OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

恋するふたりの僥倖

2017-09-17 15:40:05 | Rock
恋するふたり / Nick Lowe (Radar / ワーナーパイオニア)

1970年代も半ば過ぎ頃から急速にノシてきた洋楽の流行に「パンク」とか「ニューウェイヴ」なぁ~んていう、サイケおやじにとっては鼻白む流れが始まった中にあって、救いとなっていたひとつが本日掲載のシングル盤A面曲「恋するふたり / Cruel to Be Kind」でありました。

とにかく最初にラジオから流れてきて、それを聴いた瞬間!?

ほとんど往年のブリティッシュビートバンドがモロ出しというシンプルで颯爽としたリズムとコーラスワークにキャッチーなメロディラインは言わずもがな、ボーカルの節回しまでもが如何にもイギリス産というフィーリングは、サイケおやじを小躍りさせたものでした。

しかも、それが冒頭に述べたとおり、ほとんど自分好みの流行ヒット曲に出会えなかった1979年の出来事だったんですから、たまりません。

速攻で掲載のシングル盤をゲットし、演じているニック・ロウについて諸々の情報を集めてみると、やっぱり1960年代後半からイギリスで活動していた履歴があり、最初に名を上げたのは1970年に最初のLPを出したブリンズレー・シュウォーツのメンバーとしてだったんですが、同バンドはアメリカのサザンロックやカントリーロックに影響されたサウンドを前面に出していながら、リアルタイムでは世界的にブレイクする事はなく、1975年頃に解散しているようです。

もちろん、サイケおやじは後追いでブリンズレー・シュウォーツのレコードを聴いたんですが、これがなかなかザ・バンドやニッティ・グリッティ・ダート・バンドの様な味わいがあって、個人的には好ましさを覚えたわけですが、果たしてイギリスでこれがメジャーウケするのか?

と問われれば、些か……。

どうやらブリンズレー・シュウォーツは今日称されるところの所謂「パブロック」、平たく言えばドサ回りも厭わない、ライブハウスや大衆酒場でのステージで演じられているシンプルなロック、つまりは如何にもブリティッシュなプログレやハードロックよりは身近な芸能界のバンドであったらしく、それゆえのインディーズなイメージは両刃の剣という事でしょうか。

というか、ニック・ロウは件のブリンズレー・シュウォーツ解散後、ソングライター兼プロデューサーとして、そんなこんなのインディーズレーベルで製作活動を続行する傍ら、ロックパイルというバンドもスタートさせていたんですが、この頃で一番有名な業績はエルビス・コステロを売り出した事かと思います。

そして、ついに放った自らの大ホームランが、この「恋するふたり / Cruel to Be Kind」であり、レコーディングセッションはニック・ロウ(vo,b) 以下、デイヴ・エドモンズ(g,vo)、ビリー・ブレムナー(g,vo)、テリー・ウィリアムズ(ds) という顔ぶれの前述ロックパイルによるものなんですが、実は後に知ったところでは、既に同曲はブリンズレー・シュウォーツ時代に作られ、レコーディングもされていたという未発表曲の再録バージョンという真相があるようです。

しかも、この間には、もうひとつのリメイクバージョンが1978年にニック・ロウ名義のシングル曲「Little Hitler」のB面に収録されたテイクがあるという、なかなかマニア泣かせの事情もありますので、要注意かもしれません。

しかし、どの時代のバージョンにも共通する魅力としての「洋楽ポップスの魔法」が、「恋するふたり / Cruel to Be Kind」には確かにあると思いますし、だからこそ、これをカバーしたり、パクったりしたレコードや楽曲が日本だけでも相当数ありますので、気になる皆様は探索される事をオススメ致します。

ということで、こ~ゆ~救いの神はどんな時代にも現れるという話が本日のお題でした。

「神」という存在は確かに漠然とはしておりますが、ジッと耐えている中に射し込んで来る一条の光こそが「神」に思える、そ~した気持ちが幸せのひとつなのかもしれません。

それが音楽ならば、殊更サイケおやじにとっては僥倖と思うばかりです。
コメント (3)
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