■Do Wah Diddy Diddy c/w What You Gonna Do
/ Manfred Mann (EMI / 東芝オデオン)
今では我国でも確固たる人気があるであろうマンフレッド・マンも、その全盛期だった1960年代中頃以降の所謂ブリティッシュビートブームの中では、流行っていた記憶がサイケおやじにはちっともありません。
同様の事は例えばキンクスあたりにも言えると思うのですが、マンフレッド・マンはそれ以下というか……。
ですから本日ご紹介のシングル盤A面曲「ドウ・ワ・デイディ・ディディ / Do Wah Diddy Diddy」にしても、1964年秋の英米ではチャートトップの大ヒットでありながら、日本ではラジオの洋楽番組でワンコーラス程度が流れれば良い方という扱いじゃなかったでしょうか。
まあ、このあたりはサイケおやじの思い違いかもしれませんが、とにかく個人的にはマンフレッド・マンに目覚めたのが1970年代中頃だったいう現実からすれば、その全盛期を聴いたのは全て後追いでした。
そして集め始めたレコードの中で、特に苦労したが当時の我国では入手が困難だった英国仕様のオリジナルアルバム群と並んで、リアルタイムで出されていた日本盤シングルの数々だっんですが、それがある偶然からデッドストックが大量に発見され、その中の極一部がサイケおやじの所へやって来てくれたのは僥倖でした。
もちろん本日の掲載分も、そうやって入手出来た1枚ではありますが、やっぱり悲しいのはマンフレッド・マンがリアルタイムで売れていなかったという真実を再認識させられたことでしょうか……。
まあ、それはそれとして、しかしA面の「ドウ・ワ・デイディ・ディディ」は非常に良く出来たR&Bポップスだと思います。
オリジナルはアメリカの職業作家コンビとして夥しい名曲を残したジェフ・バリー&エリー・グリニッチが書いたもので、同年初頭にエキサイターズのバージョンがヒットしていたようですが、とにかくそれをイントロからキャッチーなオルガンサウンドで再構築したアレンジと演奏は、聴くほどにグッとシビれます♪♪~♪
そして強いビートとエグ味の強いボーカルに溌剌としたコーラスで歌われる泣きのメロディは、どうしてこれが日本でヒットしなかったのか? 特にサビの展開は絶品なんですけどねぇ~~。
ちなみに当時のマンフレッド・マンのメンバーはマンフレッド・マン(p,org,vo)、ポール・ジョーンズ(vo,hca)、マイク・ヴィッカーズ(g,b,sax,key,vo)、トム・マッギネス(b,g,vo)、マイク・ハグ(ds,vib,vo) という5人組で、特にポール・ジョーンズは翌年に独立してからはアイドル的な人気でブレイクしたほどですから、決してマイナーな存在ではなかったはずなんですが、おそらくはリアルタイムで爆発していた我国のエレキブームの中では、オルガンやサックスをメインにする彼等のサウンドは違和感があったのでしょうか……?
しかし、そういう事を言ってしまえば、同時期に日本でも人気があったデイヴ・クラーク・ファイヴだって、音楽的な基本的姿勢やバンドの形態は似ていたんですから、ますます分かりません。
そこでB面の「What You Gonna Do」はメンバーの共作となるブルースロック調ということで、基本的にはブッカーT&MG's のスタイルを踏襲しつつも、アクの強いボーカルとハーモニカ、アグレッシプなドラムスとヘヴィなペース、さらに熱いオルガンアドリブとツッコミ鋭いギターという、なかなか強烈な歌と演奏が楽しめますが、そうしたドロドロの感性は明らかに日本のポップスファンにとっては早すぎたニューロックグルーヴだったような気がします。
尤も、この曲にしたって、アラン・プライスが在籍していた頃のアニマルズに近い部分が多々散見されるのですから、う~ん……。
ちなみに前述したブッカーT&MG's については今日、所謂スタックス系の南部ソウルを支えた有名インストグループして知られていますが、当時のサイケおやじはそんな事は知る由もありませんでしたから、これまた完全な後付け理論です。
ただしエレキブーム時にテレビで人気があった勝ち抜き番組「世界へ飛び出せ」で模範演奏をやっていたスパイダースが、時にはキーボード主体で演じるインスト物にそういう味わいがありましたですねぇ。
閑話休題。
そこで今日のマンフレッド・マンに対するお若い皆様の人気とは、1967年頃から顕著になるソフトロックでジャジーな感覚が発見されての事らしいのですが、やはり初期のディープなR&Bフレイヴィーがあってこその魅力じゃないでしょうか。
実はサイケおやじにしても、確かにカラフルなポップス風味のジャズっぽさを演出していたその頃の歌と演奏は好きなんですが、結局はリアルタイムでの我国ではブレイク出来なかった事実を鑑みれば、進み過ぎていたのか、あるいは的外れのバンドだったのか、答えはこの先も出せません。
まあ、それだけマンフレッド・マンは奥が深いグループなのでしょう。
個人的には再び初期の音源に魅力を感じております。