■針のくちづけ c/w 誘惑の年頃 / 安西マリア (東芝)
昨日掲載したキャンディーズの「危い土曜日」に誘発され、同時期に作られていたブラスロックなファンキー歌謡曲を連荘聴きしてしまったのはサイケおやじが何時もの悪癖? そして本日ご紹介はその中のひとつです。
歌っている安西マリアは言わずもがな、昭和歌謡曲フェロモン部門では欠かせない人気者ですが、その彼女に与えられる楽曲は極めて洋楽テイストが強く、さらには歌詞の内容が女王様的S傾向であったり、時にはヤケッパチなズベ公フィーリングが滲んでいたりと、とにかく今でもギリギリのアブナサが魅力でした。
例えばA面の「針のくちづけ」は徹頭徹尾、ビシバシのブラスとリズムが強引に突っ走る演奏に煽られ、幾分不安定な安西マリアの歌唱が逆にOKという、なんとも激ヤバな仕上がりなんですが、本当にヤバイのは「殺したいと思う時があるわ」と、いきなり言い放ってしまう歌詞の中身でしょう。
とにかく聴けば仰天の愛のガチンコというか、生きるか死ぬかの真剣勝負でやってしまうファンキー歌謡のセクシーさは圧巻!
それは作詞:千家和也&作編曲:鈴木邦彦というプロのヒットメーカーが確信犯的に仕掛けた目論見であったとしても、実際に歌いきる安西マリアのエグイといって過言ではない存在感があればこそでしょう。
また、発売された昭和49(1974)年1月という時代では、それが最先端を表現していたと思います。
イントロから炸裂するニューソウルなギターも良い感じ♪♪~♪
ですから同じ作風ながらB面の「誘惑の年頃」が、女の弱さや可愛さをツッパリで覆い隠すような歌詞で表現されたのも、実に用意周到で、これは例によってサイケおやじの穿った独り善がりかもしれませんが、アナログ盤の特質である、A面を聴き終えてから盤をひっくり返し、再び針を落とすという儀式を経て浸る世界の味わい深さです。
つまり連続して聴くと、これが実にひとつの世界を楽しめるんですねぇ~♪
レコードをひっくり返すというのは、その為に必要なエネルギーの補填作業というところでしょうか。
ということで、ちょい聴きには安西マリアの歌唱そのものがイマイチの出来という感もありますし、意図的に水気の多い節回しにも好き嫌いがあるかもしれません。
しかしそこはチラ見せの素肌が刺戟的なジャケ写に免じて、どうかお楽しみ下さいませ。
この路線が次なる大傑作「早いもの勝」に繋がるのも興味深々だと思います。