OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ジミヘン未完の美学

2011-06-12 16:49:57 | Jimi Hendrix

The Cry Of Love / Jimi Hendrix (Track / Reprise)

1971年春、つまりジミヘンが天国へ旅立って後、最初に発売された公式アルバムではありますが、もちろん死んだ者は何も語れませんから、本人の意向にどこまで忠実な作品であったかは知る由もありません。

しかし今日、良く知られているように、当時のジミヘンは過密な巡業スケジュールの中にあっても、スタジオでのレコーディング作業は前向きに継続中ということで、未完成な素材も含めての音源は相当に残されていたわけですし、それを関係者各々の思惑が優先して仕上げられた1枚と言ってはバチアタリでしょう。

それは何よりも、このLPが世に出た時のファンの反応が全てであって、結局は良くも悪くもジミヘンの凄さが痛感されるのです。

 A-1 Freedom (1970年6月25日録音)
 A-2 Drifting (1970年6月25日録音)
 A-3 Ezy Ryder (1969年12月19日録音)
 A-4 Night Brid Flying (1968年10月~1970年8月録音)
 A-5 My Friend (1968年3月13日録音)
 B-1 Straight Ahead (1970年6月17日録音)
 B-2 Astro Man (1970年6~8録音)
 B-3 Angel (1967年10月、1970年7月23日録音)
 B-4 In From The Storm (1970年7月22日録音)
 B-5 Belly Button Window (1970年8月22~24日録音)

上記の収録演目には後年リサーチ公表されたデータを付しておきましたが、それはあくまでもベーシックなものでしょうし、様々なダビングや編集等々の作業には前後数日間が要されたと思います。また当然ながら、このアルバムを纏め上げる中で、同様の作業があった事は言わずもがなでしょう。

ですから様々な試行錯誤や未完成故の纏まりの悪さは否めませんが、しかし野性的でしなやかに躍動するギターやディランに影響を受けたと思しき独得の歌いっぷりは健在ですし、なによりも未だに着地点の見えない無限大の可能性は非常に魅力的ですよ。

それはリアルタイムで聴いた時から今も変わらぬサイケおやじの個人的な感想ではありますが、とても未完成作品とは思えぬ濃密な世界が確かに存在しています。

なにしろ冒頭、正調ジミヘン節の力強さがたまらない「Freedom」から一転、カーティス・メイフィールド風のニューソウルパラード「Drifting」へと続く流れが、もうクセになるほどツボですよ♪♪~♪ いずれも複雑多岐なギターのオーバーダビングや参加ミュージシャンの的確なサポートがキーポイントでしょう。

その意味でファンキーロックな「Ezy Ryder」が孤独(?)なギターバトルであったり、妙に明るい「Night Brid Flying」がフュージョンの元祖的な味わいだったりするのは不思議でも何でもなく、如何にジミヘンがギターミュージックに長けていたかの証明じゃないでしょうか? 特に後者の緻密な作りには何度聴いても圧倒されてしまいます。

またリラックスしたブルースセッションの「My Friend」にしても、実はかなり意図的に作り上げられたような感じが賛否両論だとは思いますが、これはジミヘン本人が企図したものとは言えない気がします……。

しかし、そうした「わざとらしさ」も芸の内というか、B面では再び安心感の強いジミヘン節の「Straight Ahead」、急きたてられるようなギターの至芸が強烈な「Astro Man」、さらに今もって大人気のスローバラード「Angel」という美しき流れが、これまた大いに魅力♪♪~♪

そしてニューソウルとハードロックの幸せな結婚とも言うべき「In From The Storm」が幾分怖い雰囲気であったとしても、またオーラスの「Belly Button Window」は弾き語りのデモ録音がモロ出しであろうとも、アルバム全体の価値が下がるなんてことは絶対にありません。

ちなみにセッションに参加したミュージシャンはビリー・コックス(b)、ミッチ・ミッチェル(ds)、バディ・マイルス(ds) というお馴染みの面々の他、スティーヴン・スティル(p)、ユマ・サルタン(per)、ジミー・メイブス(ds) 等々の名前が散見されるのも興味深いところでしょう。

実は現代の一般常識として、当時のジミヘンはこのあたりの録音を完成させ、「ファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サン」と名付けられた2枚組LPを作ろうと奮闘していた最中、突然の悲報……。その結果として急遽発売されたのが、このアルバムという経緯がありますし、なによりも件の新作がどうやって調べられたのか、ジミヘンの企画意図に極力近いというウリにより、同じタイトルのCDアルバムになっているとあっては、これまで聴いていたのは、いったい何!?

そんな無駄骨折りを体感させれる虚脱感も否定出来ません。

もちろんサイケおやじは、その新しいCDもゲットして聴きまくっておりますが、当然ながら曲順もこのアルバムとは違いますから、個人的にはプログラムしなおして楽しむのが常道になっているのですが……。

ということで、時空を超えて凄いのがジミヘンの世界!

さあ、もう1回、聴こう!

当然それはアナログ盤LPで、AB面をひっくり返す儀式が必須というわけです。

コメント
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