OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

最も地味なライ・クーダー

2010-04-25 15:59:37 | Ry Cooder

Boomer's Story / Ry Cooder (Reprise)

ライ・クーダーの諸作中、最も地味なアルバムでしょう。

発売されたのは1972年頃でしたが、前作「紫の峡谷」が我国でも評判となったわりには、この3作目はそんなに話題になることもなく、サイケおやじにしても翌年末に中古の輸入盤で入手したのが真相です。

それはシンプルなジャケットデザインと同じく、本当に素朴な内容が当時の流行とは無縁の世界だったからでしょうか。なにしろジャケット裏には参加ミュージシャン名はおろか、収録曲目のクレジットさえなかったのです。

しかし実際に盤に針を落として聴けば、これがなんとも燻銀の世界です。

 A-1 Boomer's Story
 A-2 Cherry Ball Blues
 A-3 Crow Black Chicken
 A-4 Ax Sweet Mama
 A-5 Maria Elena
 B-1 Dark End Of The Street
 B-2 Rally 'Round The Flag
 B-3 Comin' In On A Wing And A Prayer
 B-4 President Kennedy
 B-5 Goodmorning Mr. Railroad Man

例によって上記演目は全て古いブルースや伝承歌、そして南部や中南米の流行歌なんですが、私がゲットしたのは中古盤だった所為もあり、もしかしたら付属してたかもしれない歌詞カードや参加メンバーの詳細が分かるようなライナーがありません。

しかしそれでも前2作のリーダー盤に夢中となった経緯があり、また友人&先輩からの情報を得ながら聴く味わいは尚更に別格でした♪♪~♪

まずは冒頭、ずっしりと重いビートでシンプルに繰り広げられる「Boomer's Story」の素朴でエグイ歌と演奏に身も心も奪われることから始まり、カントリーブルースとアラブ音楽をコテコテに煮〆たようなインスト「Cherry Ball Blues」、ホノボノジャズフォークという感じの「Crow Black Chicken」、泥臭い味わいが逆にスマートに「Ax Sweet Mama」、さらに一転してのカリブ海リゾートの午後というノンビリムードが素敵なインスト「Maria Elena」と続く流れは何の違和感も無く、実に心地良いんですねぇ~♪

もちろんライ・クーダーの神業ギターはスライドとフィンガービッキングに冴えわたり、ほどよい緊張感を滲ませたボーカルも良い感じ♪♪~♪

ちなみに助演メンバーは私の完全なる推測ですが、前作同様にジム・ディッキンソン(p)、ミルト・ホランド(ds,per)、ジム・ケルトナー(ds,per)、ジョージ・ボハノン(tb) 等々が参加していると思われますが、このアルバムの中では一番に有名な曲であろうB面ド頭の「Dark End Of The Street」には作者のダン・ペン(p) が参加していると言われています。

しかしライ・クーダーが本当に凄いのは、この濃密な南部ソウルの名曲を全くの自然体で己のギター中心に歌わせたことでしょう。常套手段の力みを期待すると見事な肩すかしが、実に粋な風情とシミジミフィーリングを醸し出しているのです。

あぁ、このスライドの軋みには泣けてきますよ。

これぞ、本物のすすり泣き♪♪~♪

そして、その実に良いムードを引き継いで素朴に歌われる「Rally 'Round The Flag」では、寄り添うピアノがランディ・ニューマンらしいんですが、ギターとピアノと質素な歌声だけで、これだけの世界が描けてしまうという印象の強さが最高!

さらにフォークソング風でありながら、妙にシンコペイトしたビート処理が不思議な魅力を滲ませる「Comin' In On A Wing And A Prayer」も侮れません。

また続く「President Kennedy」は伝説のブルースマンとして再評価されていたスリーピー・ジョン・エステスとの夢の共演ながら、決してそれに流れされることのないライ・クーダーの矜持が見事です。もちろん当時は70歳近い老境に入っていたスリーピー・ジョン・エステスが自作のオリジナルを歌うという存在感は強烈なんですが、その偉人の歌とギターを見事にサポートするライ・クーダーのマンドリンには、単なるトリビュートを超えた敬意が感じられ、まさにこのアルバムのハイライトかもしれません。

ですからオーラスの「Goodmorning Mr. Railroad Man」が尚更に胸キュンというか、そこはかとない泣きのフィーリングがたまりませんねぇ~♪ 微妙に使われているアコーディオンやクラリネットがシブイです。

ということで、本当に地味~な演奏ばかりなんですが、心に染みる感度は良好♪♪~♪ その決して一般ウケはしないであろう作りが逆に魅力という、なんとも天の邪鬼な1枚だと思います。

そしてこれは全くの妄想ではありますが、もしかしたらデビュー以来のアウトテイクを加工したのかもしれないと思わせるほど、ディープでコアな仕上がりが賛否両論のポイントでしょう。

それゆえライ・クーダー入門用には適しませんが、末長く愛聴出来るアルバムじゃないでしょうか。私は好きです。

コメント (3)
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