OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

フォーカスの偏愛ライブ盤

2010-04-01 17:23:35 | Rock Jazz

Focus At The Rainbow (Polydor)

1970年代初頭、オランダから世界的にブレイクした幾つかのバンドがありました。それは所謂ダッチロックというブームで、ご存じ「Venus」のトップヒットを放ったショッキング・ブルーやゴールデン・イアリング、アース&ファイアー等々は有名ですが、しかし中でも特に強烈な印象を残したのが、フォーカスという4人組のグループでした。

なにしろやっていたことが、クラシックや欧州教会音楽の影響をモロに出したロックジャズ! もちろんほとんどがインストだったんですが、ボーカル曲にしてもハラホレヒラヒラの模擬裏声を使ったヨーデル唱法やスキャット主体という、当時としては、あまりにも温故知新なスタイルを貫いていたのです。

メンバーはタイス・ヴァン・レア(key,vo,fl) とヤン・アッカーマン(g) の2人を中心に変遷が多く、それゆえに1970年に出したデビュー盤は不発……。ところが紆余曲折を経て発売したシングル曲「悪魔の呪文 / Hocus Pocus」が1972年末頃からジワジワとヒット! これは我国でも同じ頃、突如としてラジオから流れ出た瞬間、そのヨーデルスキャットとクラシック趣味をロックジャズで味付けした演奏が強い印象を残し、忽ちのヒットになっています。

そして続くシングル曲「Sylvia」もインストながら、今では井上陽水の「少年時代」の元ネタともいうべき、実に「Let It Be」的なメロディがクセになる魅力があっての連続ヒット♪♪~♪

当然ながらアルバムも前述のデビュー盤から、その頃までには3作が発売され、何れもロックジャズとプログレが見事に融合した内容は、高く評価されています。

そして1973年の晩秋、ついに出たのが、ロックジャズのバンドには避けて通れないライプ盤! それが本日の1枚です。

 A-1 Focus Ⅲ
 A-2 Answers? Questions! Questions? Answers!
 A-3 Focus Ⅱ
 B-1 Eruption (excerpt)
 B-2 Hocus Pocus / 悪魔の呪文
 B-3 Sylvia
 B-4 Hocus Pocus / 悪魔の呪文 (reprise)

録音は1973年5月のロンドンはレインボーシアターで、メンバーはタイス・ヴァン・レア(key,vo,fl)、ヤン・アッカーマン(g) 、バート・ルイチー(b,vo)、ピエール・ヴァン・ダー・リンデン(ds)という最強時代の4人ですから、ハナからケツまで熱い興奮が渦巻く演奏ばかり!

幕開けの「Focus Ⅲ」は後年のリー・リトナーあたがやってしまいそうな、とても物分かりの良いメロディで構成された、これは早すぎたフュージョンでしょうねぇ~♪ と書いたのも、この頃の我国には未だ「フュージョン」なんて言葉は無かったんですが、フォーカスの演奏で一番にファンの心を刺激するのが、ヤン・アッカーマンの繊細で豪胆なギターというのは、異存の無いところだと思います。

実際、ここでの曲メロはクセになる魅力があるんですよねぇ~♪

しかしステージ進行は、そのまんま熱くて危険極まりないアップテンポの「Answers? Questions! Questions? Answers!」へと過激に突入! ドカドカ煩いロックジャズのビートが炸裂し、キメにキメまくるバンドの勢いは、千変万化の美しき流れに収斂してきますが、もちろんヤン・アッカーマンのギターは細かいフレーズを積み重ねつつ、スリルとサスペンスをたっぷりと大サービス♪♪~♪

一方、タイス・ヴァン・レアはストレートなオルガンとモダンジャズなフルートの両刀使いで、その魅惑の音楽性を完全披露していますから、もう中盤からは完全にジャズといって良いかもしれません。

当然ながら自由度の高いドラムスとベースの蠢きも、たまらないところでしょう。

それはAラスの「Focus Ⅱ」に入っても怯むことのない存在感で屹立し、モロにクラシック調の曲メロがドラマチックに演じられる中で、その盛り上げに貢献しているのです。

まあ、正直に言えば、ライプならではの荒っぽさが裏目に出る寸前までいっていますから、その雑なムードがスタジオレコーディングで顕著だった構成の完璧さを幾分ではありますが、殺いでいる気もします。

しかし「ロックバンドのライプ盤」という観点からすれば、結果オーライ♪♪~♪

ですからB面に移ってからの白熱の名演「Eruption」から、怒涛のヒットメドレーとなる終盤への流れは圧巻ですよっ!

特に「Eruption」は似たような構成の演奏をエマーソン・レイク&パーマーが既にやっていたとはいえ、幾つかの細かいパートを連続させることによる緩急自在の組み立ては、やはり凄いテクニックと音楽性に裏打ちされたものでしょう。そして何よりも、分かり易いものを演じるという姿勢が、明確に感じられます。

つまり怖いイメージがあるロックジャズやプログレのハードなところを、食わず嫌いにならないように指向していたんじゃないでしょうか? だから私はフォーカスが大好きだと、自己分析するほどです。

そして「Sylvia」を間に挟んだクライマックスでは、「悪魔の呪文」の潔さ♪♪~♪

当然ながらシングルヒットしたスタジオバージョンよりもテンポアップして、幾分ヤケッパチな雰囲気でブッ飛ばすという、如何にも当時のロックライブの真骨頂が楽しめると思いますが、それにしてもメンバー各人のテクニックは恐ろしいほど!?!

ちなみに「悪魔の呪文」では、ウリだったヨーデルのハナモゲラ語が、決してデタラメじゃなかった!?! という永遠の命題に突き当たる楽しみもありますよ。

ということで、まずはヤン・アッカーマンのギターにシビレること請け合いです。その強靭でしなやか、悪辣寸前の早弾きフレーズ、泣きの音色とアドリブスケールの選択の上手さ、もちろん運指とピッキングも流石としか言えません。そのスタイルはジョン・スコフィールドとリー・リトナーの折衷という感じかもしれませんが、もちろん、その2人よりも早く、自分の個性を確立していたのが、ヤン・アッカーマンだったのです。

またタイス・ヴァン・レアはメイン楽器のオルガンだけでなく、ちょっとローランド・カーク風のフルートにも素晴らしい才能があって、本物のジャズミュージシャンと共演しても遜色の無い実力者だと思います。当然ながら作編曲も巧みで、一応はバンドのオリジナルとされる曲でも、どっかで聞いたことのあるような、クラシック系のメロディがテンコ盛りという憎めなさ♪♪~♪

しかし残念ながら、フォーカスはこのライプを区切りにしたかのようにバンドは分裂の繰り返し、セカンド&サードアルバムのような密度の濃い作品は生み出せずに時が流れてしまいました。もちろんヤン・アッカーマンもタイス・ヴァン・レアも自身のリーダー盤を制作していますが………。

ですからフォーカスといえば、やっぱりこのライプまでに強い愛着があって、この手の音楽に何時も夢中なサイケおやじは、聴く度に熱くさせられるのでした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする