”」はインタビューというか単なるトークというか、ビーチボーイズと仲間達のお喋りだけというのが、如何にもボーナストラック……。あんまり存在する意味が無いように思うんですが、アルバムのプロデュースがブリライアン・ウィルソンであれば、納得するしかないでしょうねぇ。

その意味で「Help Me Londa」は、後にシングルヒットした名曲なんですが、ここに収録されたのはそれ以前のアルバムバージョン!?! 件のシングルバージョンに比べると些かシンプルな仕上がりにブライアン・ウィルソン自身が満足出来なかったと言われているんですが、個人的にはバンドサウンドで演じられるこちらのバージョンも好きです。曲想の素晴らしさは、まさに全盛期ですよねぇ~♪

ちなみにこのアルバムのミックスはブライアン・ウィルソンが意図的にモノラルしか作っていませんでしたから、掲載した私有盤にある「duophonic」とは疑似ステレオのキャピトル的な言い回しで、もちろん欺瞞に満ちたエコーが効いています。

しかし負け惜しみではなく、これが案外と心地良いんですよ。

というよりも、私が最初に買ったのが、この疑似ステレオ盤でしたから、充実した内容共々に、その音の雰囲気までも丸ごと、私をシビレさせたのです。そして当然ながら、後に国内盤でモノラルミックスを聴いたんですが、かえって妙な心持になったのは本末転倒かもしれません。

今となってはリマスターCDでさらに素晴らしく楽しめると思いますが、どうにも捨て難いのでした。

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