OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

納得の老成ルックスだったザ・バンド

2010-04-22 16:48:40 | Rock

Cahoots / The Band (Capitol)

ジェスロ・タルと同じく、ルックスが最初っから老成していたロックグループとしては、ザ・バンドもそのひとつでした。

しかもやっていたことが、ちょっと当時のロックでは計り知れないというか、ビートルズやストーンズ、あるいはハリウッドポップスあたりの流行音楽ばっかりに馴染んでいた自分のような者には、先輩から聞かせてもらった世紀の名盤「ビッグピンク」も、最初は全く理解出来ませんでした。

もちろんボブ・ディランのバックバンドとしての実績は知らされていたにせよ、洋楽雑誌に掲載されたザ・バンドのグループ写真は、丸っきり前時代的な老人集団……? ロビー・ロバートソンがドリフターズの加藤茶に見えたのは、私だけではないと思います。

だだし発売されたレコードが各方面から絶賛の嵐だったのは、リアルタイムの日本でも間違いのないところでしたから、それを理解出来ないのはある種の恥という雰囲気も……。

で、本日ご紹介の1枚は、本国アメリカでは1971年秋に発売された4作目のアルバムとして、我国では翌年に出たという、サイケおやじにとっては初めてリアルタイムで接したザ・バンドが、これでした。

 A-1 Life Is A Carnival
 A-2 When I Paint My Masterpiece / 傑作をかく時
 A-3 Last Of The Blacksmiths
 A-4 Where Do We Go From Here? / ここからどこへ
 A-5 4% Pantomime
 B-1 Shoot Out In Chinatown
 B-2 The Moon Struck One
 B-3 Thinkin' Out Loud
 B-4 Smoke Signal
 B-5 Volcano / 火山

 B-6 The River Hymn

今となってはザ・バンドの諸作中、最低とされる評価も痛々しいのですが、そんな経緯もあって、サイケおやじには眩しい愛聴盤になっています、

告白すれば、最初は国営FMラジオ放送でアルバムが丸ごと流されたエアチェックのテープを聴いていたんですが、当然ながら直ぐに共感出来た世界ではありません。

しかし、これが理解出来ないのは時代遅れじゃないか?

という強迫観念から、ほとんど意地になって謹聴していたのが本当のところです。

すると、あ~ら、不思議!?!

そうするうちに、まずはザ・バンドが醸し出す蠢くリズムのゴッタ煮性が、ちょうど多国籍映画のような娯楽主義に満ちていることに快感を覚え、次いで一般的なロックから遊離している曲メロやアレンジさえも、実はいろんな音楽から美味しいエッセンスを抽出したものじゃないのか!?!

そんな秘密を垣間見たような気分にさせられてきたのですから、後は一気呵成にザ・バンドの天国へ直行するだけでした。

もちろんそういう目覚めは、ようやく私が既成のロックだけでなく、R&Bやジャズ、ブルースやフォーク等々のアメリカ音楽全般に少しずつ馴染んでいたからでしょう。

そして最初に夢中になったのが、ヴァン・モリソンのゲスト参加も嬉しい「4% Pantomime」で、リチャード・マニュエルと演じる魂の掛け合いには、聴くほどにゾクゾクさせられましたですねぇ~♪

ちなみに私がヴァン・モリソンと邂逅したのも、この「カフーツ」で修業していた同時期、やはり国営FMラジオで丸ごと流された新作アルバム「テュペロ・ハニー (Warner Bros.)」でしたから、この頃は本当に新しい出会いが続いていたというわけです。

また主役のザ・ハンドはロビー・ロバートソン(g)、リチャード・マニュエル(vo,key,ds)、ガース・ハドソン(key)、リック・ダンコ(vo,b)、レヴォン・ヘルム(vo,ds) という不動の5人組でしたが、このアルバムを作る過程では、まず前述のヴァン・モリソン、そしてA面ド頭に収録された名演「Life Is A Carnival」におけるニューオリンズ風味のホーンアレンジを担当したアラン・トゥーサンといったゲストの存在感も強烈!

というか、件のふたりについて、個人的にはこのアルバムで存在感を強く印象づけられたのが紛れもない事実だったのです。

しかしザ・バンド本隊の頑張りも、決して「カフーツ」が駄作なんていう世評に甘んじるものではないと思います。

確かに後追いできちんと理解出来るようになった「ビッグピンク」やセカンドアルバム「ザ・バンド」に比べれば、それなりの物足りなさがあるのは否めませんが、おそらくは基本が一発録りで作られたと思しき力強いグルーヴは、当時の他のロックバンドを凌駕する勢いが確かにあると感じます。

と同時に演奏パートの密度の濃さ、彩りの豊かさ、そして優れた3人のボーカリストの個性的な歌いっぷりも素晴らしく、例えばボブ・ディランが当時は未発表にしていた「傑作をかく時」、中華メロディのイントロとキメも面映ゆい「Shoot Out In Chinatown」、諦観が滲む「Smoke Signal」等々、なかなかの名唱・名演が収められているのです。

率直に言えば所謂、シブイと表現される世界でしょうねぇ。

ですから、それはザ・バンドのような老成したルックスで演じられなければ納得出来るものではないし、練り込まれた演奏と熟成した歌声が必要十分条件!?

こうしてザ・バンドは私に新しい音楽の世界を提供してくれたというわけですが、しかしここで聴かれる特有のリズムとビートの躍動は、ファンキーというソウルとロックの時代的要求に応えたもので、若き日のサイケおやじを一番に浮かれさせたものはスバリ、それだったと思います。

ご存じのとおり、ザ・バンドはこの「カフーツ」を発表後も絶え間ない巡業を続け、素晴らしいライプアルバムを作ったり、あるいは自分達のスタジオを持ったりして、悠々自適の活動に入っていくのですが、それがそのまんま、当時のロックの主流のひとつになったのは凄いことでした。

自らの下積み時代を開陳するオールディズ再演アルバムやボブ・ディランとの共演作、そしてライプコンサートでの夢の共演盤と続く流れは、完全に歴史でしょう。

そして「カフーツ」こそ、その分岐点に出た孤高のアルバムかもしれません。

なぁ~んて、回りくどい言い方をせずとも、サイケおやじにザ・バンドを理解させてくれた、その一点だけで満足な私的名盤というわけです。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする