山上俊夫・日本と世界あちこち

大阪・日本・世界をきままに横断、食べもの・教育・文化・政治・歴史をふらふら渡りあるく・・・

松野由子さんの『言葉という絆』を読む

2012年08月03日 09時14分09秒 | Weblog
 松野由子(まつのよりこ)さんは大阪府立高校の大先輩の教員で、組合の大先輩だ。松野さんの教育実践報告やエッセーはそのときどきに読んできた。今度、佐伯胖・藤田英典・佐藤学編『言葉という絆』(東京大学出版会、1995年)を読んだ。
 松野さんには、20年ほど前に退職されたころ、広島での日本平和教育研究協議会の平和教育シンポジウムで無理をいって発表してもらったことがある。国語教育全体を通しての平和教育についてだった。平和教育教材をつかった直接的平和教育ということではなく、1年間の授業が人間性に働きかけ、人格を育て、それが平和をうみだす、いわば平和教育の土壌を耕す教育だった。
 今年の退職教職員の会の総会後の懇親会でとなりにすわり、久しぶりに親しくお話しができた。おどろいたことに、松野さんは先輩教員であるだけでなく、大学の先輩でもあった。大阪外国語大学のフランス語科だ。わたしは2部スペイン語科の落第生。松野さんの外大での学生運動についてもうかがった。ジャンヌダルクだ。いまもかがやきを失わない松野さん。終戦から5、6年しかたたない時代、さっそうとしていたことだろう。
 後日、松野さんから『言葉という絆』を送っていただいた。丁寧な手紙を添えて。
 この本は、学びを探求する「シリーズ学びと文化」の2冊目として、書くこと、読むことを主題にしている。
 本を送っていただいたお礼として、わたしのブログで書評を書こうと思いながら、1日延ばしが延々とつづいた。生来、怠け者なので。

 
 佐伯胖(さえきゆたか)さんは存じ上げなかったが、藤田英典さん、佐藤学さんは日本の教育学を代表する研究者で現場教員に励ましを送り続けている。本の構成は、以下の通り。
  第1章  言葉で結ばれる人間関係     鹿島和夫
  第2章  ”学級”で読むということ    松野由子
  第3章  文章を読むこと・表すこと    紅野謙介
  第4章  悪文のすすめ          小森陽一
  第5章  教室の言語経験         [座談]小森陽一・紅野健介・佐藤学
  終章   言葉と出会うこと        佐藤学
 
 この本は、鹿島さんと松野さんの実践とこれをもとにした討論が中心になっている。ページ数も6割近くにおよぶ。
 鹿島さんは神戸の小学校で、1年生の子どもたちに「あのねちょう」をもたせ、家庭や自然や社会を子どもなりに見つめ書かせている。いい文章を書かせるのではなく、心の扉をひらくことに重きをおく。
 ほとんど手をあげて発言をない高校生を相手にした高校の国語の授業ほど難しいものはないと思う。松野さんの実践は、普通とは違うなあとおもわせる。
 (つづく)



  
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