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静岡航空資料館に行ってきた話 その1【2018/3/7】

2020-10-08 23:06:48 | バス・航空機撮影記
2018年3月7日。
静岡市の南側、牧之原市内に「静岡航空資料館」という静岡県の私立大の静岡理工科大学が運営する建物があります。その存在や飛行機の機体のような派手なものは少ないですが中々濃密空間らしい・・・という噂は以前から聞いてはいました。
しかし、ここは水曜日と木曜日の昼間だけ開館し、しかも2週間前までに事前の見学申請をしないといけないということでやや敷居の高いところでした。そんなところ、見学に行けそうな日に休みが舞い込んできたので、電話で見学申請してそれが通ったので、この日に行ってきました。
建物は写真のように飾り気のない倉庫然としたもの。左側に掛けられた看板だけがそれを主張しています。この時点でちょっと期待できます。


ちなみに同じ敷地内にはフジドリームエアラインズの訓練センターの建物も入っています。エンブラエルのジェット機のフライトシミュレーターが置いてある建物です。稀に見学ツアーが開かれて一般公開されていたような気がします。


こんにちは~と中へ入るとこんな空間がありにけり。あ、いいですね。

この建物は本来静岡理工科大学の航空工学コースの実習場所なのですが、静岡県内に散らばる航空資料の散逸を危惧してそれの集約を目的に資料館を設立しています。なので、資料館と大学の実習室が同居したような空間になっています。


ひとりでふらっと見ていこうと思っていたんですが、係員の方が説明しながら回ってくれました。ありがたいなぁ。


飛行機模型ですね。これは御存知ボンバルディアQ400。


ボンバルディアCS100・・・またの名をエアバスA220。なんでこれの模型持っているんだろう。


我らがエンブラエルE170フジドリームエアラインズ。これはあれですね、タミヤの完成品ですね。


パネル展示です。やはり学校法人運営だからかよくまとまっていて飲み込みやすいなと思います。


航空博物館には必ずと言っていいほど存在する大量の飛行機模型を展示してある場所。ここにもあるのか。


展示してある模型は全部タミヤの模型でした。タミヤがここに100作品分寄贈したんだそうな。これだけの数はアメリカの下手な博物館よりも多いでしょうから大したもんです。


充実しているのがエンジンの実物の展示です。骨董品と呼べるものまであってよく集めたなと思いましたが、実は大阪弁天町の旧交通科学博物館で展示されていたものです。同館閉館後に鉄道以外の収蔵品は京都鉄道博物館には継承されずに散逸してしまいましたが、航空関連の収蔵品の一部はJR西日本から借用してここで一般公開されています。
米英の本格的な航空博物館の足元には及びませんが、日本国内であれば結構いい方なんじゃないかと思いますよ。


ドイツのマイバッハHSLu型です。水冷直6、240馬力です。製造初年1915年でツェッペリン型飛行船を始めとした飛行船用エンジンでした。


回転軸にフライホイールが付いているのが特徴だそうな。
こんなエンジンどこから持ってきたんだと思いますが、日本でもN-3型飛行船に同じエンジンが使われていたと書かれているんで、それを収蔵したのかもしれませぬ。


フランスのル・ローンC型です。これの製造年は1922年、空冷星型9気筒、80馬力です。9気筒なので正確には9C型だそうです。メーカー名のル・ローンはフランス語なので表記ゆれが激しく、エ・ローンとかル・ローヌとか色々言われています・・・。
ただの星型エンジンに見えますが、これはエンジン自体が愉快に回転してしまうロータリーエンジンです。中心軸は機体に固定してあるので逆にエンジンの方が回るのです。プロペラはエンジンに直結してるのでエンジンと一緒に回転します。ただ馬力と回転数が上がっていくと色々無理が出てきたんで1920年代のうちに廃れてしまった方式です。

このエンジンは大正時代に輸入したフランス製戦闘機から取ってきたのかなと思います。


1910年代製のベンツの水冷直6エンジンですが、型式はよく分からんらしい。日本での採用例は少ないし、第一次世界大戦時の戦利品じゃないかと考えられています。


第一次世界大戦の航空エンジンといえばこれ、というスペインのイスパノ・スイザです。水冷V8、300馬力ですが詳しい型式は不明です。1921年からは三菱でライセンス生産を始めているんですが、この個体はそのライセンス生産品です。
上のベンツエンジンと比べるとシリンダーが文字通り1本ずつの筒状ではなく、4気筒ずつ鋳造ブロックに一体化されたものになっているのが当時では先進的でした。
それと、これの推進軸にはプロペラを固定する金具が残っています。2枚の円状の金属板の間にプロペラの中心孔を挟んで周りについている棒で固定します。この時期のプロペラにはピッチ変更機能は無いので、推進軸に2枚の翅を1本にまとめたプロペラを直付けしていました。プロペラ部品はこの後出てくるのでそれはまたその時に。



プラット&ホイットニーR-1830型ツインワスプです。S1C3型、空冷星型14気筒、1,200馬力です。弊ブログでも何度か登場しているエンジンで、DC-3、TBD、F4Fなどの第二次大戦時の有名な機体に搭載されていました。


カットモデルになっているのがこれの特徴です。
エンジンの後部には空気取入口があってその先にスーパーチャージャー(機械式過給器)が付いています。空気の薄い高高度でもエンジン性能を安定化させるために過給器で空気を圧縮してエンジンに送り込むのです。圧縮方法は色々あるみたいですが、航空機エンジンに用いられたのは遠心式で、説明書きの真下にある銀色の羽根車で空気を圧縮しています。
ツインワスプのスーパーチャージャーは、1段1速式(増速比7.15:1)の単純なものです。つまり羽根車が1段で、高度によって回転数が変わる変速機が付いてない1速ということです。


前方には遊星歯車式減速機が見えるようになっています。エンジンの回転をプロペラと直結させると回転が速すぎてプロペラ先端が音速を超え却って推力が無くなることがあるので、減速機を噛ませて適正な回転数に落としてやる必要があります。同時に歯車のトルクを使って大きな力に変換させる役割もありにけり。
ここらへんはよく知らないので資料館の説明をそのまま拝借すると、ツインワスプの減速比は2:3、遊星歯車式を使うのは入力軸と出力軸を同軸上に配置できるからだそうな。


プロペラスピナー部分もカットモデルになっています。
1930年代では可変ピッチプロペラが一般化しましたので、これもそうなっています。プロペラは1翅ずつ独立していて、速度ごとに適切な迎角に調節することで効率化を図っています。

こういうエンジンのカットモデルは日本の航空博物館ではよく見られる展示でありがたいです。逆に航空機の本場アメリカやカナダではほとんど見ません。スーパーチャージャーや遊星歯車式減速機をまじまじと見たことは無かったので、これはありがたかったです。

というところで今日はここまで。




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