■不死身のハードロック / The Who (Track / Epicソニー)
高齢化社会の現在、言うまでもなくロッカーだって老人になるし、だからこそ往年の大スタアが老残の醜態を晒す姿に接すると、もはや伝統芸能なんて言い訳すら哀しく響いてしまいます……。
もちろん、やっている側には、それなりの意気地も事情もあるでしょう。昔っからのファンがそれを許容する姿勢だって、理解出来ますし、お若い皆様が伝説を確認しようとする行動も大切だと思います。
しかし、それにしても、限度ってものがあるんじゃないでしょうか……。
と、ノッケから嘆き節を書いてしまったのは、最近は何を考えているのか分からないような再結成ツアーとか、ほとんど意味を為さないリメイクレコーディングとか、昔の名前で出ていますという以前にトホホなものが……。
そんな状況は具体的に名前を挙げなくとも、皆様には先刻ご承知でしょう。
ところが、それを逸早く自嘲的に居直ったのが、本日ご紹介のシングル曲! ご存じ、ザ・フーが1974年に出したレア・トラック集のLP「オッズ&ソッズ」に収録されていた数少ない新録音のひとつで、実は積極的にシングルカットしたのは日本のレコード会社の思惑だったようですが、今ではグループの代表作になっているのですから、まさに先見の妙でした。
ちなみに、この前後のザ・フーは前年に傑作2枚組アルバム「四重人格」を出し、まさにバンドは絶頂期と思われていたのですが、後に明らかにされた周辺事情によれば、1971年発表の歴史的名盤「フーズ・ネクスト」以降、燻り続けていた幻の企画「ライフ・ハウス」の頓挫やマネージメントとの訴訟問題、悪いクスリや飲酒等々によるメンバー達の体調不良と精神障害、さらにはショウビジネスそのものの変化が重なり、バンドの状態はどん底だったと言われています。
しかし、とにかく新作が要求される中、ジョン・エントウィッスルが過去の音源を引っ張り出し、リミックスやオーバーダビングを施して、なんとか纏め上げたのが前述の「オッズ&ソッズ」という真相は、個人的には気に入った仕上がりだったので、ちょいと驚いた記憶が今も鮮明です。
中でも、この「不死身のハードロック / Long Live Rock」は如何にもザ・フーらしい、実にストレートなハードロックであり、1979年に公開されたバンドのドキュメント映画「キッズ・アー・オールライト」のラストテーマに選ばれて人気が再燃したのもムペなるかなっ!
なによりも、ズバリと最高の邦題が全てを物語っています。
アストリアに入れば眺めが変わる
ビンゴやロックは、成人指定らしいぜっ
それで俺達ゃ~、初めて飲み屋でロックンロールを演じたバンドさ
最初のステージは、とってもショボかったなぁ
夜の10時を過ぎるまではねぇ
ロックは死んだ、なぁ~んて言われるけれど
ロックは長生きなんだぜっ!
長生きロック! 俺には毎晩必要さっ!
長生きロック! こっちへ来て、いっしょにやろうぜっ!
長生きロック! 死のうが、生きようが!
どうですっ、この開き直った勢いはっ!?!
だって、ザ・フーはデビュー当時、バンドのイメージを決定づけた名曲名演の「My Generation」で、「老い前に、死にたいぜっ」と歌っていたんですよっ!
それが10年を経ずして、既にパンクスあたりからは過去の遺物と罵られていたんでしょうかねぇ。
冗~~談じゃ~、ねぇっ!!
確かに当時は「30歳過ぎたら、ロックは出来ねぇ」と、信じられていましたが、それが今ではねぇ~~~!?
まさか、ザ・フーにしても、二人っきりの現在の活動を想定していたとは思いませんが、それでも来るべき高齢者ロックの現実を見据えていたと言っては、贔屓の引き倒しでしょうか。
否、そんな事よりも、少なくともサイケおやじはリアルタイムで「不死身のハードロック」にシビれ、しかし歌詞の中身を知ってしまえぱ、なんだかなぁ……。そんな気分のモヤモヤは今も晴れていません。
ですからリアルタイムで入れてもらっていたバンドで、この曲をやろうぜっ! となった時も、頑なに反対していたほどです。
そして実際、やることはありませんでしたが、齢を重ねた今日、おやじバンドでは必須り演目じゃないのかなぁ?
と都合の良いことを考えているのですが……。
結局、良い歌と曲は時代を超えて美しく残っていくという事なんでしょうねぇ。
本当に、そう思います。