YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

アメリカ彦蔵:吉村 昭

2010-01-02 00:45:12 | 書評
アメリカに住んでいるので、必然的に日米外交史に興味があります。元々幕末の歴史が好きだという事もあり、ペリーで唐突に始まったとばっかり思っていた日米史の底流には、中国を巡る国際社会、アメリカの捕鯨、アメリカ南北戦争、(当たり前ですが)複合要因があり、そのひとつひとつがテーマとして面白く、現代に至っている続いてます。歴史を純粋に楽しむ位に昔で、教訓として学べる位の現代との連続性、絶妙な時代でもあります。

「アメリカ彦蔵」は、日本人漂流者でアメリカに帰化し、日米外交史の幕開け時代に淡々と自然体で貢献したジョセフ・ヒコの伝記小説です。内容については、読んでもらうしかありませんが、アメリカに生きるものとして、ヒコの生き方に強く感銘しました。

13歳で漂流後アメリカに暮らす事になったので、その若さ故、アメリカ人に可愛がられ学校教育まで受けさせてもらい、英語の読み書きは不自由無くなったが、日本語は平仮名の読み書きレベルであり、明治維新後、英語教育の急速な充実で、かれ自身が自分の存在価値が日本社会の中で次第に薄れて行く事を感じてします。こうして心理的な漂流がいつまでも続く過酷な運命を受け入れながら、淡々と生きたヒコに日本人の矜持を感じます。はからずも、そして、恥ずかしながらも、かれに自分を重ねてしまいます。

日本の沿岸海運の発展で結果的に漂流者が増え,アメリカ捕鯨産業の石油発見までのつかの間の隆盛で太平洋に繰り出す捕鯨船等が増えた事で、救助される漂流者が増えることになりました。

主にクジラの油が欲しかったアメリカの捕鯨は、直後の石油の発見で急速に衰えます。又,南北戦争の影響で、アメリカからの中国への通商(主に綿花輸出)が必然的に低調となり、太平洋への政治的軍事的優先順位が落ちます。一方で、南北戦争の終結により落ち込んだ武器需要の穴埋めとして日本の倒幕側への販売があります。

石油は、その後第二次世界大戦から現在に至る軍事的歴史の主要因であり続け、捕鯨は、水産資源を考える上で反捕鯨だけの単純な事で終わらない状況になってきております。

ヒコの様な個人を題材にした事で、歴史を複眼的に眺められる様にした吉村昭の着想は素晴らしく、他の著作にも同じ事が言えます。

関連した本では、「ペリーは,なぜ日本に来たか」「勇魚」を推薦しておきます。


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5 コメント

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異常ですよね (大和)
2010-01-02 16:41:50
今年も、子供は見捨てられますか!
 不登校、退学者20万人、精神疾患休職教員5400人。こんな学校に通えば、ひきこもり、ニート、失業者となり、四万人の自殺者が出るのは当然です。
日本国民は、なぜこんなデタラメ教育を許しておくのでしょうか。子供の不幸を見て見ぬふりする堕落した日本人こそ、自民党・官僚政治の愚民化政策が作り出した愚民です。
教育現場から愚民化教育のおぞましい実態を詳細に暴露したのが「『おバカ教育』の構造」(阿吽正望 日新報道)です。時代錯誤の文科省官僚は、この知識時代に愚民化教育を行い、若者を貧窮させ、犯罪に走らせ、国家衰退を作り続けています。
これは、薬害エイズや薬害肝炎を起こした厚労省官僚を越える大罪です。悪徳官僚への恨みと呪いの声が、親や教師から聞こえてきます。うらめしや、うらめしやと。
今年こそ親たちは目を覚まし、子供を救うために立ち上がるのでしょうか。それとも、薬害肝炎やエイズ、原爆症患者と同じに、日本人は子供を見捨てるのでしょうか。
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子供の教育 (ysJournal)
2010-01-03 02:14:53
大和さん、コメントありがとうございます。
日本の教育現場でないが起きているのか分からないので、コメント出来ません。頭の片隅にあるのは、思考の根底は親が教育するべきだと言う事です。又,教育は国がするものではなく、学びたい人が行くものだったのではないかということです。
四国の片田舎で公立の小中高校と通った身としては、時代と場所の幸運を思わざるを得ません。
個人的には、公立学校の廃止して、教育の多様化を図る事が良いと考えております。
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Unknown (おおた葉一郎)
2010-01-04 20:35:01
こんにちは。
明治の終わりの頃に、日系人排斥運動とかあるのですが、その頃の雰囲気がよくわかるのが、ドウス昌代著の「イサム・ノグチ 上下」です。日本人詩人の野口米次郎と米国人女性との間に生まれたイサム少年が日米間を追われるように往復しながら世界的彫刻家に成長していくドキュメンタリです。
単行本は絶版みたいで、講談社文庫から刊行されています。
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THX (YSJournal)
2010-01-05 00:30:06
イサム・ノグチを野口英世と勘違いしていた事を懐かしく思い出してしまいました。
日系移民の事は、常に関心があるので、いつかどこかでという事になりますが、気にしておきます。
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Unknown (おおた葉一郎)
2010-01-05 11:18:06
米国でも、野口英世のこどもと勘違いされていたりして、無名時代のイサムは、その勘違いを敢えて利用していたようです。
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