松美の言絵(いえ)

私は誤解されるのが好きだ。言い訳する手間が省けるから。

「イージーライダー」

2014-12-25 06:59:10 | 日記・エッセイ・コラム

 毛唐の文化、楽しんでますか。町へ出ると、パトカーがチンタラ走っていて、邪魔でしょうがありません。まるでクリスマスを祝うかのように、赤色灯を焚いて行進していました。子供のいないイブは、すでに形骸化して、ケーキだけをロウソクも点けずに、黙々と食べるだけです。

 

 アメリカンニューシネマと呼ばれるこの作品は、作り方からして型破りだった。自分らが作った低予算映画なのだ。監督兼脚本兼主役のデニス・ホッパー(声は山谷初男)。同じく主役のピーター・フォンダは製作者でもある。父はあのヘンリー・フォンダという芸能一家の生まれ。1969年のアメリカを象徴する映画として70年に日本に紹介された。

 誰でも思い浮かべるのはあの、切り返しの大変そうな大型バイクの姿だろう。今見て思ったのは、ジャック・ニコルソンが羽振りのいいおそらく政治家の息子として出てくる。デモに無許可で参加したとして二人がぶち込まれた同じ鉄格子に、酔っぱらって保護されている。翌日には金の力で三人とも釈放されるわけだが、そこで娼館へ行こうと誘う。誘った本人が結局殺されるわけだが、あのくだりは今もアメリカの暗黒部分を象徴している。当時の世相を知らない人にはピンと来ないだろうが、ビートルズを代表とする長髪の若者は、トラディショナルな大人連中には、ひとくくりで不良と見られていた。これは日本も同様だった。定職も持たずにぶらぶらして、マリファナでもやっているようなやつは、ライフルぶっ放されても、仕方がない、というように見られていたのだ。今でも、開拓者精神あふれる自由の国アメリカは、黒人差別が依然として存在する。そういう意味で、古くて新しい作品ということができる。

 そのジャック・ニコルソンが焚火をしながら語る言葉が印象深い。妙な光を見たと主張するビリーに対し、「それはUFOで世界中に基地がある。初めて来たのは1946年。月にレーダービーム(電波)を当てて以来で、今では大勢が地球で活動している。政府も知ってる。」と言う。ビリーは「活動してるところなど、見てないぜ」と言うと、「宇宙人は我々と同じ太陽系の連中だ。社会は進んでるがね。戦争も通貨制度もない。指導者も必要としない。全員が指導者だ。高度な技術のおかげで、日常の生活は競争なしで満たせるんだ。」「それはおかしい。なぜ我々に正体を見せない?」「なぜ見せないかって?見せたらパニックになる。地球には指導者がいる。情報の公表は彼ら次第だ。その彼らが情報を抑えてるんだ。現体制がぐらつくからさ。地球にいる金星人は全階層の人と接触している。あらゆる人間とだ。現体制に与える衝撃を和らげようと金星人は全階層の人と接触して忠告している。人間が神のように、自分を制御できれば、人間は飛躍し平等に進化できるんだ。」これがマリファナを吸いながらしている会話だ。

 金星は摂氏400度の、とても人間の住めない星だと分かっている。こういうやり方は良くある。フィクションの力を借りて真実を暴露する、というやり方だ。荒唐無稽としか思えない話も、私には真実として映る。金星より暑いはずの水星に氷が存在し、太陽観測衛星SOHOの映像は、しょっちゅう加工が施されていて、時にまっ黒になったりする。これが故障なら、こんなポンコツをいつまでも使っているはずがない。

 何より驚いたのは、宇宙人議論に長い時間を割いたことと、私がかつて読んだ小説にそっくりだったことだ。「非(ナル)Aの世界」を書いた、ヴァン・ヴォークトだ。世の中には分からないことの方が多い。それがあるから楽しいのだ。だから小保方さんも私は詐欺師だとは思わない。

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