今季の大谷は、相手との対戦と言うよりは、時間との闘いと言った方が的を射ている。あの回は、大谷よりもこっちが激しく動揺してしまった。欽ちゃんならきっと「何でそう、なるの?」と言っただろう。
だって出だしは凄かったんだよ。すべてストライクコースに行って、8球ぐらいで1回が終わった。それが3回まで続いた。すごく気持ち悪かった。こんな大谷は初めてだ。むしろ嫌な予感が強くなって、ケガとかおかしな事が起こらなければいいが、と思った。
あの回は明らかにおかしかった、とキャッチャーのウォラックが言っていた。彼が一番その事に気が付いていた。そして、どうにかして「時間」を作ってやるべきだったと考えているようだ。
大谷は直前まで塁上にいて、チェンジになってダグアウト前まで戻り、立ったまま同僚の差し出すコップの水を飲み、グラブを受け取って、マウンドにとって返す。そして投球練習に入る。
息が整うヒマが無い。上気した状態でバッターに臨む。そして球種は何にするか考え、左腕に装着した装置のボタンを押し、15秒以内に投球動作に入らなければならない。そのこと以外に新たな要素が加わった。ピッチコムの不具合だ。あの帽子につけたヘッドフォンというかイヤホンというか。その機械に触っている大谷の右手の指が小刻みに震えているように見えた。そのくらい動揺していた。
大谷には考える事が多すぎる。容赦なく時計は進む。脳は運動している時と同じくらい酸素を要求する。結果、自分に還る余裕が無かった。
大谷は普段から投球間隔が長い方だ。ピンチの時は1球1球、時間を使って息を整えているように見える。その時計との格闘に、今慣れようとしている最中だ。
こんな状況に追い込まれる人間は、世界広しと言えども大谷だけだ。今回のルール改正の影響を、深刻な程受けている選手は他に居ない。
決まった事は仕方が無い。だからどうにかしてベンチは、大谷のために時間を作ってやらなければいけない。タイムは1回しか取る事が出来ない。他に方法は無いか。キャッチャーミットのひもが切れた? ボールがフィールドに入り込んだ? 外野からビールのコップが落ちてきた? あと無いか。
とにかく、ハプニングの演出を工夫する必要がある。このことをファンは一緒になって考えてあげないといけない。
それでも一気に5点を取られても、まだ防御率1点台。
このゴタゴタを繰り返しても、シーズン通して1点台?
こりゃたまげた。
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