2016年3月5日(土)13時50分
カリフォルニア州チノ プレーンズ・オブ・フェーム ポンド格納庫
B-17を見終えて館内に戻ってきました。ここからはポンド格納庫に収蔵されている機体を見ていきましょう。
カルヴァーPQ-14カデット(111機目)
1942年から導入されたアメリカ陸軍の無人標的機です。海軍でも使われていて、そこではTD2Cと呼ばれていたそうな。
無人標的機と言っても色々ありますが、これは対空砲の訓練に使われるやつです。コックピットもありますがあれは移動用に使われるやつで、訓練時は無線操縦で飛行します。
対空砲訓練の標的ということで、撃墜されるために生まれた飛行機でございます。対空砲が命中したら撃墜されてオサラバとなりますので、使い捨て飛行機です。贅沢な使い方するもんだよな。
2,043機が製造されたのですが、ほとんどが”撃墜”されていますので、現存機は実は貴重な存在なのです。
ボーイング・ステアマンPT-17ケイデット(1934年・112機目)
アメリカ陸軍/海軍の初等練習機。PT-17は陸軍呼称で、海軍ではN2Sでした。なおボーイング・ステアマンの社内呼称はモデル75。
複葉だったり固定脚だったりで古めかしい見た目ですが、第二次世界大戦でも練習機として使われていた模様。
以外にもチーム1万機軍団の一員で、10,620機が造られたそうな。
これはたぶん戦間期の塗装だと思うんですけど、この頃のアメリカ軍機の塗装って戦争する気あんのか?という派手さですね。
ベルP-39Nエアラコブラ(3時間ぶり2機目・通算113機目)
プロペラ軸上に大口径砲を載せるためにミッドシップエンジン配置になった飛行機。
P-39は高高度性能が低くて使い物にならずだいたい全部ソ連に押し付ける結果になったんですが、最初に造られた試作機では排気タービンを搭載して高高度でもバッチリなつもりでした。
ところが量産型ではなんでか排気タービンを外されてしまいました。なんでや。で、搭載エンジンは高高度性能のダメさに定評のある例のアリソンV-1710でしたので、使えたもんではありませんでした。
N型はソ連にレンドリースするための型式だそうですが、ソ連が借りた機体を律儀に返すとは思えないため、これはソ連に渡らずアメリカで一生を過ごした機体でしょうね。
なお手前に写っている液冷エンジンはV-1710ではなく、パッカード・マーリンです。
P-39もマーリンエンジンに換装すればP-51みたいに性能が上がったんでしょうけど、思えばなんでしなかったんでしょうね?そんな余裕なかったのかな?
ダグラスAD-4Nスカイレイダー(1945年・114機目)
アメリカ海軍が開発した艦上攻撃機です。第二次世界大戦中に開発が始まって大戦中に初飛行もしましたが、実用化前に終戦。それで気が抜けて配備開始は1946年までずれ込みます。
今時急降下爆撃機と雷撃機を別々に用意するなんて遅れてな~い?統合しようぜ!というところから開発が始まりまして、設計士のエド・ハイネマンが短期間で機体の設計を仕上げたことは有名な話ですね。
ぐう有能な機体だったようで、朝鮮戦争やベトナム戦争で大活躍だったよう。
とにかくデカいなという印象で、実際レシプロ単座機としては最大級だそうな。搭載量は3tもあるようで、これは確か双発爆撃機の一式陸攻よりも多かったはずでし。
いやほんとね、日本が烈風を配備しようが竹槍対空砲を実用化させようが、それを上回る性能のアメリカ軍機が大挙して押し寄せてくるんですよ。3tの爆弾積んだ艦上攻撃機にジェット戦闘機にB-29よりも遥かに巨大な戦略爆撃機を相手にせにゃならんかったのですよ。
エンジンカウルと胴体の太さが異なっているところが好きです。
操縦席の天蓋は結構小さいのですね。パイロットは身体を胴体に埋め込んで頭だけ飛び出てるという形でしょうか。窮屈そう・・・。抵抗になる天蓋を出来るだけ露出させたくなかったという設計だったのかしら?
展示機の爆弾・ロケット弾は偽物ですが、マジで殺す気だという量の爆弾を抱えているのが分かりますな?
尾部も胴体が絞られずに寸胴です。ここら辺は洗練さが感じられず芋っぽいですが、これもまた良し。ADは結構好きなんですよ。
なお胴体側面のアメリカ軍マークの右横に小さい扉があるのに注目です。なんだあれ?と思いましたが、あそこから人が乗るんだそうです。
というのもこの4N型は夜間攻撃/電子妨害型の型式だそうで、そのためのレーダー士官および電子戦士官が搭乗する空間なんでしょうね。4N型は3人乗りで、操縦席は単座ですから、ここに2人乗るわけですか。
くっそ狭そうだし、機体バランスも崩れそうなもんなんですけど、まあどうにかなってたんでしょうね。
パイパーL-4グラスホッパー(カブ)(4時間ぶり2機目・通算115機目)
ヤンクスでも見たテイラーJ-2カブの軍用機版です。ここまでに社名や愛称が変わってます。
また、民間機のカブと比べると機内が後方へ拡大しているのがわかると思います。
連絡機(Liaison)を意味するL系列の機体です。L系列の中では有名な機体だそうですが、なにぶん連絡機自体が地味なので私はよく知りませんでした。
スチンソンL-5Gセンチネル(3時間ぶり2機目・通算116機目)
ヤンクスでも見たやつ。
パッと見どころかよく見てもL-4とそっくりで見分けがつかないですな・・・。
脚の形状で見分けがつきますかね?L-5は主脚が細い棒状で、L-4は板状の主脚を持っています。
エンジンも展示されとります。これはプラット&ホイットニーR-985ワスプジュニア。
同社のR-1340ワスプの低出力型で、出力485馬力。採用機はバルティBT-13バリアント練習機、グラマンG-21グース飛行艇、デ・ハビランド・カナダDHC-2ビーバー水上機などなど。低出力だけあって速度を必要としない飛行機ばかりです。
1929~1953年までに合計約4万発が造られたので大ヒットですね。
ライカミング50馬力水平対向エンジン
飛行機の空冷エンジンでよく見られる気筒を放射状に配置した星型エンジンではなく、自動車でよく見られる水平対向エンジンです。
上記のL-4、L-5やいわゆるセスナ機のような軽飛行機は水平対向エンジンを搭載する傾向が多いです。
パッカードV-1650マーリン
イギリスの至宝、ロールス・ロイス マーリンエンジンをアメリカのパッカード社がライセンス生産した、いわゆるパッカード・マーリンです。パッカードは高級車メーカーのパッカードですな。
スピットファイア、ランカスター、P-51ムスタングなど名だたる機体に搭載されたエンジンです。
マーリンはエンジンの素性の良さもさることながら、過給器が優秀でして、これの改良を続けていったことで大戦を通じて第一線を張ったたといえます。ただこれには過給器は付いていませんでした。
といったところで今日はここまで。
その34へ→