OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ポール・サイモン vs. フィービ・スノウ

2012-03-09 14:41:38 | Simon & Garfunkel

哀しみにさよなら / Paul Simon with Phoebe Snow (Columbia / CBSソニー)

人は誰でも夢を見るし、それはもちろん寝ている間だけでなく、終りなき日常の合間にも所謂夢想は尽きませんが、特に自分が様々な事に対して煮詰まりを感じていればこそ、せつなくなるほどです。

あぁ、こうであったらなぁ……、なればいいなぁ……。

しかし、それが本当にせつないのは、文字通り「夢」は「夢」でしかない事を自分自身が一番良く知っているからでしょう。

さて、そこでサイケおやじが思い出してしまうのが、本日ご紹介のシングル曲「哀しみにさよなら / Gone At Last」で、自作自演のポール・サイモンにフィービ・スノウが加わったデュエットというよりも、ふたりがそれぞれに主役として歌いきった潔さが最高の名唱♪♪~♪

なにしろ曲メロとその展開は完全なる黒人ゴスペルからの転用であり、イントロのピアノはそれが十八番のリチャード・ティー、そしてゴードン・エドワーズ(b) やグラディ・テイト(ds)、さらにはジェシー・ディクソン・シンガーズによるコーラスが立派な仕事をやっていますから、思わずグッと惹きつけられるのは必定でしょう。

そして気になる歌の内容は、自分の人生に行きづまりを感じている冴えない男が、凍てつく冬のドライヴインで、これまた運もツキにも見放された女と出会い、ふたりでもう一度だけ未来を見つめようとする、現実には有りそうで、決してない物語なんですが、もちろん男のパートはポール・サイモンが、女のパートはフィービ・スノウが演じる事により、尚更に刹那の状況が表現されていると思います。

しかも全篇が既に述べたとおり、実に力強いアップテンポのゴスペル調ですから、当然ながら最終章は男女混声の歌となり、バックコーラスや演奏共々の大団円に向かう高揚感は、まさに絶品のグルーヴが満喫出来ますよ。

ところが、これが実に巧いところだと思うんですが、現実ではそう簡単に前向きの解消にはならない大人の悩みを、ひとつの「夢の過程」に仕上げてしまうのは、流石ポール・サイモン!

またフィービ・スノウの実質的に主役となった歌唱力も素晴らしいかぎり!

ですからこれを最初に聞いた瞬間のサイケおやじは、迷わずレコード屋に直行し、シングル盤をゲットさせられましたですよ♪♪~♪

ちなみに同曲はポール・サイモンの代表的名盤アルバムとして1975年に発売された「時の流れに」にも収録されていますが、本来は先行シングルの役目を果たしていた事を付け加えておきます。

ということで、例え叶わぬ夢だとしても、自らの煮詰まりを何とかするためには、夢は持ち続ける必要があるんじゃないか?

そんな事をポール・サイモンは主張しているのかもしれません。

個人的にはそこまでの共感も賛同も無いんですが、しかし歌唱と演奏の素晴らしさには震えがくるほどですから、これで良いんでしょうねぇ~。

コメント
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