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北米project 2 ~Major Leaguers und Jäger.  その11 【2015/06/24~26】

2016-04-22 23:10:26 | 海外旅行記

前回までにメインハンガーの展示機は全て見終わったのですが、FHCには小さいハンガーがもうひとつあって、そこにもまだ機体が展示してあります。
メインハンガーが欧州戦線の機体を置いてあったのに対して、こちらは太平洋戦線で活躍した機体がメインとなっています。あとは置き場所に困ったと思われるものも一部。



23機目、日本海軍の三菱 零式艦上戦闘機五二型。ついに日本機の登場。まあ機体に関しては説明不要ですよね。
やけにボロボロで、これはまたジャングルの奥地で見つかった機体なのかなと思ったんですが違っていて、1944年サイパン島で鹵獲されて性能評価のために護衛空母USSコパピーでアメリカへ送られました。
戦後、海軍基地で事故って廃棄されてしまい、その後は骨董品としていろいろな所有者の元を渡り歩いたんですが、最終的に2000年にFHCが取得するまでの間に風雨に曝されて朽ちていました。今後はレストアするらしいです。
アメリカにいてもダメになる機体ってのはいるもんなんですね。アメリカでは零戦ってあまり関心がないのかもしれないぞ。
ちなみに博物館の説明書きには、五二型はアメリカの新型戦闘機に対抗するために開発された機体だけど、ヘルキャット、コルセア、ムスタングには敵わなかったぜ、それからもう少し改良をしたけどそれでも頑丈なフレームと高い火力と硬い装甲を持つ俺たちには勝てなかったぜ、と結構けちょんけちょんに言われてました。でも事実だから仕方ないね。
もうひとつ脱線すると、これのテールコードは61-121となんだか聞き覚えのある番号だったんですが、これはプレーンズ・オブ・フェームが持ってる零戦のテールコードが61-120のひとつ後の番号なのでした。あんたら出身地同じだったのね。



というわけなんで、まだレストアされてない故に実は意外と原型度の高い機体・・・なのかもしれません、これ。
ただし、塗装はオリジナルでないと思います。アメリカ軍が鹵獲機の性能評価をするときには必ず塗装を塗り替えると言われているので、この緑はその後塗られた可能性が高いです。
緑塗装の下に黄色い塗装が見え隠れしているんですが、これがアメリカ軍が塗った塗料なのかもしれません。カラー写真がないんだよなぁ・・・。ただ、評価試験をした航空技術情報部(TAIC)は無塗装でやったらしいんで、これに関しては不明としておきます。ただのプライマーの可能性もあるし・・・。

主翼なんですが、右側だけ残っていて左側は全損しています。事故った時に左側を損傷したんだと思います。無くなった左主翼の部分には機体観察のための台が設けられていて、こんなふうに上から見ることが出来ます。
あとは、エルロンが骨組みだけになっていますね。これは、零戦のエルロンが羽布張りだったことから年月が経つにつれて消えていったんだと思います。
余談ですがエルロンが羽布張りだと高速時に舵の効きが悪くなってしまい戦闘において致命的な弱点になってしまいます。エルロンだとロール性能ですね。これは大戦後半に出てきたアメリカ戦闘機に大きく水を開けられていて、他の速度や高高度性能といったものも含めて零戦は相当不利だったと思います。



変な方向に刺さってるなぁということで知られる零戦のアンテナ線支柱。
なんと木製でして、これ誰かが適当なレストアしたんじゃないのと思ったんですがマジでオリジナルも木製だったゾ。無駄に凝った断面形状してるし、職人芸だったのかなこれ?



コックピット。これは鹵獲機なので誰かが憑いてるとかはないはずよ。
フレームと操縦桿とぐちゃぐちゃの配管くらいしか残ってないですな。計器類は盗難防止のために予め取り外したのかもしれないですけど。



五二型のエンジン、中島 栄二一型。事故った時に損傷したかと思いきや状態いいですねこれ。
エンジン排気を推力に利用しようとした単排気管が特徴。アメリカ機の前じゃ焼け石に水だったんですけどね。
出力は、離陸時1130馬力、高度6000m時980馬力。えぇウソでしょ、1000馬力切っちゃうの・・・。
ヘルキャットなんかに積まれてたアメリカのR-2800ダブルワスプエンジンだと離陸時2000馬力、高度6700m時1550馬力。うーんこの。
日本機の場合過給器がダメだったんで、うんまぁ、そうね(悲



続いて日本の至宝()中島 栄一二型。上の二一型よりも先に開発されたエンジンで、零戦二一型や隼なんかに積まれていました。栄シリーズでは一番多く生産されたタイプだったはず。
プラット&ホイットニーのR-1830「ツインワスプ」エンジンを改良したものだというのはなんとなく知っていましたが、ここの解説にはノームエノール14K「ミストラルメジャー」の特徴も盛り込んでいると書かれていました。これは知らなかったです。



24機目、日本海軍の三菱 零式艦上戦闘機五二型。初飛行1939年4月。総生産数約10,400機。
零戦は陸海軍通じて日本勢唯一の1万機軍団のメンバーで、残りは総じて1万機未満。連合軍が戦闘機や爆撃機を軒並み1万機以上作ってる状況でよく戦争4年間も持ったな。
五二型もおなじみ。零戦の現存機の大半がこれなのでよく見かけますね。
1943年製で1944年就役。終戦時はトラック島に配備されていました。同年9月時点でトラック島で作戦可能状態だった6機の航空機のうちの1機だったそうです。6機だけなのかい。残りの内訳は不明です。
その後1947年に戦利品としてアメリカがかっぱらっていき、ロサンゼルスの博物館で展示。1950年代にプレーンズ・オブ・フェームに移された後、いつだか知らないですけどFHCにやってきました。

この機体、塗装が厚ぼったかったり、20mm機銃が無かったり(ヘタすると7mmも無いかも)、アンテナ線が張られてなかったり、やけにいい加減な状態で展示されていました。あと、エンジンの下にパンが置かれてなかったのでたぶん静態保存機だと思います。




25機目、日本陸軍の中島 一式戦闘機一型丙「隼」。初飛行1938年12月。総生産数約5700機。これが日本陸軍最多の戦闘機だから泣けてくる。
キ43-I丙とも。英語だとKi43-Ibって書くようだ。これも説明不要だよね(手抜き
一型はハ25エンジン(栄一二型)搭載でプロペラが2枚羽根だったのが外観上の特徴です(つーか2枚羽根の隼なんていたんだ)。あとはプロペラスピナーの周りについているオイルクーラーもこれ独特の配置ですね。Fw190Dと同じような感じ。で、エンジンの下にある穴がラジエーターです。
このエンジンはオリジナルというのがウリで、他の機体の部品も原型度が高いらしいです。というか現存唯一の一型です。



横から。
日本機はパッと見がどれも似ているのがややこしい点で、「これがあの零戦なんやで」と言っても信じこむ人は絶対にいるでしょう。
あと、アンテナ線の支柱、なんであんなところに付けたんだろうな・・・。邪魔じゃねぇのかな。

この機体は戦後にラバウルのジャングルで見つかったもの。現存する日本機は大抵アメリカに鹵獲された機体かジャングルの奥地で見つかった機体かのどちらかなんですが、今回は後者でした。
不時着機だったようですが日本の整備兵により修理されていたらしいです。ということはほぼ完品で発見されたのね。その後オーストラリアで復元されて1999年にFHCが入手しました。唯一の一型なので、フライアブルですが飛行することはないようです。



後ろから。意外とスマート。



B-17爆撃機のお尻の機銃。



中身はこうなっています。任務中はずっとここに座ってるんだから、ぼっち向きの任務ですね。



さらにB-17のボールターレット。これもぼっち向き。
機体の腹に装備される機銃座で、ボール状になっているので旋回することが可能。このボールの中に人が入って操作します。人を無理な体勢で押し込むんで、任務は過酷です。これはキツいですよ。
戦闘時までは機体胴体で過ごしたという記述もあれば任務中5~10時間はずっとこの球状の棺桶で過ごしたという記述もありますが、どっちにしろここは嫌だなぁ。
まあ詳しくはロサンゼルスで書くと思うんでここは一旦終了。



26機目、アメリカ陸軍のアゴことカーチスP-40C「トマホーク」。初飛行1938年。総生産数約13,700機。最近はP-40というと某重戦車を連想する人が増えていて影が薄くなっているかもしれない。
実は空冷エンジンを積んだ戦闘機P-36ホークを液冷エンジンに載せ替えただけの機体。例のFw190Dと同じなんですがデザインは破綻していないどころか上手くまとまっています、アゴ以外は。ちなみにエンジンは過給器に恵まれないアイツことアリソンV-1710です。
陸の偉大なる凡作がM4シャーマンだとしたら空はP-40だと思います。性能はそこそこながら頑丈性と信頼性が高かったことから大戦を通じて運用されていました。特に他国への供与がよく行われていました。この機体もアメリカが製造し、イギリスが購入し、ソ連が運用したというややこしい経歴を持っています。
P-40はサブタイプにより名前が変わるという珍しい命名がされていて、無印~C型はトマホーク、D~E型はキティホーク、F型以降はウォーホークとなってます。
これはC型なのでトマホークとなるわけです。C型は主翼に7.7mm機銃4門と機首に12.7mm機銃2門を装備したタイプ。アメリカ機にしては珍しく機首に機銃を付けた機体です。



横から。うーん、なんか無難。
先に書いたように、これはソ連で運用された機体で、ルンマスク防衛のためのカレリア戦線で運用されていて、1942年9月に燃料タンクをやられて胴体着陸、そのまま放棄されました。その後1990年代に発見されて、カリフォルニア州チノで修復され1999年にFHCが取得しました。
というわけでソ連機だったわけですが、写真ではこのように中華民国をこっそり支援したアメリカ義勇軍「フライングタイガース」塗装になっています。よほど好きなんですねぇ。



胴体後部。
羽根の生えた虎、フライングタイガーが描かれています。以前見たP-40には無かったのでこれは収穫でした。
コックピットの後ろのハイバックの胴体に、後方視界用のスキマがあるのにも注目です。さらに、スキマで気流を乱さないようにカバーがしてあるのも特徴です。



P-40と言えばシャークマウス、シャークマウスと言えばP-40というくらい、P-40にはシャークマウスが付き物です。
口の描かれてないP-40はアゴがすごいという感じの戦闘機なのですが、シャークマウスがあると途端にかっこ良く見えるので不思議なものですな。シャークマウスが一番似合う戦闘機でしょう。

今日はここまで。


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