■アニマル・トレーナー c/w Tired Angels / Mountain (Windfall / ソニー)
1970年代にはロックもLP=アルバムをメインに聴くのが当たり前になりましたが、しかし同時にシングルヒットも要求されていたのが、大衆音楽の掟でした。
それは例えプログレのバンドであろうとも、その本質を著しく変えない限り、新作アルバムを出すタイミングではシングルカットの曲をヒット狙いとプロモーションを兼ねて出していましたから、況やハードロックは尚更の事です。
そこで本日ご紹介のシングル盤は、1970年代初頭に急上昇の人気を得ていたマウンテンが、その絶頂期とも言うべき1971年に出した傑作アルバム「ナンタケット・スレイライド」からカットした2曲を両面に収めたものですが、やはりLPが容易く買えない若いファン向けというか、実にマウンテンというグループの特質とリアルタイムのバンドの勢いを凝縮した素晴らしい企画になっています。
まずA面に収められた「アニマル・トレーナー / The Animal Trainer And The Toad」は、その原題からも推察されるとおり、アニマル・トレーナー=調教師がプロデュースとベースを担当しているフェリックス・パパラルディであり、トード=ヒキガエルとは、一座のスタアであるレスリー・ウェストという巨漢ギタリストだと言われています。
ちなみに当時のマウンテンはフェリックス・パパラルディ(b,vo,key)、レスリー・ウェスト(vo,g)、スティーヴ・ナイト(key)、コーキー・レイング(ds) という4人組でしたが、音楽的な支柱はあくまでも前述の2人であって、コーキー・レイングはレスリー・ウェストのローディからの昇格であり、またスティーヴ・ナイトはフェリックス・パパラルディがプロデュース業をスタートさせた1960年代後半から重宝していた子飼であった事を思えば、この時期以降に表面化するバンド内の対立やゴタゴタも無理からんと思うばかり……。
で、「アニマル・トレーナー」はマウンテンならではのヘヴィなノリを活かした、なかなか味わい深いR&Rで、ちょいとサザンロックっぽい微妙な哀愁が滲むメロディ展開や泣きのギター、さらにどっしりグルーヴするドラムスやベースと対照的にローリグするピアノが良い感じ♪♪~♪
そして主にレスリー・ウェストが書いたとされる歌詞の内容は、何をやるのか分からなかった自分が、痩せっぽちの男に出会い、様々に導かれて最高のロックバンドを作ったという、まさにマウンテンの立身出世物語が歌われています。もちろん痩せっぽちの男がフェリックス・パパラルディを指している事は言わずもがなでしょう。
歌の最後で、調教師とヒキガエルだっ! と自嘲気味に歌ってしまうレスリー・ウェストが憎めませんねぇ~♪
そしてB面収録の「Tired Angels」は、原盤のサブタイトルに「To J.M.H.」とあるとおり、前年に早世したジミヘンに捧げられた畢生の名曲名演! とにかく初っ端からのリフの構成やパーカッション&ドラムスの使い方がモロにジミヘン調ですし、中盤からのジェントルな曲メロや歌いまわしの妙も侮れません。
そしてもちろん、ギターソロの展開は、こちらの期待を裏切りません!
あのレスリー・ウェスト特有の繊細な泣きと豪胆なフレーズの構成が、ここではジミヘンに近づかんと焦るあまりでしょうか、些か大仰なものになっているのは結果オーライだと、私は思います。
ただ、このあたりに不遜なものを感じるのは、十人十色でしょうか……。
しかし、こうした意気込みは、後に完全に聴けるようになった本編LP「ナンタケット・スレイライド」を成功へと導いた要因だったんですねぇ~♪
それついては何れ、じっくりと書きたいと思いますが、このシングル盤を買った当時のサイケおやじは、例えLPが買えなくとも、充分に満足していたのは、決して負け惜しみではありません。
マウンテンとは、つまりは1曲単位でも捨てるべき部分が無かったという、稀有のバンドだったのです。もちろん長尺のアドリブ合戦をウリにしていたライプ演奏の醍醐味は素晴らしすぎますが、それと同等以上にスタジオレコーディングされた楽曲の魅力は、もっと評価されて然るべきだと思うのでした。
曲自体は聴いていたかもしれないですけど・・・
う~~む、懐かしい。
改めて聴き直したいところですね。
コメント、ありがとうございます。
マウンテンは楽曲単位でも優れたバンドでした。なにもアドリブ合戦をやらなくても、良かったんですが、まあ、時代が時代でしたから(笑)。
ぜひ、聴き直して下さいませ。