■The Eminent Jay Jay Johnson Vol.2 (Blue Note)
こんな世相なればこそ、ウキウキした音楽を求めてしまうのも人間の本性と居直るわけではありませんが、ようやく春ともなれば、少しでもそうした楽しい気分を欲する事だって罪悪ではありません。
まあ、たかがレコード鑑賞にも、そんな言い訳を用意しなければならない現在のサイケおやじの立場は実に情けないわけですが、しかし本日取り出したJ.J.ジョンソンの楽しい1枚に免じて、ご容赦願えれば幸いです。
録音は1954年9月24日、メンバーはJ.J.ジョンソン(tb) 以下、ウイントン・ケリー(p)、チャールズ・ミンガス(b)、ケニー・クラーク(ds)、サブー・マルチネス(per) という、今では夢の顔合わせです。
A-1 Jay
文字通り、自らの芸名をタイトルに付したオリジナルとあって、曲はもちろん演奏そのものにも相当の自信が溢れている快演は、まさにアルバムトップに相応しいと思うばかりです。
なにしろイントロからアップテンポでノリまくったリズム隊、中でもウイントン・ケリーならではの颯爽としたスイング感は既にして満足領域のど真ん中! 当然ながらサブー・マルチネスのパーカッションも楽しさを倍加させる役割を果たしていますよ♪♪~♪
ですからJ.J.ジョンソンのスライドワークとアドリブフレーズの妙技に凄すぎる現実があるにせよ、そこには威圧感なんてものは到底無く、むしろ何の理屈も抜きで、サイケおやじはジャズを聴く楽しみを感じています。
A-2 Time After Time
人気歌物スタンダード曲ですから、ここではスローテンポで演じるJ.J.ジョンソンとリズム隊の面々が些か神妙な気も致しますが、アドリブパートに入ってからのビート感の強さは、やはりハードバップに他なりません。
また原曲メロディの良さをストレートに聴かせてくれるテーマ部分の心地良さ♪♪~♪ それもまた即興演奏と対を成すジャズの魅力だと思います。
A-3 Old Devil Moon
これまた人気スタンダード曲にして、J.J.ジョンソンの十八番であり、後々まで幾つかのレコーディングが残されていますが、それにしてもここでの演奏は鮮やかの一言です。
定番であるラテンリズムの使用はサブー・マルチネスの参加によってさらに増強され、ウイントン・ケリーの飛び跳ねるラテンピアノも最高潮ならば、J.J.ジョンソンのアドリブも極めてナチュラルなジャズフィーリングに満ちていますよ。
そして失礼ながら、予想外にグッと惹きつけられてしまうのがチャールズ・ミンガスのペースワークと思うのは、サイケおやじだけでしょうか。それが決して長閑なだけではない演奏の仕上がりに大きく関わっているんじゃないでしょうか。
B-1 Too Marvelous For Words
これぞっ! サイケおやじがこのアルバムの中で最も好きな演奏で、まずはお馴染みのスタンダードメロディを巧みにフェイクしていくJ.J.ジョンソンのヘッドアレンジの上手さ♪♪~♪ もちろん淀みないフレーズを積み重ねていくアドリブパートの構成力と表裏一体の天才性である事は言うまでもありません。
ですからケニー・クラークを中心に送り出されるスインギーなジャズビートは、所謂「お約束」とは一概に決めつけられない、なにか特別のスピリットがあるように感じられるほど!?
つまりノリが、最高で抜群なんですねぇ~~♪
思わず手拍子、足拍子、体でスイング楽しいなぁ~~♪
B-2 It's You Or No One
通常はアップテンポで奏される事が多い有名スタンダード曲を、ここではアッと驚くスローな解釈でメロディを吹き始めるJ.J.ジョンソンの憎らしさ!?!
チャールズ・ミンガスの寄り添うベースのエグ味も激ヤバじゃないでしょうか。
そしてウイントン・ケリーの歌心の妙、じっくりとジャズビートを醸成させていくケニー・クラークのドラミングはイブシ銀というか、地味なところが、これまたニクイです。
B-3 Coffee Pot
オーラスは、これもJ.J.ジョンソンのオリジナルとしては有名なビバップ王道曲ですから、テーマから流れようにアドリブパートに入っていくあたりの快感は期待どおりだと思います。
もちろんアップテンポでグイノリのリズム隊の中ではサブー・マルチネスのコンガが最高のスパイスであり、チャカポコ鳴り響くラテンビートが如何にモダンジャズと相性が良いか、その確認作業が全てを楽しさ優先モードに導いているようです。
ということで、書き遅れていましたが、このアルバムはアナログの10吋LPですから、1曲あたりの演奏時間も3~4分程度です。しかし、その密度の濃さは保証付きの素晴らしさで、何もアドリブがウリのモダンジャズだからと言って、長ければ良いというものじゃ~、ありません。
またラテンパーカス入りのモダンジャズって、これほど快楽的だったかっ!?
そんなところも再認識の名盤だと思います。
ご存じのとおり、ここに収められた演奏は後に纏められる12吋LP、あるいはCDにおいても存分に楽しめますから、ぜひ、ひとりでも多くの皆様にウキウキした気分になっていただきというございます。
何故ならば、現在の沈んだ我国の状況だって、そりゃ~、不可抗力や人知の及ばないものを認めざるを得ないところは分かっているつもりですが、やはりひとりひとりが多かれ少なかれ、どこかに高揚する気分を持つことが必要なんじゃないかなぁ~、とサイケおやじは思います。
もちろん、そんな気持になれない状況や立場はあるでしょう。
しかし今は前を向いていくしかない事も、また現実である以上、ちぃ~~っでも体を前に倒すためには、楽しい音楽も必要かと思います。
人は前に倒れることで、足を出し、進めるんじゃないでしょうか。
そんな事を本日はJ.J.ジョンソンを聴きながら、思っている次第です。