OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

エバンスも相性で苦しむか?

2007-03-19 19:58:08 | Weblog

まだまだ遅い冬から抜け出せない1日でした。

朝から吹雪、吹雪、氷の世界です。

ズバリ、ペギラが来た状態の中で、本日はこれを――

California Here I Come / Bill Evans (Verve)

エバンスの死後、確か1982年頃に出たライブ盤です。

録音は1967年8月のヴィレッジ・ヴァンガードという、まあビル・エバンスにとっては自分の庭という名門クラブなんですが、特筆すべきは、トリオのメンバーです。なんとビル・エバンス(p) 以下、エディ・ゴメス(b) とフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、なかなか違和感たっぷりの……。

今でこそ、ビル・エバンスのライブ音源はかなり出回っていますし、未発表録音も含めて、多士済々の名手がビル・エバンスのトリオに去来していたことが明らかになっていますが、当時はこのメンバー・クレジットに妙な胸騒ぎを覚えたものです。

それはしかし、ビル・エバンスとフィリー・ジョーの相性で言えば、これは過去の名盤、例えば「Everybody Digs (Riverside)」とか「Interplay (Riverside)」が示すとおり、ベストマッチだと思います。ただしエディ・ゴメスが入り込んできた場合は、やはり???

実際、アナログ盤2枚組という質量感たっぶりのアルバムに収録された演奏には、どうしても馴染めない部分を私は感じています――

A-1 California, Here I Come (1967年8月17日録音)
A-2 Polka Dots And Moonbeams (1967年8月17日録音)
A-3 Turn Out The Stars (1967年8月17日録音)
A-4 Stella By Starlight (1967年8月17日録音)
B-1 You're Gonna Hear From Me (1967年8月18日録音)
B-2 In A Sentimental Mood (1967年8月18日録音)
B-3 G Waltz (1967年8月18日録音)
B-4 On Green Dolphin Street (1967年8月17日録音)
C-1 Gone With The Wind (1967年8月18日録音)
C-2 If You Could See Me Now (1967年8月17日録音)
C-3 Alfie (1967年8月18日録音)
C-4 Very Early (1967年8月17日録音)
D-1 Round Midnight (1967年8月17日録音)
D-2 Emily (1967年8月18日録音)
D-3 Wrap Your Troubles In Dreams (1967年8月17日録音)

という演目の中、まず初っ端の「California, Here I Come」は静かな序奏に始まり、手探りでテーマを解釈し、少しずつ自己のペースを掴んでいくビル・エバンス十八番の展開が気持ち良く、ビシバシ叩いて場を盛り上げていくフィリー・ジョーとビンビン・グリグリに絡んでくるエディ・ゴメスの緊張感溢れる演奏が、完全に上手くいった名演だと思います。

しかし、どうも後が続かないというか、例えば「Polka Dots And Moonbeams」にしろ「In A Sentimental Mood」にしろ、こちらが期待する耽美的な部分が稀薄です。

また「On Green Dolphin Street」や「Gone With The Wind」は荒っぽさが目立ちます。

う~ん、これはオクラ入りしていたのが頷けるというか……。

個人的に一番気になるのは、フィリー・ジョーとエディ・ゴメスの相性がよろしくないというところです。なんか2人ともやりにくそう……。

肝心のビル・エバンスは、その2人の間を行ったり来たりという按配なんですが、ちゃんと「エバンス節」は出していますし、独特のノリは気持ち良いはずなんですが、大方の場面でフィリー・ジョーが浮き上がったオカズを敲いてしまうという……。

しかし、それが一気に解消されるのが、オーラスの「Wrap Your Troubles In Dreams」です♪ ここでは大暴れのフィリー・ジョーに対して、グッと手綱を引き締めつつ、エディ・ゴメスに歩調を合わせることで自己のペースを守るビル・エバンスのファジーな演奏姿勢が吉と出た快演! 終盤のエバンス対フィリー・ジョーのソロチェンジには、おもわず手に汗を握ります!

ご存知のように、ビル・エバンスは1970年代後半にエディ・ゴメスと別れて後、より躍動的というかアグレッシブな演奏も聞かせるようになっていきますが、実はその萌芽は1960年代中頃から模索されていたようです。

ただし残念ながら、フィリー・ジョーの敲き出すビートが、やや当時の流れの中では浮いていたという……。しかし、もしこのセッションのベースがサム・ジョーンズあたりだったら、全く別種の名盤になっていたかもしれません。そんな恐さを秘めたアルバムだと思います。

ということで、全体的に纏まりよりは勢いが楽しい作品なのでした。 そして個人的には8月17日録音の音源の方が、出来が良いと感じています。

ちなみに現在は1枚のCDに纏められているようなので、機会があれば、ぜひ、どうぞ。

コメント (2)
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