1974年、日本テレビ「木曜スペシャル」という番組で、スプーン曲げをするためユリ・ゲラーが来日した。呼んだのは、UFOディレクターとして有名になった矢追純一。
あの時テレビの前で、ユリ・ゲラーに声を掛けられて一緒にスプーン曲げをやって、実際に多数の少年少女、大人までがスプーンを曲げ、狂気のざわめきが起こった。
清田益章少年もその一人だった。彼はその後の人生を、この番組によって翻弄されて行く。ミスター・マリックもユリ・ゲラーによって人生を変えられた一人だった。デパートの手品用品売り場で実演販売をしていた彼は、ある日からちっとも子供達にウケなくなったのを実感する。「なあんだ、手品か」
日本人は手品を見る時、怪しい動きがないか必死に種を探す。本場では純粋にショーとして楽しむのだそうだ。それからというもの、スプーン曲げを手品で出来ないか、何年も研究するようになる。そして実際、ユリ・ゲラーの前で披露し、逆に真剣に提案される。「僕と一緒に、各地を回らないか」
あの頃、私も若かった。80年代になっても、まだブームは続いていた。就職して二つ目の学校に勤務していた時。男性講師の先生が、スプーンを曲げたと言うので、ひとしきり注目を浴びた。実際にやって見せると言う。目の前で実演して見せた。確かにスプーンは曲がった。
しかし妙に心に引っ掛かるものがあった。その彼氏の手の動きは、無意識に力が入っているように見えた。そのせいで少し震えた。武者震いかも知れない。興奮していたのかも知れない。その時は分からなかった。私は超常現象を信ずる派だったもので・・。
NHKのことだから結論は決まっている。ユリ・ゲラー自身も最近インタビューした中で、あれは超能力だとは言ってない。イカサマだとも言ってないが。
あれは一種の集団催眠だった。騙されたという意味ではない。人間は集中すると、とんでもない力を発揮する。「曲がれ」と言ったユリ・ゲラーの声に従って意識を集中するあまり、自分の手に力が入っていることが、分からなかったのだと思う。中には本物の超能力者がいたかも知れない。しかし清田は失敗し、マリックは地位を築いた。
この件ですべての超常現象が否定されるわけではない。あの時は確かに日本中が熱狂し、ブームになった。それは間違いない事実だ。
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