OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

リアルタイムで聴けなかったキンクス

2009-09-29 11:25:26 | Rock

陽気にやろうぜ / The Kinks (Pye / 日本コロムビア)

遅ればせながら、今では我国でも人気が確立したかようなキンクスですが、果たして本当にそうなのか? これは素朴な疑問です。

ご存じのようにキンクスは1960年代ブリティッシュビートのブームからデビューし、初期には黒人系R&Bをストレートなロック感覚で演じることによって人気を掴み、その後はバンド名どおり、ちょいと「ねじ曲がった」ような歌詞と温故知新のサウンド作りで一世を風靡したことになっていますが、やはりロック史では畢生の名曲名演となった「You Really Got Me」における、元祖ハードロックなイメージが強いと思います。

というか、歴史的には全盛期とされる1960年代中頃に残された楽曲が、実は我国では聴けない状況が確かにありました。

で、私がキンクスを意識したのはGSが日本中を熱狂させていた昭和42(1967)年末のことで、確かスパイダースかカーナビーツがテレビで「キンクスは最高!」みたいな発言をしていたことに端を発します。

今となっては朧気な記憶ではありますが、かまやつひろし、だったかなぁ……。その時にギターで前述「You Really Got Me」の有名なリフを弾いてくれたんですよねぇ~♪ 何か強烈に刺激だったことは確かです。

そしてその後、ラジオの某音楽番組に「You Really Got Me」のリクエストハガキを出し、見事に採用されたのも、最初にして最後の嬉しい思い出になったのですが、しかし何故か、当時の我国ではキンクスのレコードが店頭にありませんでした。

これは後に知ったところによると、日本のレコード会社との契約が切れていたそうですね。そしてそれが更新されることも無かったという事実は、当時のキンクスが如何に人気の無いバンドだったか!?! その証左だと思います。

そこで必然的に、キンクスを聴こうとすれば、中古盤に頼る他は無いのですが、本日ご紹介のシングル盤は、馴染みのレコード屋のデッドストック! 店を改装する時に倉庫に放りこんでいた中の1枚を、百円で譲ってもらったのが真相です。

つまり最初は、きちんと日本盤が出ていたバンドですから、ビートルズが大ブレイク後の洋楽市場では、ちゃ~んと商売になっていたわけです。それが……。

どうやらキンクスはリアルタイムのアメリカではパッとした人気が得られず、それはテレビ出演時のちょっとした誤解が原因とされていますが、その真実は定かではありません。とにかくイギリスでの圧倒的な人気とは逆に、アメリカではほとんど受け入れられず、それゆえに当時の日本ではアメリカ優先という業界の事情もあったようですから、さもありなんでしょうか。

キンクスは1964年2月に正式デビューしたイギリスのバンドで、メンバーはレイ・デイビス(vo,g)、デイヴ・デイビス(vo,g) の兄弟を中心に、ピート・クエイフ(b)、ミック・アヴォリー(ds) の4人組として、2枚目のシングル曲「You Really Got Me」を大ヒットさせ、トップバンドの仲間入りを果たしています。

そしてこの「陽気にやろうぜ / Everybody's Gonna Be Happy」は、イギリスでは1965年春頃に発売され、そのアップテンポでブッ飛ばす直線的なR&Rの味わいは最高でしたから、忽ちの大ヒットを記録していますから、日本でも同じ年にリリースされていたものです。とにかくチープでありながら、絶え間ないロックビートを叩きつけてくるリズムギターとドラムスの勢いが素晴らしく、また効果的な手拍子が、当然ながら絶対のロックビート♪♪~♪

極言すれば、ほとんどメロディらしき展開は聞こえてこないのですが、この勢いだけで押し通すところが、痛快至極! もちろん似たようなことをやってしまった後のパンクロックなんていうものと比較するのは、愚の骨頂でしょう。あえて言えばサビでの微妙なフックが、クセになるようなスパイスだと思います。

またB面収録の「お次は誰 / Who'll Be The Next In Line」は、同系の歌と演奏ですが、ややテンポを落とした粘っこいグルーヴが、やはりクセになる魅力に溢れています。そして今になって気づいたのですが、隠し味に使われているピアノ故に、なんとなく当時流行していたモータウン系R&Bの味わいも強く感じられますねぇ~~♪

ということで、キンクスの諸作の中では決して人気があるとは言えないレコードですが、とにかく当時の日本では、手軽にキンクスのレコードを楽しめなかったという事実は重大! ですからリアルタイムでの絶頂期は全て後追いというのが、キンクスが我国でブレイク出来なかった真相じゃないでしょうか。

確か、そうした作品群が再発されたのは、昭和44(1969)年以降だったと記憶していますし、サイケおやじにしても「You Really Got Me」を含む名曲をきっちり聴いたのは、1970年代に入ってからでした。ちなみにそれ以前に、かろうじて小ヒットしたのは、昭和45(1970)に出た「ヴィクトリア / Victoria」ぐらいでしたよ。しかもラジオの深夜放送ですからねぇ……。

それが現在では日本でも大物バンドとして、局地的かもしれませんが、崇められているのは嬉しい状況だと思います。どうやらバンク~ニューウェイブの洗礼を受けた後の世代のバンドが、キンクスを再発見して後追いしているという事情もあるらしいのですが、それほど普遍的な素晴らしさが認められているというのは、やはり凄いことなのでしょう。

ちなみに中期以降のキンクスが推進したロックオペラ的な作品群は、言葉の問題もあって、私には完全に楽しめない世界なのですが、イギリス人にしてみると、その歌詞の中身はドメスティックな笑いや禁断のブラックユーモア、エグイ皮肉がテンコ盛りだそうですよ。

う~ん、それが完全に理解出来ないのが、悔しいですねぇ……。

やっぱり「ひねくれ者」と名乗るだけあります。

コメント
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